■コミュニケーションがもたらした臨機応変な対応

泰然自若――。これこそがまさにコロンビアとの初戦に勝利した日本代表の現状を表している言葉なのだろう。初戦で大きな勝ち点3を得たチームが、自然体と謙虚さを持ってセネガル戦に向かおうとしている。

決して興奮しすぎることも、足下を見失うこともない。「すべてを懸けて戦う」と位置づけていた大一番を制しても、選手たちは試合直後にうれしさこそ漏らせど、落ち着き払った様子を見せ続けている。

大半の選手が口にしていたのが、「まだ1試合に勝っただけ」というフレーズ。初戦で殊勲の活躍を見せた香川真司が「ただ1点取って、1勝しただけ。これからタフな戦いが続く」と話せば、長友佑都は「最初に勝っても、あと2試合負けたら話にならない。勝利に喜んで自信を付けるのも大切だけど、一回危機感持たないと」と言葉を紡ぐ。

コロンビアに対して4年前の雪辱を果たし、決勝トーナメント進出に向けて大きく前進したにもかかわらず、チームには全く浮かれる様子が感じ取れない。しっかりと早々に次を見据えているのは、選手たちの対応力や経験値がアップしている証なのだろう。そこに不思議な安心感を覚えたのも確かだ。

自分たちにできることをすべて出し切る。そして実力を過信することなく、卑下することもなく、しっかりと相手に向き合う。試合中に生まれる困難は即座に判断して修正し、個々のプレーに責任を持ちながらチーム全体で力を合わせてコミュニケーションで乗り越える。これが西野ジャパンのスタイルである。

この戦い方はどのチームと対戦しても、どの選手と対峙しても、基本的に大きく変わることはない。しかも誰がピッチに立っても同じ共通認識で戦えるだけのコミュニケーションを取っている。事前のスカウティングで対策は練っているが、「ワールドカップでは何が起こるか分からない」という考え方がベースにあれば、パニックに陥ることはない。すべては捉え方次第だ。

原口元気が「開始3分でコロンビアに退場者が出て10人になるなんて、いろいろなシチュエーションを考えてきた中でも出てこなかった。想定はするけど、始まってからの対応力のほうが大事だと思う」と振り返ったように、ピッチ内で臨機応変な対応ができている現状は大きな強みである。

■勝負師・西野朗が見えたマネジメント

目の前の試合に、そして相手選手にどうやって勝つか。それだけを考えているのだろう。大迫勇也はセネガル戦に向けて「(今の状況は)優位とは思っていない。もう一回初戦のつもりでリセットしてやるだけ」と一戦必勝のスタンスを崩さない。

そんな中、セネガル戦の前日会見では西野朗監督の強気な発言が目立った。

「首位に立っている中で、3戦目まで持っていくかどうか。3戦目は敗者復活戦。選手たちに2戦目で決めなければいけないと伝えています。ここで(グループステージ突破を)目指す。多少のリスクがあっても、2戦目で勝負を懸けると選手たちにも伝えている」

セネガル相手に引き分けを狙って実現したとしても、決勝トーナメント進出確定は3戦目に持ち越しとなる。そうなれば、ポーランド相手にも引き分け以上の結果が求められる。西野監督が「3戦目は敗者復活戦」と話した意味は、2試合で決められなかったチームの戦いという意味。もちろん2連勝しても勝ち抜けが決まらない可能性はあるが、わざわざセネガル戦で腰の引けた戦いを選択して、チャンスを逃す必要はないということだろう。

コロンビア戦のハーフタイム、強豪相手に「最悪、引き分けでもいい」という意見が出たチームに対して、指揮官は「この試合は勝たなければいけない」と方向性を統一したという。相手が一人少なく、後半に運動量が落ちることを見越して、勝つチャンスを逃さじとしたわけだ。“勝負師”の勘が働いたとでも言おうか。そして今回のセネガル戦は連勝を狙うと明言している。謙虚さをなくしたわけではない。しっかりと足下を固めつつ、狙える状況にあるなら狙うだけ。初戦の結果を受けての戦い方を選んだまでである。

そして他国の試合結果から、監督も選手たちも最後に勝負を分けるものが勝利への執着心であることは痛感しているはずだ。

初戦で勝利を逃していたブラジルとドイツは、第2戦でも終盤まで苦しい状況に追い込まれ、グループステージ敗退の恐怖と戦いながら、最後の最後まで強い気持ちで勝ち点3を目指し続けた。そして後半アディショナルタイムに決勝点を奪った。まさに「もぎ取った」という表現がふさわしいゴールだった。一方。同じく初戦で引き分けていたアルゼンチンは、クロアチアとの第2戦の終盤にメンタルが切れたような状態で失点を重ねて惨敗。これでは世界とは戦えない。日本代表も強豪国の試合からメンタルの重要さを学んでいることだろう。

「嫌というほど準備をしても、試合では想定外のことが起こる」と話したのは、コロンビア戦前日の吉田麻也。そしてその試合で日本に想定外の状況が転がり込んだ。日本代表はまだ1試合に勝っただけ。だからこそセネガル戦が持つ意味は本当に大きい。そこには初戦同様に冷静な判断とチャレンジを忘れないことが第一となる。

ワールドカップでは何が起こるか分からない。そして何を起こせるかも分からない。ただ、何かを起こすのは自分たちに他ならない。そう、すべては捉え方次第。とにかく熱いハートを持ちながら冷静な判断で勝利を目指し続けるだけだ。決勝トーナメント進出を一気に手繰り寄せる覚悟を固め、西野ジャパンが泰然自若の姿勢でセネガルとの大一番に臨む。

文=青山知雄