Bellinazzo

中国ツアーに出発したインテルのメンバーのうち、新しくチームに加わった選手はDFミラン・シュクリニアルとMFボルハ・バレロの2人だけだった。移籍市場解禁から間もなく、ライバルチームのミランが2億ユーロを投資していることで、インテルのサポーターからは不満の声が上がっている。しかし今回インテルの新オーナーとなった蘇寧グループのスポーツディレクター、ヴァルテル・サバティーニ氏は冷静な様子だ。

「補強が進まないなんて誰がそんなことを言ったんだ? インテルは名高いチームだよ。私は何も心配していない。補強できる。ゴミのトップチームなんてことはありえないだろう?」

■FFPの監視から解放されず

現状を見てみると、このサバティーニ氏の言葉とは裏腹に多くの矛盾が見つかってくる。蘇寧グループの売り上げは年間400〜500億ドル(約4兆4400億-5兆5500億円)にも上る。資金はあるのだ。なのに、なぜ欲しい選手を欲しいタイミングで獲得できないのか? ファイナンシャル・フェアプレーの監視対象になっていることが重荷なのか?

実際のところ、インテルの場合、過去にファイナンシャル・フェアプレー(FFP)の規定に抵触した「和解合意」が今シーズンも影響している。この合意は2015年に結ばれたものの、2015-16シーズンから2018-19シーズンまで適用されるのだ。この合意でまずインテルに求められたのは、2016年度の決算において赤字を3000万ユーロ(約38億8400万円)までに削減、そして2017年6月30日付けの赤字をゼロにすることだった。結果、インテルは2016年度の赤字を3000万ユーロ以内に留め、目標の一部を達成したことを4月にUEFAへ報告している。また今年6月にも赤字をゼロにするという規定を遵守できているはずだ。

しかしながら、だからとってFFPの監視から解放されることには繋がらない。FFPの基礎となるブレークイーブン・ルールによれば、EFA開催の大会に参加する年の前年までの3シーズンにおいて、赤字を3000万ユーロまでに抑えなければならいという規定がある。ということは、来シーズン、ヨーロッパの主要な大会への出場が叶うと仮定すると、2015-16、2016-17、2017-18シーズンにおいて赤字の総額を3000万ユーロ以内に留めなければならないということだ。すでにインテルは2016年度で赤字の最高額に達してしまったため、2018年6月末の決算において赤字をゼロにしなければならない。

ここ最近のインテルの財布事情を見てみると、2016年6月30日の決算では、収益が1億5000万ユーロ(テレビ放映権料7900万ユーロ(約102億円)、商業収入約5000万ユーロ(約65億円)、入場料2600万ユーロ(約34億円))であったのに対し、トップチームの経費は1億6000万ユーロ(年俸1億1000万ユーロ(約 142億円)であった。この結果からも分かるように、インテルは収入の増加とコスト削減の両方において積極的に取り組む必要があるのだ。

■オーナー企業の思惑は?

蘇寧グループにも考えはある。まずピネティーナ練習場のネーミングライツを約1500万ユーロ(約19億円)で売却するほか、中国企業との契約によりシーズンあたり2000万ユーロ(約26億円)の増収を見込んでいる。2017年秋の決算では、これらの取り組みの効果が表れるはずだ。

ただテレビ放映権料に関してはあまり思わしい結果は得られず、ヨーロッパのビッグクラブほどの収益はまだ見込めていない。2017-18シーズンにおいて、手っ取り早く売上高を引き上げる方法はチャンピオンズリーグ出場だったと言えよう。少なくとも4000-5000万ユーロ(約52-65億円)のボーナスが確保できるため、決してなおざりにはできない要素だ。しかし実際はこのチャンスを逃しており、収入を確保するには至らなかった。

となると、FFPのためにイヴァン・ペリシッチのような高額で売れる選手を手放すしかないのか。2018年も赤字をゼロにすることが求められている上、チャンピオンズリーグ出場を逃しているというハンデは、新チーム結成に相当な負担をかけていることは確かである。だが、このあたりで“資金”と“選手”の確保を確実に行わなければ、いつまでも悪循環が続くばかりだ。

文=マルコ・ベリナッツォ/Marco Bellinazzo