ハメス・ロドリゲスがバイエルン・ミュンヘンと2年間のレンタル移籍を交わした。キャリアを取り戻すには、自分を信頼してくれる監督のもとでプレーすることが必要だったのだ。

2014年のワールドカップ・ブラジル大会で大活躍した彼は、レアル・マドリードへ移籍しトップチームでプレーしてきた。しかし今年、カーディフで行われたユヴェントスとのチャンピオンズリーグ決勝では、どん底を味わうこととなった。

ジネディーヌ・ジダン率いるレアル・マドリードはスター揃いのクラブだが、そうであったとしても、あの夜ベンチにさえ入っていなかったことは今でも驚きを禁じ得ない。さらにハメスの代わりに攻撃陣の控えとなっていたマルコ・アセンシオが4点目を決めたことも、コロンビア代表スターの傷口に塩を塗ることとなっただろう。

チャンピオンズリーグの締めくくりに決定的な屈辱を味わったハメスは、おそらく我慢の限界に達していたことだろう。準々決勝のバイエルン戦でもわずか数分しか出番がなく、準決勝のアトレティコ・マドリードとの2試合では起用さえされなかったのだ。

フラストレーションがたまった彼は、5月のリーグ戦、CDレガネスと対戦した試合でサブに回された後、チーム批判をするようになった。気持ちは分からないでもないが、だからと言って事態が好転するわけでもなかった。

ジダンはベテラン選手たちを信頼する傾向があり、同様にベテラン選手たちの多くからも最高の信頼を得ているようである。しかしジダンの穏やかな物腰と優れた人材活用術の恩恵を受けているのは、クリスティアーノ・ロナウド、イスコ、カゼミーロの3人だけであり、不調に陥ったハメスには最後まで手を差し伸べられなかった。

昨シーズン、ハメスがリーガ・エスパニョーラで先発したのはたったの13試合。これは、ジダンが完璧にバランスのとれたスターティングメンバーを決めていたからである。ハメスを司令塔にするというプランは、ジダンの頭の中にはなかったことは明らかだ。

James Rodriguez Real Madrid

中盤に何の変化もなく毎度のように配置されたのはカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースであり、ガレス・ベイルが負傷したことでダイヤモンド形の陣形にせざるを得なくなったときでさえも、ベイルの代役以上の働きを見せたのがイスコであった。

ハメスは先発から締め出されて明らかに苛立っていた。レアルが鹿島アントラーズに勝ってクラブワールドカップ優勝を成し遂げた昨年12月には、この期間が自身のレアルにおける将来を決める「7日間」であったと宣言し、日本で開催された決勝に出番がなかったことで彼のフラストレーションはすでに限界に達していたのだ。

レアルがスペインリーグ優勝とともにチャンピオンズリーグへの出場権を得て締めくくった昨シーズン、ハメスは2冠達成のレアルにおいて端役に過ぎず、移籍は確実視されていた。マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が最有力であると見られていたが、最も迅速かつ決定的に動いたのはバイエルン・ミュンヘンだった。バイエルンがハメスに接触したと報道された翌週には、カルロ・アンチェロッティ監督自身が契約を命じたとのニュースが流れるほどのスピード感で交渉を進めた。

アンチェロッティ監督がレアルで指揮を執っていたときには、背番号10は監督の意図通りに動いて才能を発揮し、常にスターティングメンバーに名を連ねていた。そして時にはオーソドックスな司令塔として、またある時はサイドや中盤の底でプレーしていたのである。

もちろん彼のようなマルチプレーヤーはバイエルンでは重宝されるだろうが、スターティングメンバーに常に名を連ねることができるかはまた別の話だ。フィリップ・ラームとシャビ・アロンソの引退で中盤のポジションに空きはあるにしても先発争いは避けられない。それでもレアルにいた頃よりは彼は自身の能力を活かしやすい環境にあるだろう。

James Rodriguez GFX

James Rodriguez Real Madrid

さらにウィンガーとしてのロドリゲスは、引退間近のフランク・リベリやアリエン・ロッベンに代わっても特別な活躍ができるはずだ。ロベルト・レヴァンドフスキのような純然たるストライカーの後ろでハメスのような創造性あふれる選手を起用するのも悪くない。チアゴ・アルカンタラやトーマス・ミュラーとの厳しい競争が待っているが…。

■好都合の“レンタル”

今回のロドリゲスの “レンタル”という形の移籍には、少し驚きがあるかもしれないが、これはバイエルンにとって好都合だったのだ。レアルは明らかに利益をあげられる価格を要求しようとしていた。2014年のワールドカップの後、ASモナコからロドリゲスを引き抜くために8000万(約103億円)ユーロを支払ったレアルとしては、全額とはいかないまでも、取り返せるだけ取り返そうとしていたのである。

しかし蓋を開けてみれば、彼の移籍に関する詳細は公表はされてはいないものの2019年までの2年契約で1000万ユーロ(約12億円)であるとメディアによって伝えられる。同じ期間の完全移籍となれば、最低でも3500万(約45億円)〜5000万ユーロ(約64億円)が必要なところだ。

冷静に見れば、現状のハメスに見合うのはまさにこのくらいの額だと納得できるだろう。25歳の全盛期の時ならばもっと多額だったかもしれないが、レアルでは伸び悩んでいた。得点は挙げていたとしても、ライバルを押しのけてスタメンで活躍するには充分なものでは決してなかった。

「この移籍を取りまとめることができて、我々は喜んでいる」と、バイエルン・ミュンヘンのカール=ハインツ・ルンメニゲCEOはそう明言した。

「ハメスとの契約は、カルロ・アンチェロッティ監督の最大の願いだったんだ。彼とアンチェロッティ監督は、レアル・マドリーでともに仕事をして成功した経験があるからね。それにロドリゲスはマルチプレーヤーなんだ。得点もできるし、アシストだってできる。そしてセットプレーのキッカーとしても優れているよね。この移籍が我々チームの質を高めてくれることは間違いないよ」

ハメスは今や自分の能力を分かってくれるチーム、監督のもとに行くこととなり、成功の青写真を描いているに違いない。この移籍は2009年にレアルを追いだされ、バイエルンに逃げ込んだロッベンのことを思い出させる。移籍後、バイエルンで実りある8年を過ごしたロッベンは、バイエルン・ミュンヘン史上最高の契約の一つと言われている。

ハメスが活躍する条件はもう十分すぎるくらいに揃ったのだ。彼がロッベンと同じように成功の道に進むことをこれから見守っていこうではないか。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton