酒井宏樹(マルセイユ)

前半戦結果:リーグ戦では17試合に出場(うち先発15試合)。2アシストを記録。

チーム内序列:右サイドバックのファーストチョイス。右ウィンガーのサールがバックアップ

前半戦採点:85点

後半戦の目標:ガルシア監督も課題に挙げているゴールエリアでのより積極的なプレー

文=小川由紀子

左サイドバックでも頼られる存在

ヨーロッパリーグのグループリーグ第5節、コンヤスポル戦。終盤82分に左サイドバックのジョーダン・アマヴィが退場処分になると、ガルシア監督はそれまで右サイドでプレーしていた酒井を迷わず左にスイッチした。次節のザルツブルグ戦でも、アマヴィが出場停止処分、パトリス・エヴラも観客への飛び蹴り事件をきっかけにクラブを退団と左サイドバックが人材不足に陥ると、酒井がきっちりそのポストを埋めて零封に貢献。右サイドバックで先発に定着していることはもちろん、人手が足りないとなれば監督から他ポジションをも託される、酒井は2シーズン目の今季、マルセイユにとってますます「必要不可欠な選手」となっている。

「監督から求められたポジションでプレーするだけ。クオリティが落ちるのはよくないので、左でもしっかりできるように準備はしたい」

酒井はふだんからときどき左サイドで練習しているという。

ただ、右サイドの人材が乏しく、軽いケガなら痛み止めを飲んででも強行出場していた昨季とは違い、今季は本職ウィンガーのブーナ・サールがバックアッパーに控えている。サールは攻撃手だけあり、よりオフェンスに比重をかけたい時のオプションにもなる。しかし大事な試合の前に主力選手を温存する時にもれなく『温存組』に入るのは酒井であり、パリSG戦といった大勝負では欠かさず先発で使われている状況を見る限り、サールとの間でヒエラルキーが変わる様子はない。

本人同士も、プレーのタイプが違うこともあり、「チームのために2人でやっていこう」と話し合うポジティブな関係にある。

シーズン序盤、第5節のレンヌ戦では、前半の38分という妙な時間帯に酒井が交代を告げられる珍事があった。致命的なミスをしたわけでもなければ、むしろピッチ上で効果的なプレーをしていた一人だっただけに、本人を含む誰にとっても驚きだったが、一番理解していなかったのはおそらくガルシア監督だった。「代表戦での疲れが見えたから」などと指揮官は苦し紛れのコメントを吐いたが、前節でモナコに6-1と大敗、さらに開始10分で0-2とリードされたことに焦っての血迷った采配だったとみられている。

「なぜサカイを下げた?」と翌日各メディアで大きく報じられたことも、酒井の存在感の大きさを示していた。

目標は初ゴール

そんな、マルセイユの右サイドバックにしっかりと居場所を築いた酒井が、今季後半戦に向けてさらにレベルアップするためのキーポイントが2つある。

ひとつは、より積極的に攻撃に絡むプレーをアピールすることだ。

ガルシア監督も昨シーズンの終わりに、今季の課題として「攻撃エリア内でより効果的な動きをすること」を挙げている。そしてチャンスがあれば迷わず自分でシュートを打つようにと本人にも指示している。

昨シーズンは2アシスト、今季は前半戦だけですでに同じ数字に達した。

実際、彼の持ち味でもあるクロスの精度は一層向上したと、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督のアシスタントで、マルセイユOBのジャッキー・ボヌベー氏もマルセイユの地元紙『ラ・プロヴァンス』に話している。

昨季もエースのバフェティンビ・ゴミスが何度も惜しいチャンスをふいにし、サポーターから「彼のミスショットがなければサカイは10アシストは記録している」と言われていたほどゴールにつながってもおかしくない絶好のラストパスをほぼ毎試合献上していたが、『幻のアシスト』を『結果』という形に格上げすること、そして初ゴールを決めることは酒井にとっての課題だ。

11月29日に行われた15節のメス戦では、日本代表の同僚、川島永嗣が守るゴール前に何度か迫った。試合後、川島も酒井に「シュート打てたんじゃないのか?」と声をかけたほど、GKに「打ってくるか?」と思わせる位置まで詰めていたが、酒井はゴール前に張り出してきたルイス・オカンポスへのパスを瞬時に選択。思惑通りオカンポスが決めて、酒井のアシストも記録された。

このプレーにはガルシア監督も、「ルーカスのゴールシーンでのリアクションは非常に良かった。(自分でゴール?)アシストしたからオッケーだ。そのうちゴールも決めるだろう。なにより彼は進歩している。ものすごく満足だ」と満面の笑みを見せた。

すでに酒井は、『試合で常に100%出し切る戦士』としてファンやメディアから確固たる評価を得ている。果敢なダイビングによって間一髪でゴールを防いだシーンも何度も披露した。

ここからさらに飛躍するためにこの後半戦でどんどん見せていきたいのは、メス戦のような判断力やゴールを狙う意識を常に持ちつつ積極的に攻撃チャンスに絡む姿勢、そしてより一層精度を磨いたクロスだ。

フランス語習得で真のリーグ・アン戦士に

そして2つめは「フランス語の上達」。

実のところ、酒井本人はコミュニケーションの部分でそれほど苦労しているわけではない。外国のクラブに挑戦する選手には、必ず「コミュニケーション問題は?」という質問が浴びせられるが、酒井本人は、「すべての外国人に共通することですけど、プレーが悪くなったらそう言われる。でも実際はそんなことじゃない。もちろん言葉が大事なのは間違いないですし僕もトライしていますけど(注:かなり集中したフランス語レッスンを受けている)、試合中のコミュニケーションは問題ない」と話しているし、実際そうだろう。すでにドイツで4年プレーした経験から、

「耳が慣れてくるのが大事だとドイツでも実感したので、どれだけしゃべれるようになったとしても、ある程度の時間が必要。でないとイントネーションとかも含めて、自然に自分のものになっていかないので1、2年は様子を見ている。でもその1、2年で良いプレーをすれば、批判は出てこないと思うので、プレー次第」と自分なりの考えを持って取組んでいる。

ただ、昨シーズン、ルディ・ガルシア監督が冗談で「サカイは素晴らしいサイドバックだが、フランス語力はゼロ!」と言い放って以来、地元記者たちに『サカイ=フランス語苦戦中』のイメージが刷り込まれて、会見の席などでは必ず酒井にフランス語の上達について質問が飛ぶ。

遠いアジアからリーグ・アンに参入する選手はまだそれほど多くない。彼らは、「フランスでの生活に馴染んでいるか?」という部分も含めて、言語の理解度にことさら注目する傾向にある。極端な話、フランス語で受け答えができるようになって一人前、とみるような向きさえあるのだ。

試合中に何かミスがあったとき「監督や周囲の指示がわかっていなかったのだろう」などという短絡的な批評を受けないためにも、フランスリーグで正当な評価を受けるための一要因と思ってフランス語習得に精進して損はない。

入団からここまでは、まずはプレーで自分の力を見せることが最重要事項だった。チームシートに当然のように名前が記され、批評家たちにも認められているところまで達したここからは、さらにその器を大きくしていく時だ。

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