毎年、この時期は、ファンも専門家もこぞって、来るシーズンの各チームの予想イレブンについて語るものである。目下のところ、バイエルン・ミュンヘンの予想イレブンの中に、トーマス・ミュラーの名前を見つけるには、かなり目を凝らさなければならないようだ。

この夏、ドイツ王者には大変革がもたらされている。昨シーズン、タイトルは獲得したものの、ときに覇気のない試合を見せたチームに、カルロ・アンチェロッティ監督が新たな活力をもたらそうとした結果、大勢の新顔が加入することになったのだ。

シャビ・アロンソとフィリップ・ラームが揃って引退したことで、ディフェンスラインと中盤にそれぞれ一つずつ空きができた一方、キングスレイ・コマンの完全移籍とハメス・ロドリゲスとのローン契約で、アンチェロッティ監督は、攻撃においていくつか面白い策を講じることができるようになった。

もちろんバイエルン・ミュンヘンは、コランタン・トリッソにベンチを温めさせるために4000万ユーロ(約52億円)を使ったわけではない。また、バイエルンのラインナップにおいて、アリエン・ロッベンやアルトゥーロ・ビダル、チアゴ・アルカンタラのような選手たちは代えが利かないことはすでに昨シーズン証明されている。

Thomas Muller James Rodriguez Bayern

最前線において、ロベルト・レヴァンドフスキが不動の背番号9であることは間違いない。ロッベンとコマンが右サイドを争うことは簡単に予想がつくし、中央の試合を組み立てるポジションのファーストチョイスは、トリッソとハメスだろう。

周囲がミュラーの定位置が危ういと感じ始めたとき、議論は自然と巻き起こった。議題は生え抜き選手であるミュラーの役割と、バイエルンでの長期的な未来についてだ。

バイエルンの元スポーツ・ディレクターであるマティアス・ザマーはアンチェロッティ監督に、ミュラーをバイエルンの「魂であり未来」として認識するよう嘆願したというものがある。バイエルンはここ数シーズンで、ラームとバスティアン・シュヴァインシュタイガーが抜けたことにより、地元出身のヒーローがいなくなってしまった。ザマーは、ミュラーを起用しないことが間違ったメッセージとなることを恐れているのである。

■口出しは不要か

ウリ・ヘーネス会長は先週、中国で行われたプレシーズンのインタビューで、いらぬ口出しをする前にミュラーが体調を回復できるようバックアップするようにと、ザマーに苦言とも言えるアドバイスを送った。

しかし、はっきりしていることがひとつある。それは、ミュラーにとって、アンチェロッティ監督の下での最初のシーズンが、ジョゼップ・グアルディオラ元監督の最後のシーズンの時ほど、楽しいものではなかったということだ。ミュラー自身も、『Goal』のインタビューでアンチェロッティ監督の期待に応えられるようになるまでに、時間がかかったことを認めている。来るシーズンに向けての監督の構想のなかで最上の存在でありつづける努力を、ミュラーがしなければならないことは明らかだ。

Thomas Muller Bayern

■長期間のスランプ中?

昨シーズン、ゴール前でのミュラーの得点シーンは減り、リーグ終盤の大事な試合で活躍することができなかった。

さらに時計の針を巻き戻せば、ミュラーはチャンピオンズリーグの準決勝のアトレティコ・マドリー戦で、PKをミスした後、どん底に落ちていた。ときには、999分もの間ゴールを決めることができず、ブンデスリーガの長いシーズンで、たった5得点しか挙げられなかったことは見過ごすことはできない。

ミュラーが、ユース時代から在籍しているバイエルンを離れる時が来たのではないかといううわさも、無視できない事態になっているのである。

■価値を再び示せるか

2年前の夏、マンチェスター・ユナイテッドは、ミュラー獲得のために1億ポンド(約145億円)を準備していたが、インフレが加速する現在の移籍市場でさえ、今のミュラーがその価格に見合うとは思えない。チェルシー、アーセナル、リヴァプールがこぞって、今回の移籍市場でミュラーに興味を示したが、バイエルンは、手放さないという態度を変えなかった。

多くの点において、今シーズンは、ミュラーのサッカー人生において、最も重要なシーズンになるかもしれない。コンフェデレーションズ・カップで優勝したドイツ代表では、いかに国際的な選手であっても、その栄光の上に、いつまでもあぐらをかいていてよいわけではないことが明らかにされた。レオン・ゴレツカやティモ・ヴェルナーといった新しい才能の台頭により、ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督は、前線の選手として、これまでよりも能力の高い選手を招集できるようになったのだ。

トーマス・ミュラーが、今シーズン、結果を出せないということになれば、ワールドカップ連覇に挑むドイツ代表の中に、彼の名前はなくなるかもしれない。そうなれば、彼のバイエルン・ミュンヘンの時代もまた、終わりを告げることになるだろう。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton