現在の立ち位置: レギュラー
ノルマ: CBとしてレギュラーの座をキープ
目標: サウサンプトンの中心選手に

文=田嶋コウスケ

■今季の目標はワンランク上へ

吉田麻也にとって、昨シーズンは飛躍の年になった。

過去3シーズンは控えに甘んじていたが、ポルトガル代表DFのジョゼ・フォンテの退団を機にレギュラーセンターバック(CB)へ昇格。シーズンの折り返し地点からリーグ戦の全試合に先発フル出場し、リーグ杯でもチームをファイナルへ導くなど、中身の濃いシーズンを過ごした。吉田の表情にも充実感が漂い、試合経験を重ねることでプレミアのCBとして貫禄も備わってきた。

こうして迎える今季、オフの間にサウサンプトンの指揮官が交代した。

プレミアリーグで8位に導いたクロード・ピュエル前監督だが、守備重視のネガティブな戦術がサポーターに不評だった。また、地元紙『デイリー・エコー』によると、ピュエル監督と一部選手との間で確執が表面化。こうした事態を受け、クラブ首脳陣が監督交代に踏み切ったという。後任に就いたのは、昨季までリーガのアラベスを率いたアルゼンチン人のマウリシオ・ペジェグリーノ監督だ。

指揮官の交代で序列が変わってくる可能性もあったが、ペジェグリーノ新監督はプレシーズンマッチで日本代表DFをレギュラーとして起用した。移籍志願書をクラブに提出したオランダ代表CBのフィルジル・ファン・ダイクが退団濃厚の状況にあるだけに、今季も吉田が定位置をキープする公算が大きい。

もちろん、レギュラーCBへの昇格は、吉田の成長がなければ実現しなかった。英紙『ガーディアン』は「MFオリオール・ロメウ、MFジェームズ・ウォードプロウズ、MFネイサン・レドモンド、DFセドリック・ソアレス、DF吉田麻也は、キャリアのベストシーズンを過ごした」と昨季の出来を評価。地元紙『デイリー・エコー』も吉田について言及し、「ミスが減り、パフォーマンスに継続性が出てきた。経験とリーダーシップも備えている」と成長を褒めている。昨季に高めたこうした評価を、イングランドでもうワンランク引き上げるのが、今季の目標になるだろう。

■競争を勝ち抜くために必要な“武器”とは?

プレミアリーグ出場100試合を達成した昨シーズン、プレミアリーグでの挑戦について吉田が次のように語ったことがあった。

「試合に出続けているので、これを継続していくことが大事。そして、よりいい選手になっていかないと。イングランドは世界でも一番、競争が激しいリーグだと思うんで。クラブの成長に伴って、自分も成長していかないと置いていかれる。そうやって置いていかれた選手も見てきた。逆に、期待以上の伸びを見せてステップアップした選手もいる。もちろん、自分は後者になりたい。ただ、まずはサウサンプトンで結果を出すことが大事。ここで長くやるというより、もっといい選手になりたいって感じですね。もっといい選手にならないと、ここでは生き残っていけない」

さらに、吉田はCBとして自分の”武器”を持ちたいと話す。ポイントはビルドアップになるという。

「もうちょっと、ボールを持っている時のアイディアの質を上げたいと思っています。ここから、プラスアルファで自分の武器を作っていきたい。守備を含めてベーシックなところはもちろん上げているんだけど、そこから突出した何かを武器として持つことができたら、さらにいい選手になれる。イギリスでは、敵のボールを弾くことや止めることが評価されるとは思うんですけど、そこはみんなできるので。そこから突出するには、もうちょっと武器が必要かなと思っています」

プレシーズンマッチを見る限りで言えば、ペジェグリーノ新監督が志向するサッカーは、最終ラインを高い位置に保ち、縦に素早く展開するアグレッシブなスタイルだった。”繋げるCB”がセールスポイントの吉田としては、後方部からのビルドアップでも貢献していきたい。

そんな吉田に記者団からこんな質問がぶつけられたことがあった。「試合に出続けるようになり、フィールドで余裕を少し感じたりする?」と。吉田は首を横に振って答える。

「余裕なんて感じたことないですよ。(移籍市場が開く)半年、半年が勝負なんで。一瞬でも気を抜いたら、またすぐ足元すくわれるという感覚が強いです。いつも危機感に苛まれて生きています」

吉田は苦い表情を浮かべながら「危機感」という言葉を発したが、それは成長を促す良薬でもある。危機感を背負いながら、もう一歩前へ──。危機感を充実感に変えて、今シーズンをステップアップの1年にしたい。

文=田嶋コウスケ