■バカヨコとは何者か

今夏の移籍市場で、ティエムエ・バカヨコは、モナコからチェルシーへのステップアップを果たした。移籍金4000万ユーロ(約52億円)でイングランドに向かったのである。

モナコが将来有望なボランチとしてレンヌからバカヨコを獲得した時の契約解除金はおよそ800万ユーロ(当時のレートで約9億6000万円)であった。彼はその6倍ものキャッシュをモナコにもたらして去っていった。

ここまで短期間でバカヨコの価値が上がったのは、決して偶然ではない。ここ1年間で彼はフランス王者になったモナコの中盤の要としてチームをけん引し、フランス代表でも欠かせない存在になりつつある。そして、今ではパトリック・ヴィエラと比較されるほどの選手になった。

そんなバカヨコはイングランドのスタンフォード・ブリッジで新シーズンからプレーする。彼はそこで、同じくリーグ・アン出身のエンゴロ・カンテと並んでプレーすることになるのだ。

バカヨコとしては、カーンの元スターであるカンテと同じように、チェルシーでも成功したいと思っているだろう。カンテは15−16シーズンにミラクル・レスターでチームをリーグ優勝に導き、チェルシーに加わった16−17シーズンもリーグを制覇した。彼はチェルシーでの活躍も評価され、FWA年間最優秀選手賞など、イングランドの賞を総なめにしている。

クロード・マケレレとしばしば比較されるように、カンテは守備面で秀でたボランチである。そして、バカヨコも主にディフェンス能力に優れたMFと評価されている選手だ。

■ヴィエラと比較されるその才能

では、バカヨコの獲得を、なぜチェルシーのアントニオ・コンテ監督は熱望したのか。それはバカヨコのタックル成功率が非常に高い点に関心を持ったのかもしれない。彼は昨シーズン、リーグ・アンで40回以上タックルを試みたMFの中で、最高の成功率を残している。

バカヨコはまた、リカバリーと一対一の成功率で、リーグ7位にランクされている。185センチの長身も武器となっており、ヘディングも苦にしない。これは169センチと小柄なカンテでは無理だった空中戦での強さをチェルシーにもたらすことになるだろう。

バカヨコの特徴を見るかぎり、退団のうわさが絶えないネマニャ・マティッチの代わりが務められそうだが、試合中はマティッチよりも多少攻撃的な役割をこなすかもしれない。

コンテ監督が、2016年夏の監督就任以来、カンテをもっと攻撃的な選手にしたがっていたことは明らかだ。だが、この点に関してはバカヨコを指導する必要はないだろう。バカヨコは、カンテに比べると攻撃面のタスクをこなせるMFで、必要とあれば前へ出ていくことをためらわないスタイルなのだから。

実際、アーセナルで一時代を築いたヴィエラほどではないにせよ、バカヨコはボールを扱う能力に優れ、昨シーズンはリーグ・アンで2度ネットを揺らしている。

バカヨコが決めた最も重要なゴールは、モナコがチャンピオンズリーグのベスト16でマンチェスター・シティと対戦した試合だろう。FKで放り込まれたボールを、ヘディングで合わせてゴールにねじ込んでいる。バカヨコを獲得したコンテは、あのようなシーンをもっとたくさん見たいと思っているに違いない。

■ロンドンで飛躍の時へ

バカヨコはまだ伸びしろのある選手だ。たとえば、コンテ監督はバカヨコに前へ走る量を増やせと望むかもしれないし、メンタル面でいくつかの懸念材料は残っている。かつてレンヌでバカヨコを指導したヤニック・メニュは、『ル・パリジャン』紙で次のように語っている。

「バカヨコはもっと自信を持ったほうがいい。彼のやり方は傲慢に見えるかもしれないし、うぬぼれた面があることも確かだ。だが、実際の彼はそんなことないんだよ」

「彼は面白くて、魅力的だ。穏やかで、ハメを外すこともない」

バカヨコは環境に慣れてからようやく本領を発揮できるタイプの選手のようだ。モナコではポジションを獲得するまで、入団から1年半近くかかった。モナコに適応してからは急成長を見せ、今では欧州の数多のビッグクラブが欲しがるボランチへと成長を遂げた。その彼はチェルシーに引き抜かれ、ロンドンでその才覚を期待されている。

まだ若さを見せるバカヨコは、国外移籍となったチェルシーで、いきなり主力として躍進できるのだろうか。成熟した選手になりつつあるが、そのメンタル面でのコントロールができるかどうかが、チェルシーの序盤戦の出来を大きく左右するかもしれない。

このハードルを乗り越えることができれば、バカヨコはチェルシーでも間違いなくスターになれるだろう。

かつての恩師メニュは「バカヨコのポテンシャルはまだまだこんなものじゃない。限界を知らないんだ」と語る。

同様に、能力を高く評価するコンテ監督は22歳のバカヨコに大きな期待を寄せている。今後何年にもわたりチェルシーの中盤の要を務めることが可能な俊英と契約した。ヴィエラが同じロンドンのアーセナルで残したインパクトを、バカヨコがチェルシーでも披露することができたとしたら、チェルシーのリーグ連覇、そしてチャンピオンズリーグ奪還は現実的な目標と言えるだろう。

バカヨコはチェルシーにさらなるビッグタイトルをもたらすことができる原動力になり得るのだ。

文:ロビン・ベアナー/Robin Bairner