カルチョのファンは熱しやすく冷めやすい。そしてインテルサポーターは今、左サイドを激しく上下動する日本人サイドバックに“お熱”のようだ。

美しく、印象的な出来事であった。ネラッズーロのユニフォームに身をまとう長友佑都に対し、本拠地「ジュゼッペ・メアッツァ」でスタンディングオベーションが巻き起こったのである。

24日に行われたサンプドリア戦において、日本代表DFはインテルサポーターから拍手喝采を浴びた一人となったが、これは長友にとって初めての出来事だった。

■批判が称賛に変わるまで

これまでインテルを指揮した監督全員から厚い信頼を受けていたものの、少なくともファンからはそれほど重要な存在とみなされることはなかった。もちろん昨シーズンに目立っていた、失点に直結するミスがサポーターの頭に残っていた影響もあるだろう。

それでも、長友は努力と走ることを止めなかった。ホームのサポーターに口笛を吹かれても、つとめて冷静なプレーを心がけ、先発メンバーに帰ってくる。今季も同じことが起きたに過ぎない。

しかし、スタンディングオベーションという評価の表現方法は、日本代表DFにとって大切な愛の証となったことは間違いない。長友自身も試合後には自身のTwitterを更新し、「素直に嬉しかった」と振り返っている。

長友は2010年にチェゼーナから加入。現在に至るまで、インテルでの公式戦出場数は通算205試合にも上る。今シーズンのセリエAでは、第10節を終えてすでに8試合でプレー。欠場はターンオーバーのためのスパル戦およびジェノア戦のみとなっている。

ようやくサポーターの心をつかみ取ったかに見える31歳の日本代表は、サンプドリア戦での拍手をイタリア語でファンに対し、感謝の言葉を述べた。

「今日は良い結果を継続して出すことが重要でした。チームメートの皆を誇りに思います。サン・シーロに来てくれた皆さん、ありがとうございました」

■長友への称賛の裏で

長友が序列を上げる一方、DFダルベルト・エンリケが日陰に追いやられている。ブラジル人サイドバックは、長い交渉の末、2000万ユーロ(約26億円)でニースから加入。しかしこれまでフル出場したのは2試合のみで、さしたる目立った活躍もない。

ダルベルトが最後に出場したのは10月1日まで遡る。ベネヴェント戦の最後の5分間、ピッチに入った。それ以降、ミラン戦、ナポリ戦、そしてサンプドリア戦と3試合連続でベンチに座るときが続いている。スパレッティはサンプドリア戦において、彼ではなくDFダヴィデ・サントンを起用したほどだ。

試合終了後、ルチアーノ・スパレッティ監督はこの選択について説明をつけ加えている。

「ダルベルトは将来、最強の選手になるだろう。だが、まだチームのメカニズムを学ばなければならない。彼を起用しなかったのは、キャリアを潰したいからではない。フィジカルの強い選手が必要だったからだ」

ひとまずダルベルトの時がやって来るまで、インテルは長友に歓喜することになる。スパレッティ監督は戦術理解度を評価する上で重要な要素に含めており、ダルベルトが難しいスタートを切ったこともそれほど驚きではないと言うこともできる。しかし、選手を簡単に見捨てることをしないのも“ミステル”の特徴だ。だからこそ、長友は夏のキャンプで精力的な働きを見せて残留、そしてメンバー入りを勝ち取った。どのような状況からでも、今のインテルでは“アイドル”へと変貌する可能性が残されているのだ。

少なくとも、一晩で長友が証明した。ライバルであるダルベルトにとっても、その事実は大きな心の支えとなるに違いない。

文=レリオ・ドナート/Lelio Donato