ネットフリックスオリジナルの韓国ドラマ『D.P.−脱走兵追跡官−』は、脱走兵を捕まえる憲兵が主人公だが、脱走兵それぞれのエピソードも多くの共感を呼んだ。いじめやパワハラが原因で脱走し、自殺に至るケースまで描かれ、軍隊の不条理が浮き彫りになるドラマ、主演したチョン・ヘインはどんな気持ちで演じたのか。(写真はネットフリックス提供)

D.P.は、Deserter Pursuitの略で、脱走兵を捕まえる憲兵隊のチームを指す言葉だ。『D.P.』ではジュノ(チョン・ヘイン)とホヨル(ク・ギョファン)のチームがメインで登場し、脱走兵を捕まえるべく私服姿で街へ繰り出す。

原作はウェブ漫画『D.P 犬の日』だ。チョン・ヘインは「まずはウェブ漫画で読んでいたので、ドラマ化されると聞いてうれしかった。シナリオを読むと、それぞれの脱走兵に事情があり、軍隊という組織の中でジュノが成長していく過程も興味深いと思った」と、出演を決めた理由を語った。

原作者のキム・ボトンはD.P.出身だ。チョン・ヘインは「経験者だからか、内容がリアルで、ディテールが素晴らしい。撮影に入る前、監督と作家と一緒にミーティングを重ね、実際のD.P.についての話もたくさん聞いた」と言う。韓国は男性に兵役の義務があり、チョン・ヘインも兵役経験者だ。「『D.P.』は特に階級別の行動や話し方がリアルだった。セットや小道具も本物そっくりだったので演技に没頭できた。自分が二等兵(注:最も下の階級)だった頃を思い出した」

韓国の俳優チョン・ヘイン=ネットフリックス提供

チョン・ヘインは2018年、ソン・イェジンと共演したドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』で爽やかな年下の彼氏を好演し、一躍スター俳優となった。だが、今回はトレードマークの笑顔を封印し、感情を抑えた演技で貫いた。ジュノは父の家庭内暴力など、つらい過去を背負ったまま入隊し、D.P.として最初の仕事で取り返しのつかない失敗をする。笑顔になれない理由だ。「ジュノは表現が苦手なタイプなので、彼の内面をどう表現するのか悩んだ」と言う。

韓国の俳優チョン・ヘイン=ネットフリックス提供

まじめで口数が少ないジュノとは対照的に、D.P.コンビのホヨルはひょうきんで冗談ばかり。だが、脱走兵を捜し出すことにかけては切れ者だ。2人の名コンビぶりが光った。チョン・ヘインはホヨル役のク・ギョファンについて「先輩の魅力は相手に対する配慮とユーモア。ジュノは二等兵で、先輩の演技に対するリアクションがほとんどの役だが、ジュノが様々なリアクションができるよう、ワンシーンにいろんなアドリブとアイディアを出してくれた。現場の雰囲気を盛り立ててくれて助かった」と、感謝を述べた。

ジュノが入隊後すぐにD.P.に抜擢されたのは、勘の鋭さとボクシング経験者だったことが買われたからだ。脱走兵は捕まれば懲役刑で、捕まるまいと必死に抵抗する場合もあるのでD.P.は危険を伴う。アクションシーンも多かったが、「実はボクシングは『D.P.』のために習った。通常のアクションよりもボクシングを基盤にしたアクションシーンが多く、撮影前3ヶ月くらい特訓を受けた」と打ち明けた。

韓国の俳優チョン・ヘイン=ネットフリックス提供

ネットフリックスで配信されたのは8月だったが、その少し前の5月、空軍所属の女性が上官のセクハラが原因で自殺した事件があり、軍への批判が高まっている渦中だった。撮影はこの事件の前だったが、軍隊でのいじめやパワハラ、自殺などはたびたび起きている。チョン・ヘインは「脱走兵と軍隊の不条理を描いた作品なだけに撮影期間は重い気持ちだった」と振り返った。『D.P.』配信後は脱走兵についてのニュースも飛び交った。過去5年間の脱走件数は500件を超すという。

印象的な場面としては最終話を挙げた。ジュノと親しくしていた憲兵が脱走し、トンネルの前で対峙する場面だ。「ジュノとしては複雑な気持ちで捕まえに行き、最も記憶に残る瞬間だった」

続きが気になる終わり方だったので、「シーズン2」についても尋ねてみると「監督と作家が準備中だと聞いている。僕もシナリオを待っているところ」と答えてくれた。

韓国の俳優チョン・ヘイン=ネットフリックス提供

12月には新たなチョン・ヘイン主演ドラマ「雪降花」の放送が始まる予定だ。1987年のソウルが背景のドラマで、主人公の青年スホを演じる。内容の詳細はまだ分からないが、1987年といえば、映画『1987、ある闘いの真実』でも描かれた民主化運動と関連がありそうだ。

日本の視聴者に向けては「日本でもネットフリックスを通して韓国の作品がよく見られていることについてまず感謝の気持ちを伝えたい。僕もネットフリックスを通して日本の作品をたくさん見て、いい刺激をもらっている。今後もおもしろい、いい作品を通して皆さんにお会いしたいです」と語りかけた。