コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックス AI」では、過去のスウィングもAIによる3D解析技術でデータ化することができるという。今回は石川遼のスウィングをゴルフコーチ・北野達郎が分析した。

みなさんこんにちは。「SPORTS BOX AI 」・3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回は、ANAオープンでプレーオフの末に惜しくも2位に終わった石川 遼選手が、当時最年少で賞金王になった2009年と現在のスウィングを「スポーツボックスAI」の解析をもとに比較してみましょう。石川選手のスウィングにおいて、スポーツボックスで分かる過去と現在のスウィングの大きな違いは2点あります。それは【1】SWAY(左右の移動)、【2】MID HAND LIFT(手の高さ)です。

まずひとつは左右の移動量の違いです。これはスタンス幅の広さと関連があり、非常に広いスタンスを取っていた2009年は左右の移動が多く、スタンス幅がやや狭くなった現在は左右の移動が少なめです。各項目のデータからご説明しますと、2009年の石川選手はP3(両腕が地面と平行のポジション)で胸は3インチ(約7.6cm)、骨盤は2.6インチ(約6.6cm)ほど右へスウェイ(移動)が入っていました。それに対して現在の石川選手は胸・骨盤共に移動量は以前の半分程に収まっています。これは左右の体重移動を積極的に使ってダイナミックに振って飛距離を追及したデビュー当時の頃に比べると、スウィングのムダをなくして再現性を高めたスウィングに変わってきたと言えます。

ただ面白いのは以前も現在も共通してP4(トップの位置)での移動量は胸も骨盤も0に近い数値という事です。これはどちらもトップより前のタイミングで左への体重移動が始まっていて、腕とクラブより先に体は切り返しに入っている証拠と言えます。ちなみにこの動きはSPORTSBOX AI社のデータによると、ツアープレーヤー全員がP4より先に胸と骨盤が左に移動し始めているという検証結果が出ています。

次に「トップの手の高さ」を見ると、近年の石川選手はフラット&レイドオフのトップポジションを重視してスウィング改造に取り組んでいます。トップを比べると、MID HAND LIFT(手の高さ)が2009年は43.6インチ(約110cm)に対し、現在はちょうど40インチ(約101.6cm)と約8.4cm低くなっています。

石川選手と同じくフラット&レイドオフのトップに取り組んでいる渋野 日向子選手のトップの高さの変化を解析した際と比べると、手の高さの変化は約半分ほどですが、これは石川選手はもともとバックスウィングで手を身体の正面にキープするタイプで、背中側の深い位置に手が入るタイプではないため、両腕が長く背中側に手が深く入る渋野選手ほどトップの高さに変化が出る訳ではないと言えます。

また石川選手も渋野選手と同様にインパクトでの手の高さに変化があり、以前は手元がアドレス時より5.1インチ(約13cm)手元が浮いていましたが、今は2.3インチ(5.8m)と手元の浮きは以前の約半分以下まで少なくなりました。インパクトで手元はアドレスに近い位置にある方が再現性は高まりますので、デビュー当時より安定性を重視したスウィングに変わってきたと言えます。

またフィニッシュのポジションでも左への移動量には差があり、2009年は胸9インチ(約22.8cm)、骨盤15インチ(約38.1cm)と骨盤の左への移動が非常に多く、胸と骨盤のスウェイ差が6インチ(約15.24cm)あり、背中が反る逆C型フィニッシュでした。現在は胸6.9インチ(約17.5cm)、骨盤8.2インチ(約20.8cm)と共に左への移動はやや少なくなり、特に骨盤は以前の約半分ほどの移動量になりました。それに伴い胸と骨盤のスウェイ差は1.3インチ(約3.3cm)とほぼ差がなくなり、I字型のバランスが良いフィニッシュに変わりました。以前石川選手は腰を痛めた時期がありましたが、長年のスウィング改造とトレーニングによって、腰に負担の少ないフィニッシュに変わったと言えます。

いかがでしたか?若い選手も次々と頭角を表してきている国内男子ツアーですが、先日誕生日を迎えた石川選手もまだ31歳。ローリー・マキロイ、リッキー・ファウラーとともに「3R」と呼ばれた頃のように、まだまだ第一線で若手選手の兄貴分として活躍してくれる事を期待しています。