“チチャリート”ことハビエル・エルナンデスが、プレミアリーグに戻ってくる。先日、エルナンデスのウェスト・ハムへの移籍が発表された。デビュー戦は、かつて所属していたマンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアムで行われる一戦。プレミアリーグへ帰還の舞台としては絶好の場となるに違いない。

29歳のエルナンデスは、2015年をレンタル先のレアル・マドリーで過ごし、その後ドイツのレヴァークーゼンへと渡った。マンチェスター・Uでのエルナンデスは最後の数シーズン、デイビッド・モイーズ元監督とルイ・ファン・ハール元監督には冷遇されたものの、アレックス・ファーガソン元監督が指揮していた時代では、チームに欠かせない選手として活躍していた。

2010年、クラブ初のメキシコ人選手となったエルナンデスは最初のシーズンで才能を開花させ、リーグでの先発出場はたった15試合だったにもかかわらず、13ゴールを挙げて類まれな得点感覚をイングランドだけでなく全世界に知らしめた。次の2シーズンではそれぞれ18試合、9試合で先発メンバーに起用されたが、ファーガソン監督は主に途中出場から勝ち点3をもたらすオプションとしてエルナンデスを起用し、両シーズンとも2桁の10得点をマークしたのだ。

Javier Hernandez Manchester United vs Brugge Champions League 08182015

現在チームを率いているジョゼ・モウリーニョ監督は、自身の就任前にエルナンデスが退団していたことを嘆き、「昨シーズンに、彼のゴール前での冷静さと“殺し屋”としての才能があれば、たとえ控えの切り札としてでも、赤い悪魔のために容易に20ゴールを供給できただろう」と話していた。

そして4月にはこのようなことも記者たちに語っている。

「我々のチームには、本当の意味で“ゴールと相性がいい”と言えない選手は何人かいるよ。もちろん選手たちは皆、優秀でクリエイティブさ。でも本質的に相手チームにとどめを刺せる、“殺し屋” としての能力を持っているわけではない。簡単な例を挙げると、ホームでの試合で、我々が試合を支配し敵陣のペナルティーエリアでプレーしているとき、チチャリートならば20得点は容易にとれたはずだ。残り10分か20分の時点で投入されても、彼ならシーズンで20得点できる。彼は本能的にボールを呼び込み、ディフェンスをかわしてゴールすることができるんだ。まさに“殺し屋”と言える能力だね。ゴールキーパーにセーブされても、ボールを追ってゴールするだろう」

まさに絶賛。エルナンデスはモウリーニョをもうならせる能力を持つ。彼がウェスト・ハムの一員となれば、バックアッパーとしてではなく、ファーストチョイスのストライカーになることは明らかだ。ストライカーとしての主な競争相手はアンディ・キャロルとなるだろうが、エルナンデスはどこのチームに行っても生まれながらのフォワードであることを証明してきた。ウェスト・ハムでも“殺し屋”としての実力を見せつけることになるだろう。

GFX Chicharito 2016-17 stats

今シーズン、ユナイテッドにエルナンデスがいればロメル・ルカクとともに攻撃陣のローテーションに加わり、大きな戦力となっていただろう。モウリーニョはベルギー代表のルカクをエヴァートンから7500万ポンド(約108億円)で加えて、クラブ史上2番目に高額な選手としたが、複数の大会で競わせることのできる、定評のあるストライカーがもう一人欲しいところなのはファンと識者の共通認識だ。

今のところクラブにはアントニー・マルシャルとマーカス・ラッシュフォードがいるが、どちらもこれまでチームで大きな結果を残してきたとは言い難い。2015年に3600万ポンド(約52億円)で移籍してきたマルシャルは、最初のシーズンこそ31試合出場で11ゴールと華々しいデビューを飾ったが、その数字でさえもエルナンデスには及ばない。マルシャルは239分に1ゴールという高い確率でゴールを決めていたが、マンチェスター・U時代のエルナンデスの最も出来の悪かったシーズンでさえも209分に1ゴールというハイアベレージを記録している。

一方ラッシュフォードは、昨シーズンの攻撃のエース、ズラタン・イブラヒモビッチの強力な控え選手としてプレーしていた。その前のシーズンも11試合で5ゴールと好成績だったが、昨シーズンはより大きな役割を与えられ、後半からの途中出場ながら32試合に出場して同じく5ゴールをマークしている。それでもラッシュフォードのシュートの精度や得点率はユナイテッドにおけるエルナンデスのどのシーズンの記録よりも低いものであり、レヴァークーゼン在籍中の数字にも及ばない。

モウリーニョはいまだ、自身のチームにエルナンデスがいないことを大いに嘆いているはずだ。それに加え皮肉にも、開幕戦でそのエルナンデスがいるウェスト・ハムと戦わなければならないとはなんとも言えない悔しさがあるはずだ。この試合で彼が得点を決めることがあれば、なおさらであろう。

文=ロナン・マーフィー/Ronan Murphy