世界最高峰のプロリーグの一つであるスペインのラ・リーガが、Jリーグとの戦略的連携協定を結んだ。Jリーグの村井満チェアマンが「登録選手の6割ぐらいが下部組織・カンテラーノ出身。これは日本が大変学ばなければいけないところ」と語るように、Jリーグにとって育成面や経営面で、世界的ビッグクラブと地方の少クラブが同居するラ・リーガから学ぶことは多いだろう。

一方、世界最高峰のリーグであるラ・リーガは、どんな目的意識を持ってJリーグとの協定を結んだのか。ラ・リーガは極東に位置するJリーグをどのように見ているのか。協定締結のために来日したハビエル・テバス会長を、“今、スペインで最も熱い日本人”である『Goal Japan』編集長の大川佑が直撃した。

■Jリーグは重要なパートナー

――今回、ラ・リーガはJリーグと戦略的連携協定を結びました。ラ・リーガにとっては、初めてアジア地域のリーグと提携することになり、Jリーグにとっても初めてヨーロッパ地域のリーグと取り組んでいくことになるそうですね。まずは、Jリーグとの提携について具体的な取り組み内容を教えてください。

具体的に考えていることは四点ほどあります。一つ目は日本とスペインの両国でクラブ同士の交流試合を行うことです。今回はセビージャが来日しますが、スペインのチームが日本に来るだけではなく、日本のチームもスペインに呼びたいと思っています。

二つ目に若い世代の交流も考えています。教育や育成、あとは指導者の育成においてもノウハウを共有していきたいと思っています。三つ目はインテグリティ(誠実、真摯、高潔さ)です。Jリーグには試合中の透明さを求めていくインデグリティがあります。そういった面でも、Jリーグが我々の参考になる面はありますね。最後にクラブと組織の部分です。お互いのリーグ同士の運営方法を意見交換していきたいと思っています。

――この提携は期間が決まっているものなのでしょうか?

具体的な期間を設けていませんので、今後交流を深めていき、新たなアイデアや試みが出てくるかも知れないです。そうなればさらに年月を加え、長いお付き合いになることもありえます。

――世界中に様々なリーグがある中で、Jリーグと提携を結ぶことになった背景を教えて下さい。

Jリーグは戦略的に大変重要なパートナーです。アジア全体への進出を考えた時、さらに日本においてもとても重要な存在です。また、Jリーグにはしっかりとした組織があると感じていますし、その中で色々と革新的な取り組みを進めている。スペインという国にとっても、ラ・リーガにとっても、大変重要なパートナーになるのではないかと考え、今回の協定締結を決めました。

――Jリーグの革新的な取り組みとおっしゃいましたが、それは具体的にどういうことを示していますか。また、日本とつながることがスペインにどのような利益をもたらすのか。さらにアジア全域を見たときに、日本をどのような位置づけで見ていますか?

一つ目は技術革新というところです。たとえばオンラインのプラットフォーム。Jリーグは今季からDAZN(ダ・ゾーン)との大型契約を結び、ライブストリーミングサービスでの放送に切り替わりました。今後、インターネットサービスは注目するべき分野だと思います。この分野は例えばスマートフォンのアプリなど身近なところから発展していくと思うので、日本がどのような形で進めていくのかすごく興味があります。また、日本とスペインではファンベースや観客、視聴者も全く違うので、日本のファンたちがスペインのサッカーをどのように見ているのか大変注目しています。

Jリーグはアジア地域において非常に高いレベルにあり、重要な位置づけがありますが、我々は決してJリーグを競争相手として見ているわけではありません。日本のJリーグとスペインのラ・リーガで、どうやって交流を深めていけるかというところなので、あくまでパートナーとして考えています。

――ラ・リーガとして、他にパートナーシップを組まれているリーグはありますか?

日本以外の他の国とも提携しています。その内容は個々の国の状況に合わせているので、今の日本と同じ施策を行っているものはありません。例えば、サッカーが社会的な地位を築けていない国ではサッカー業界の精神を伝えたり、汚職の問題が台頭している国ではインテグリティのところに重きを置いたり、ユース世代の育成に力を入れている国では指導者の交流をより深めるなど、それぞれの国に合わせた様々な形で連携を取っています。

――2013年4月からラ・リーガの会長を務めるテバスさんは、これまで八百長撲滅や財政改革等、リーグの抜本的な改革に乗り出してきました。商業面ではイングランドのプレミアムリーグに追いつき、肩を並べたいというお考えのようですが、今回の提携は日本に商業面でも期待されているということでしょうか?

日本を含む、特にアジア地域と提携を結ぶことは強みになると思っています。今はまず日本のJリーグと組んでやっていくということしか考えていませんが、今後はまたそれが他の国、地域に広がっていくかもしれません。ただし、提携は日本のJリーグのようなしっかりとした組織があるところを前提にしていますので、なかなかすぐには進まないかもしれません。Jリーグの組織力は世界トップクラスにありますからね。

――Jリーグの印象についても聞かせてください。今季から先ほどお話にも出たDAZNがJリーグの放映権を取り、OTTサービス(Over The Topの略。動画・音声などのコンテンツを提供するサービス)でJリーグを放送しています。まさにJリーグのあり方、見せ方が変わっている真っ只中ですが、テバス会長ご自身から見た印象はいかがでしょうか。

我々もオンライン上のサービスは将来に向けて大変重要であると考えていますので、そういった意味でもJリーグにはとても注目しています。これらのサービスの整備・普及は簡単ではなく、国によっては10年、15年かかるところもあるかも知れません。ただ、将来的には非常に重要な分野だと思いますし、DAZNはこの分野のパイオニアで、グローバルな考えを持った、スポーツ業界にとっては大変躍進的な会社だという印象を受けます。ですから、JリーグとDAZNの取り組みには、すごく興味がありますよ。

――将来的にはラ・リーガもそういったインターネット配信サービスにシフトしていくという選択肢も考えていらっしゃるのですか?

設備的なところでは難しさもあります。ただ、将来に向けては重要なピースであり、可能性としては大いにあるのではないかと思います。私自身も期待していますよ。

■目標は日本人にスペインサッカーを広めること

――今提携の取り組みの一環として、今夏にはスペインからセビージャが来日し、17日にセレッソ大阪(StubHub ワールドマッチ2017)、22日に鹿島アントラーズ(明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017)と対戦します。こういった交流の意義についてテバス会長はどう考えていますか?

ただ単に試合をして帰っていくのではなく、その後どうやって続けていくのかが重要です。セビージャだけではなく、スペインのサッカーをどうやって、どれだけ日本の人たちにとって身近なものにしていくのかというところを大きな目標にしているので、試合をした後にどうやって交流を続けていくかを考えたいですね。

――ラ・リーガとJリーグとしてだけでなく、それぞれのクラブ同士の交流もこれを機に増えていくのでしょうか?

最終的な判断はクラブに委ねますが、たとえば日本のチームをスペインに招待して試合を行うということも考えています。ラ・リーガとしては、そういった交流を続けていけるように支援していきたいです。

――そんな中で今回、来日するセビージャについても聞かせてください。ホルヘ・サンパオリ監督がアルゼンチン代表監督就任に向けて退任し、セルタを率いていたエドゥアルド・ベリッソ氏が新監督に就任しました。セビージャはどのようなチームになるとお考えですか。

セビージャは大変有能な選手が多く、スペイン有数のクラブであります。ヨーロッパリーグでも3連覇(2013-14〜15-16)を成し遂げるなど、国内外で数多くのタイトルを獲得しています。新しい監督が就任し、多くの新加入選手が加わりました。ここ数年でどんどん成長しているチームですので、新たなシーズンに向けてどのようなチーム作りをしていくのか注目してほしいですね。ベリッソ監督はセビージャですごく成功するんじゃないかと思います。

――なるほど。Jリーグの2チームと新生・セビージャがどんな試合を見せてくれるのか、とても楽しみですね。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。そういえば、私はこの夏にひょんなことからアトレティコ・マドリーのサポーターと交流が生まれ、スペインではちょっとした有名人になったんです(※事件の詳細は「 Goal編集長が大炎上!?アトレティコのファンから非難が殺到した驚愕の理由とは? 」をチェック)。そういった背景もあり、今年の夏にマドリードへ行きたいと思っているんですよ。

そんなことがあったんですね(笑)。私も東京とマドリードを行ったり来たりしていますので、またお会いするのを楽しみにしています。ぜひ、マドリードの試合会場でお会いしましょう。

インタビュー=大川佑
文・構成=清水遼