マンチェスター・シティはトッテナムから5000万ポンド(約72億円)でカイル・ウォーカーを獲得し、イングランド出身選手の移籍金の記録を更新した。このことは多くのサッカーファンに衝撃を与えただろう。

もちろんウォーカーの能力を疑問視する者は誰もいない。27歳のウォーカーは、以前からプレミアリーグで最高の右サイドバックの一人とみなされてきた。しかしその額は異例だ。歴代14位の高額で、ディフェンダーとしてはその時点での最高額タイであった。

その後、シティはレアル・マドリーから右サイドバックのダニーロ・ルイス・ダ・シウバを獲得し、ASモナコのベンジャミン・メンディとも契約して、さらにディフェンダーの移籍金記録を更新することとなった。ダニーロは左サイドもこなすことが可能で、中盤でもプレーできる。そしてメンディの獲得はグアルディオラがいかにサイドバックが重要かを強調する意味も含まれるものとなった。

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数多くのトップクラブの中でも、パリ・サンジェルマン、ユヴェントス、バルセロナ、アーセナルといったクラブがサイドバックに投資するようになり、現在の移籍市場において最も重要かつ高額なポジションの一つとなっている。エヴァートンは、すでにプレミアリーグでトップクラスの2人のSBを持っているため、新たな契約を求めて移籍市場に乗りだすことはなかったが、そのうちの一人であるレイトン・ベインズは、2007年に500万ポンド(約7億円)で加入して以来活躍を続け、公式戦通算375試合に出場している。

もう一人のシェイマス・コールマンについては、現在はケガもあり控えに甘んじているものの、足を骨折するまではマンチェスター・ユナイテッドの同じポジションの選手たちと比較されたものだった。すっかりプレミアリーグに馴染み、アイルランドのスライゴ・ローヴァーズFCから6万ポンド(約8億円)で移籍してきたのがはるか昔のことのようだ。チェルシーのビクター・モーゼスと同様に、コールマンはウィングとしてもサイドバックとしてもプレーすることができる。

エヴァートンでは以前は彼のような役割をアイルランド代表のケヴィン・キルバーンがやっていた。キルバーンは現代サッカーにおけるサイドバックの重要性について『Goal』のインタビューでこう語っている。

「攻撃的な観点から見ても、フルバックはおそらく最も重要なポジションだと思うよ。なぜなら、そこを起点にワイドな展開を供給できるからね。でもこのポジションをこなすには運動量が大切だね。フルバックは90分間ずっと走り続けなければならないんだ。ミッドフィルダーは20mから30mのダッシュを繰り返すけど、僕たちは50mから60mのダッシュを断続的にしなければならない。だからこそ評価されるし、世界で最も優秀な監督たちが最高のフルバックを探しているんだと思う。それに多くのサッカーファンも、ピッチ上で最も重要なポジションの一つがフルバックであることを知っているんじゃないかな。もちろん、他のポジションが重要ではないとは言わないけどね」

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グアルディオラ監督もこの意見にはきっと同意するだろう。彼は昨シーズン、ヘスス・ナバスをサイドバックに据え、マンCに現代的なスタイルをもたらそうとした。しかし、バルセロナとバイエルン・ミュンヘンで改革を推し進めた求道者であっても、マンCのベテラン揃いのバックラインに新たな変化をもたらすことは容易ではなかった。

昨シーズンはパブロ・サバレタ、アレクサンダル・コラロフ、バカリ・サニャ、ガエル・クリシがSBとして在籍していたが、「彼らのような年齢の選手では、自分の思いどおりにプレーさせることができない」とグアルディオラは嘆いていた。

「フォワードは相手のミスを突こうと待っているんだ。ディフェンスをひどくコンパクトにして、相手のフルバックの背後を突こうと待っている。アップダウンを繰り返すことのできるフルバックが私のチームにはいないんだよ。彼らは質の高いプレーができるけど、私のチームのフルバックはみな33歳か34歳で、私は選手の質に合わせた采配をしなければならない」

ウォーカー、ダニーロ、メンディの加入で、グアルディオラはついにマンCを自分のイメージ通りのチームにすることができるだろう。彼らとの契約で高額記録を更新し、批判を浴びたかもしれない。しかし高名なるスペイン人監督がチームにトロフィーをもたらすことができるなら、彼らの価値がプライスレスであったことが証明されるはずだ。全てはグアルディオラの“計算通り”なのだ。

文=ロナン・マーフィー/Ronan Murphy