イベリア半島の中央に位置し、フットボールとラグビー、そして女子バスケットボールが盛んな町。守護聖人はビルヘン・デ・ロス・アンヘレス。スペイン空軍にとって重要な軍事エリアであり、マドリーでも有数の工業地帯。そしてスペインで有数の教育レベルを誇るカルロス三世大学のキャンパスがある。

柴崎岳が挑戦の地に選んだヘタフェは、そんなところだ。

おそらく、日本の皆さんにとってあまり馴染みのない場所だろう。思えば2008年、バイエルン・ミュンヘンのフランツ・ベッケンバウアー会長はUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)でヘタフェとの対戦が決まった際、「どこにあるんだ?」と中傷めいた冗談を飛ばしたものだ。なお、ヘタフェは皮肉を吐いた会長のチームに敗れたものの、120分に渡る死闘を演じた。ヨーロッパがヘタフェを知った瞬間だったと言っていい。

あの時のベッケンバウアーのように、日本の人々はヘタフェを知らなかったかもしれない。しかし、それもこれで終わりだ。柴崎の加入は、日本人が「Getafe(ヘタフェ)」を覚える最高の機会になるだろう。

■ヘタフェはどんなクラブ?

ヘタフェはセグンダ・ディビシオンにおけるプレーオフで、柴崎の前所属クラブ、テネリフェを破って昇格を果たした。もっとも、2部でいくら認められようと、1部やマドリードという町ではあまり意味をなさない。

スペインの首都マドリードには、ヘタフェ以外にも1部に所属するクラブが3つある。歴史的なライバル関係にあるCDレガネス、2013−14シーズンのリーグ覇者アトレティコ・マドリー、そして昨年12月に行われたクラブ・ワールドカップで柴崎の前に立ちはだかったレアル・マドリーだ。特にレアルとアトレティコの両雄はスペインという枠を飛び越え、ヨーロッパの大会でも存在感を発揮し、世界中にファンを持っている。「あまり意味をなさない」と書いた理由付けは、これだけあれば十分だろう。

実際、ヘタフェはここ数年、厳しい戦いを強いられてきた。2009−10シーズン、6位と躍進したのを最後に、プリメーラ・ディビシオンでは二桁順位が続いた。2015−16シーズンに19位となって降格の淡き目に合うと、昨シーズンも自動昇格圏に入ることはできなかった。3位からプレーオフを勝ち抜いたとはいえ、1部で戦うことは決して容易ではない。

もっとも、ホームスタジアムのコリセウム・アルフォンソ・ペレスには、どんな結果が待っていようと毎試合のようにクラブを愛してやまない1万2000人のサポーターが詰めかける。

ヘタフェと柴崎は、彼らの期待に応えられるよう、精一杯の努力が求められるところだ。

■起用されるポジションやライバルは?

柴崎の加入に関する周囲の反応は今のところ良好だ。

チームメートの一人、フランシスコ・ポルティージョは先週の記者会見で柴崎に関して「チームの助けになるものはすべて歓迎さ。競争は成長の助けになる。僕らは両手を広げて彼を受け入れるよ」と話している。

ファンの間にも喜びは広がり、ヘタフェの公式ツイッターは2000以上も新たなフォロワーを獲得した。マドリードに住む日本人はヘタフェのユニフォームを着はじめている。

柴崎はこういったファンの期待に応えるために、ポジション争いを勝ち抜くことが求められる。昇格に貢献したポルティージョ、ダニ・パチェコ、アルバロ・ヒメネス、チュリといった面々はホセ・ボルダラス監督から厚い信頼を寄せられている。彼らを押しのけてポジションを確保することは、決して簡単ではないだろう。

起用されるポジションとしては、2列目になるはずだ。中央はもちろん、テネリフェでは左サイドでもプレーしていた。ボルダラスは選手にダイレクトなプレーを要求する監督であるため、日々の練習でインテンシティをアピールしておく必要がある。ボールの有無にかかわらず、どんな状況でも守備に貢献していかなければいけない。

果たして、柴崎は初のプリメーラ・ディビシオン所属クラブで“居場所”を確保できるのか? テネリフェで周囲を驚かせたように、マドリーでも人々の心をつかむことができるのか? 答えはもうしばらくの後に出るはずだ。

ヘタフェの街の中心部には、あらゆるヘタフェサポーターが成功を祝う噴水ラ・シベリナがある。ここでサポーターたちが「GAKU SHIBASAKI」の名前を叫ぶ日が訪れたとしたら、それは彼がスペインで認められたということを意味するに違いない。

文=フアンカル・ナバセラーダ/Juancar Navacerrada(マルカ紙) 協力=江間慎一郎