AIパイロット同士の戦いも起こる…?
アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)は、人工知能エージェント(AI)アルゴリズムを開発し、F-16戦闘機が自律飛行できるようになったと発表しました。F-16戦闘機の制御シミュレーションを開発してからわずか3年弱です。
この飛行にはLockheed Martin(ロッキード・マーティン)のVISTA X-62Aが使用されたとのこと。Lockheed Martinは「VISTA X-62Aは「Block 40」の電子機器を搭載してアップグレードした「F-16D Block 30 Peace Marble Il」の改良版だ」とプレスリリースで発表しています。
DARPAはACE(Air Combat Evolution)プログラムを活用して、自律型戦闘機を開発しました。ただ、パイロット不在で戦闘機を飛行することを想定していたわけではなかったようです。
パイロット学校での試験
カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地にあるアメリカ空軍テストパイロット学校は、数日間にわたりAI操縦のF-16戦闘機の飛行を実施し、飛行データをライブ追跡しました。
この試験飛行から、F-16戦闘機は自律飛行が可能なほど信頼性が高いことが判明。ただ、この飛行では、なにか問題が発生した場合に備えて操縦士が搭乗していたそうです。
アメリカ空軍の中佐であり、DARPAのプログラムマネージャーACE担当のRyan ‘Hal’ Hefron氏は「DARPA、空軍テストパイロット学校、空軍研究所、そして実行チームのすばらしいチームワークと連携で、ACEプログラムの第2フェーズを著しい速度で前進させることができました」とDARPAのプレスリリースでコメントしています。
VISTA(可変機内シミュレーターテスト航空機)のおかげで、当初予定していた下位フェーズを飛ばし、全面的な実装に進んだことで、プログラムを効率化できました。時間を1年以上短縮できたうえに、実際の飛行条件下でのフィードバックを受け取ることができたのです。
Ryan ‘Hal’ Hefron氏によると、試験飛行の段階ではさまざまな条件や敵、そして想定される兵器のもとでF-16の離発着を実行し、ACEは何の問題も検出しなかったとのこと。
ACEプログラムは空軍テストパイロット学校のサポートのもと、さらなる訓練を重ね情報を提供し、AI戦闘機を操縦する際にパイロットの快適度がどれほどかを見極めていくそう。
追加試験飛行では、敵を目視できる距離での空中戦、通称ドッグファイトでパイロットがAI戦闘機に信頼を置けるかと同時に、「操縦席で大規模な戦闘管理タスクに集中できるか」をテストする予定です。
AI操縦戦闘機の研究は加速
VICEの記事によると、自律型F-16戦闘機は、アメリカ国防総省が実行する600以上のプロジェクトの1つに過ぎず、アメリカ政府は2018年から5年間、20億ドル(約2710億円)以上もの金額をAIプロジェクトに費やすことに署名したとのこと。
ただ実際のところ、2022年だけでも25億8000万ドル(約3500億円)を、ロボットやウェアラブル技術の構築をはじめとするAI研究や開発に費やしたと言われています。
新アメリカ安全保障センターの防衛プログラムディレクター、Stacie Pettyjohn氏がThe New Yorkerに語った話では、AI操縦型のF-16戦闘機を活用し、DARPAが「モザイク戦」と呼んでいる戦い方をすることで、軍を分解することができるそうです。
これが実現すれば、戦闘機の操縦に必要な人数が減るため犠牲者を抑えることができます。
Stacie Pettyjohn氏は「小型の自律型戦闘機のおかげで、相手が予想だにしない方法を組み合わせて混乱させ、敵をかく乱することができます。たとえ戦闘機がどれか1機撃墜されたとしても、大した問題ではありません」とコメントしています。
AIの影響が声優業にも。「搾取される」と悲痛な叫び 2022年の終わりごろから、AIで生成したアートが話題になっていましたね。そして今、その波は声優業にも押し寄せてきており、業界には不安の声が広がっています。 https://www.gizmodo.jp/2023/02/ai-voice-actor.html