先日、若者にも地球温暖化の問題に関心を持ってもらおうと環境省がツイッターにアップした動画が話題になり炎上しています。動画では「君野イマ」と「君野ミライ」という萌えキャラとともに「省エネ家電」「LED」「省エネ住宅」などが紹介され、最後に「環境に気を配ることはCOOL CHOICE(賢い選択)」だと締めています。

もはや環境とは関係ない?!「158cmの女子高生」という不思議なキャラ設定

動画を見てみると、環境に優しい商品が分かりやすく紹介されています。ただ動画に登場する「萌えキャラ」の以下の詳細を見ると、やはりため息が出てしまいます。

「君野ミライ」はスカートがかなり短いです。もう一人の「君野イマ」に関しては、スカートではなく短パンを履いているものの、快活さは全く感じられず「内股」で立っています。「たまたまキャラを内股で描いてしまった」というのは考えにくく、何か意図して内股にしたのだと考えられます。もしも女性には内股であってほしいという願望が世間にあるのだとしたら、ある種の闇を感じます。……色々書いてしまいましたが、単刀直入にいうと違和感の理由は「なぜ環境の問題をアピールするために、女性の性を誇張して描くのか」という点にあります。

ところで萌えキャラの「君野イマ」と「君野ミライ」の説明に「身長158cmの女子高生」とありますが、なぜ身長まで記載されているのでしょうか。いったい地球温暖化と何の関係があるのでしょうか。そして、そもそもの疑問。なぜ女子高生である必要があったのでしょうか。

「碧志摩メグ」から「うな子」まで・・・ニッポンの公的機関はなぜ「未成年の女子」や「スクール水着」が好きなのか 

考えてみると、PR動画に未成年のキャラを使っているのは環境省だけではありません。過去にも「未成年の少女のキャラ」は頻繁に使われています。伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を翌年に控えた2015年には、三重県志摩市の海女の萌えキャラ「碧志摩(あおしま)メグ」が発表されました。この碧志摩メグは「17歳」というキャラ設定です。しかし同キャラの胸や太ももが強調されていたため、性的誇張表現だと非難を浴びました。当時のキャラ設定の詳細を見てみると「メグは明るく元気で、ちょっとドジな17歳。身長158センチ。体重46キロ。ボーイフレンド募集中。」とあり、ここでは身長だけではなく、なんと体重まで記載されています。

その翌年には鹿児島県の志布志市役所が「ふるさと納税」の返礼品で一番人気が高かった地元の名物「うなぎの蒲焼」をPRするため動画『うな子』を公開します。こちらは萌えキャラではありませんが、動画では「スクール水着」を着た少女がホースで水をかけられ「プハァ」と喘ぐような表情をさせられています。少女は語り手である男性に向かってカメラ目線で「養って…」と言わされ、更に動画の最後には別のもっと若い少女も登場し、彼女もまた「養って…」とつぶやきます。動画には少女がペットボトルを手に取ろうとした際にヌルッと滑って落としてしまうシーンがありましたが、粘り気のある液体が糸を引いています。当時担当者は「ぬるぬるとしたうなぎを表現した」と説明しましたが、演出が卑猥との批判は止まらず動画は後に削除されました。

昨年2019年には献血を呼びかけるために日本赤十字社がWEB漫画とコラボして作成したポスター「宇崎ちゃん」が物議を醸しました。人気漫画「宇崎ちゃんは遊びたい」のキャラクターを使ったのは、若い人に献血をしてほしいという趣旨があってのことでしたが、漫画を知らない人がこのポスターを見るとやっぱりちょっとビックリしてしまいます。

宇崎ちゃんの年齢は19歳〜20歳の大学二年生ということなので、見方によっては成人しており年齢的には問題がないと思われます。しかし絵を見てみると、童顔に不自然に強調された胸。胸の位置もブラウスも明らかに不自然で、これまた献血とどういう関係があるのかと思ってしまいました。

ただ当時ツイッターなどのSNSでは、「裸でもないのにどうして批判されるのか分からない」「そもそも実在ではなくアニメキャラ」という声も多く聞かれました。

日本では、赤十字のようにお堅いはずの認可法人や自治体がこの手のキャラを使っていることを考えると、「欧米の社会でタブーだとされているもの」が「日本ではオッケーとされている」ことが分かり、本当に感覚が違うんだなあと考えさせられました。

「趣味」の問題?問われる国際感覚

ただ筆者としてはこれを「単なる好みの問題」として片づけたくない気持ちもあります。というのも女性差別撤廃条約(1979年に国連採択、1985年に日本批准)は性別に基づくステレオタイプへの対処を求めており、日本のメディアではその手のステレオタイプが根強いので是正すべきだとして、数回に渡って日本政府への勧告がされています。性別に基づくステレオタイプについて2009年の日本レポート審議総括所見では「女性の過度な性的描写は、女性を性的対象として見るステレオタイプな認識を強化し、少女の自尊心の低下をもたらす」と警告しています。

ヨーロッパの社会では上に挙げた「萌えキャラ」も「スクール水着の少女」の描写も児童ポルノに限りなく近いものだという見方が一般的です。成熟した女性ではなく主体性のない少女に性的なことを連想させる格好や動きをさせ、男性がそれを見て楽しむという構図が透けて見えるからです。しかしその一方で、ヨーロッパでも一部の企業が「やらかす」ことがあります。先日はドイツの自動車メーカーの「アウディ」が「赤い車の前方部分にもたれかかりながらバナナを食べる女児」の広告を発表したところ、「男性の欲望の象徴として見られることが多い『赤いスポーツカー』の前で『女児が男性器の象徴であるバナナを手に持つ』というのは性的な意図があることは明らか」だとして、多くの人から非難の声があがりました。

PRしたい商品とは本来関係がないのに、女性(特に未成年)の身体を過度に性的に強調することは「性の商品化」につながっています。これでは「若い女性は性的に見えてこそナンボ」だという価値観を広めてしまいます。そういったものを見慣れてしまっている男性の一部が実在の女性にも性的にそそる容姿・動作・仕草を求めがちであり、また女性側もそれに応えられないと葛藤をしたり自信をなくしたりと、何一つポジティブなことはありません。決して「多くの人にPR動画を見てもらえて商品を買ってもらえればそれでよい」話ではないはずです。

地元のPRのためには「若い女性を」という悪しき習慣

日本に来たばかりのころ、とても不思議に思っていたことがあります。通訳をしていた私はドイツなど海外から来日した人と日本人の間に立ち商談の通訳などをしていましたが、商談が成り立ち雑談も交えて会話をするようになると、必ずといっていいほど日本人のビジネスマンは西洋人のビジネスマンにこう聞くのです。「どうですか。ニッポンの女性は…?」と。もちろん場を和らげる冗談ではあるのですが、質問を投げる男性の表情はどこか誇らしげで、相手からのポジティブな感想を期待していることが窺えます。会話で日本の女性の素晴らしさがシェアされた後は決まって京都の観光地など「日本の見どころ」の話が続きます。

こういったことを振り返ってみると、日本の男性にはどこか日本女性は「ニッポンの見どころである」という概念が潜在的にあるのだと思います。日本の女性を素晴らしいと思っていて、それを前面にアピールすることで仕事を取りたいし、商品も売りたい。残念なのは、そのアピールのしかたが「男性目線から見た女性」に留まっていることです。

三重県志摩市の「海女」にしても、鹿児島県志布志市の「うなぎの蒲焼」にしても、自治体は純粋に「呼びかけたい層に響くかどうか」にこだわってポスターや動画を作成したのだと想像します。ただ同時に「地元の良さをアピールするためには、とにかく若い女性」「アピールのためには性的な誇張も厭わない」という考えが根底にあるのではないでしょうか。

オリンピックが来年に迫っている今、ニッポンの名誉を守るためにも、地元創生の大義名分のもと「関心をもってもらうためには、スカートの短い未成年の女を用意すればよい」という考えとはサヨナラしていただきたいものです。