コミュニティシールドの結果はそこまで重要なものではない。新しく採用された「ABBA」方式のペナルティーキックによってアーセナルが勝利を手にしたが、仮にチェルシーが試合に勝っていたとしてもクリアすべき課題はあっただろう。

このチームで良いのか? シーズン開幕を前にして、ディフェンディングチャンピオンとしてしっかり準備ができているのか? クオリティは備わっているのか? チーム内にポジションを争う競争はあるのか?

そういった疑問がアントニオ・コンテの頭にちらついたのではないだろうか。

ウェンブリーで先発した11人は、マンチェスター・ユナイテッドへと移籍したネマニャ・マティッチと退団を表明しているストライカー、ジエゴ・コスタ、そして負傷中のエデン・アザール抜きのメンバーであった。

優勝トロフィーの防衛に挑むシーズンの開幕を前にして、メンバー選考のオプション、そしてチーム内での競争不足により、チェルシー・サポーターたちの耳にはアラーム音が鳴り響いていることだろう。

ストライカーのターゲットとして獲得を切望していたロメル・ルカクを取り逃がして以降、コンテはフラストレーションに耐えなければならない夏を過ごしてきた。そして先週に行われた記者会見では、指揮官の完全な同意なしにマティッチが放出されたことを示唆している。彼曰く監督キャリア史上で最も難しくなるシーズンの開幕を目前に控え、彼のチームは昨シーズン優勝したそれとは遠くかけ離れた状態にある。

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アルバロ・モラタ、ティエムエ・バカヨコ、アントニオ・リュディガーの獲得はポジティブなものではあるが、チームが強化されたことにはなっていないのではないだろうか。補強ではなく、補完と言うに過ぎない。

さらにプレシーズンマッチとはいえ、この日のチェルシーのベンチの選手層の薄さにはショックを受ける。ベンチに座ったのはレンタル移籍から復帰したアンドレアス・クリステンセン、チャーリー・ムソンダ・ジュニア、ジェレミー・ボガ、新加入のモラタとリュディガー、そして35歳のセカンドキーパー、ウィリー・カバジェロ。そして、もう一つの枠をユースのカイル・スコットが埋めた。チェルシーにとって頼みの綱であるエデン・アザールが復帰するのは9月中旬になる。

そして今シーズンは、リーグ戦のためだけに1週間をフルに使うということもできないのだ。リーグが開幕してまもなくチャンピオンズリーグも始まり、コンテはCLにもベストメンバーを揃えて戦わなければならない。しかし、現段階では2つのメジャータイトルを狙うために十分な戦力を備えているとは言えない。

先週の記者会見で、コンテはネイマールのような選手に2億2200万ユーロを費やすことがチェルシーにできるかと問われたが、彼はその費用でより多くの選手の補強を匂わせるような回答をした。

アーセナルとのコミュニティシールドはコンテが好む、テンションが高く激しい試合であり、昨シーズン優勝したメンバーをベースにしたチームで戦った。しかし結果はコンテの思うようにはいかなかった。昨季の優勝にも貢献しているマティッチとコスタはチェルシーを離れ、その穴埋めの補強が急務であることが露呈された。アザールを欠いた状況では、ワールドクラスのアタッカーがチェルシーにはおらず、ペドロやウィリアンクラスの選手では彼の穴を完全に埋めることはできない。セスク・ファブレガスは中盤センターで底のポジションを務める選手ではなく、彼には、周りで汗をかくことのできる選手が必要だ。

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チェルシーは一昨シーズン、ジョゼ・モウリーニョのもとで優勝直後の罠に陥った。それと同じことが、昨シーズンはクラウディオ・ラニエリ率いるレスター・シティにも起こった。コンテはこのプレシーズンを通してずっと選手補強による戦力維持の必要性を説いてきたが、プレミアリーグ開幕のバーンリー戦まであと1週間を切った段階でチェルシーはチームとして仕上がっていないようだ。

モラタはチームにフィットしているとは言えず、コスタの穴埋めを果たすことはできなかった。後半から途中出場したものの、2つの好機をフイにし、ペナルティーキックも外した。彼にとってはイングランドでのキャリアのスタートは決して良いものとは言えないものとなった。

リュディガーは、相手チームがゴールセレブレーションをしている間に、審判に対して手を上げてオフサイドの判定を要求するのがイングランドでは格好悪いことだということを学ばなければならない。彼を含めたチェルシーの選手たちは、ペドロの一発退場直後のセットプレーでのセアド・コラシナツのゴールを防ぐためにできることがあったはずだ。
ティボー・クルトゥワのPK失敗は多くのメディアのヘッドラインを賑わすことになるかもしれないが、チェルシーにとって最も気がかりなのは彼らがディフェンディングチャンピオンにすら見えないことだ。またタイトル争いをするようなチームにも見えなかった。今シーズンが終わるまではまだまだ長い道のりではあるが、コンテにとってはこのプレシーズンに取り組んだ以上のことに、今すぐに取り組まなくてはならない。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton