Screenshot: NASA TV / Gizmodo US

グレーの素材は地上テスト用らしい。

NASAとAxiom Space(アクシオム・スペース)が、次世代型宇宙服AxEMUを発表しました。

この宇宙服は、安全性と柔軟性が高く、NASAの宇宙飛行士2名が2020年代後半に着陸することになっている月の南極地方の過酷な気温に耐えられるよう設計されています。

次世代型宇宙服の最初のプロトタイプは、現地時間水曜日(3月15日)にNASAのヒューストン宇宙センターで開催されたMoon to Mars イベントにてお披露目。

NASAは、アルテミス計画の一環として月面に降り立つ宇宙飛行たちに着用されるアポロ以来初となる月面用の宇宙服を、Axiom Spaceと提携して開発しました。

アルテミス計画と多様性の実現

NASAのBob Cabana副長官は、アポロ計画の写真を振り返りながら、宇宙飛行士たちが月へ最初の一歩を踏み出すことができたのは宇宙服があったからだ、と前置き。

「我々は新たな世代であるアルテミス計画を実行する世代、人類を再び月へ、そして火星へと連れて行く世代のために、宇宙服を開発しているのです。そしてそれはとても刺激的なものになるでしょう」と話しました。

Photo: Axiom Space

新型宇宙服 AxEMUと、アポロ計画で1969年に宇宙飛行士が着用していたものには大きな違いがあります。

より現代的で洗練された見た目に加え、月面探査中の宇宙飛行士たちにさらなる柔軟性、着心地の良さ、安全性を提供するよう、先進的な機能を搭載しています。

AxEMUの正式名称はAxiom Extravehicular Mobility Unit(Axiom船外活動ユニット)で、NASAの宇宙服のレガシーを念頭に置きながらも最新テクノロジー、可動域の向上、月環境からの防護を取り入れて開発されました。

さらに新型宇宙服は、「多様なクルーメンバーに合う、米国の男女の人口の少なくとも90%に対応する」ようデザインされていると、NASAのリリースには書かれています。

これは、新型宇宙服がより多くの人々に適合し、さまざまな体型の宇宙飛行士に対応できることを意味しています。アルテミス3ミッションで、史上初めて女性が月に降り立つという計画を反映していますね。

新型宇宙服のデモンストレーションと特徴

イベントではAxiomのエンジニアのJim Stein氏が、宇宙服を着用してステージに登場。

月面での探査やバランスをとる際に使うと思われる杖を手渡された同氏は、説明に合わせてヘルメットの両側についた明るいヘッドライトや、HDカメラ、生命維持システムを搭載したバックパックを見せてくれました。

そのうえ宇宙服の柔軟性を披露するためにスクワット、ラテラルランジ、床から何かを拾うように屈む動作までも実演しました。

NASAジョンソンのExtravehicular Activity and Human Surface Mobility ProgramのマネジャーLara Kearney氏は、特殊なサービス契約の元で宇宙服の所有権はAxiomが保持し、同社が宇宙服を活用できる別の法人顧客を探すことを奨励していると述べていました。

イベントで着用モデルを務めるJim Stein氏 Screenshot: NASA TV

イベントでお披露目された宇宙服の色はダークグレーでしたが、実際に月面で着用される宇宙服は、「宇宙飛行士たちが宇宙の過酷な環境の中で作業する間、安全性かつ涼しさを保てるよう」白一色になる可能性が高そうだと、NASAはTwitterで明かしています。

発表時に用いられたグレーのカバー素材は、宇宙空間でのミッションには使われないようです。

イベント後の質疑応答でAxiom SpaceのExtravehicular Activityの副プログラムマネジャーRussell Ralston氏は、グレーのカバー素材は地上テストやトレーニング時に用いられると説明。「ジャケットを着るようなもの」と例え、宇宙服のインナーレイヤーを保護する生地レイヤーであることを補足しました。

また同じ部門のプログラムマネジャーMark Greeley氏は、「弊社はCollins Aerospace(コリンズ・エアロスペース)社と競っているので、宇宙服下のAxiomの専有情報となる部分は見せていません」と、機密情報を守るためにもカバーを用いたと認めています。

旧型型宇宙服からの進化

新型宇宙服の実現までには長い時間がかかっており、NASAの宇宙飛行士たちに使われている現行のデザインは40年以上前から変わっていません。

Greeley氏いわく、ブーツとグローブは別として、月面探査と地球低軌道での任務とで宇宙服の構造は基本的には同じなんだそう。

新型宇宙服の遮熱性能については、Ralston氏が「断熱レイヤーはかなり複雑で、内部は、さまざまな素材が挟まれ積み重ねられて幾層にもなっている」と説明しました。

宇宙服は過度の高温に対処するためにほとんどの熱を放出するよう設計されていますが、ブーツは温まりすぎたり冷めすぎたりしないよう、断熱材が入っているようです。

また、宇宙服の船外活動を行なう能力は現在の約6時間から8時間に延長されるとのこと。

Ralston氏はアルテミス計画の宇宙飛行士たちもまだオムツを履く必要があると、時には一番シンプルな解決策が最良であることを指摘しました。

Axiom Spaceの会長兼CEOであるMichael Suffredini氏は、このイベントで「NASAのアルテミス計画用の月面宇宙服を提供する企業として選ばれたのは、すごいことです」とコメント。

単に国民を月及び月以遠へと連れていくのではなく、文明を月及び月以遠へと連れていくわけですから、人類の次のステップがAxiomの宇宙服で行なわれることを嬉しく思います。

と喜びを語っていました。

NASAは2022年6月に、アルテミス計画の宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士のための新型宇宙服を開発する企業として、Axiom Spaceを選びました。

ISSで着用される宇宙服は、2025年以降に人類を月面に降り立たせるアルテミス3ミッションのためのテストベッドとしての役割を果たします。

Source: NASA, Twitter,

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