大手シャフトメーカーから毎年発売されるドライバー用シャフト。各メーカーがそれぞれの設計コンセプトでターゲットを明確にイメージした魅力的なシャフトが発売されている。今回はゴルフステージ成城のクラブナビゲーター・吉田朋広が今年前半のシャフトの売れ筋を調べ、人気のシャフト3モデルを実際にチェックして人気の理由を検証してみた!

一番人気はUSTマミヤ「The ATTAS V2」

「The ATTAS」の後継モデルの「The ATTAS V2」が人気です。

人気のスペックは50グラム台の5S。シャフト重量も56グラムでシャフトトルクも4.2でシャフト振動数は251cpmとSフレックスとしては扱いやすいスペックです。

メーカーが自ら「クセのないしなり感」と謳っていますが、クセのないしなりを誰にも体感できるように再現するのは非常に難しいと思います。しかしながら「The ATTAS」で確立した、安定したシャフト挙動をベースにしているだけあって、「クセのないしなりとインパクトでのアジャストのしやすさ」を多くのゴルファーが体感しやすいように作られています。メーカーが言うようにATTASのど真ん中シャフトとして幅広いゴルファーにマッチしやすいシャフトに仕上がっています。

あらためて振ってみても手元部分はしっかりしているのにトップから切り返す際も非常に間が取りやすく、切り返し以降のシャフト挙動も安定感がありインパクトでのタイミングが取りやすく感じ、適度に先端部分も動きも感じられます。

「The ATTAS V2」はプロやアスリートゴルファーだけでなくアマチュアのエンジョイゴルファーにも振りやすく、最近の慣性モーメントの高い大型ヘッドとのマッチングも考えられた当たり負けのないシャフトです。しっかりめの剛性設計ながら、先端部分は硬すぎず、インパクト時にアジャストしやすく、ボールをしっかりととらえることができます。

日本のゴルファーが使用するドライバーは海外ブランド占有率が70パーセント以上とも言われています。海外ブランドの大型ヘッドに装着しても相性が良く、ヘッドの持つパフォーマンスをさらに高めてくれるので人気になるのも当然の流れになるでしょう。シャフト選びに迷っているプレーヤーにも「ど真ん中の基準モデル」として支持されています。

またクセのないシャフト特性はFWへ装着してもマッチングが良いのでFWへの装着率も高く、一人で複数本購入するケースも販売に結び付いているようです。

ツアー基準の先中調子! フジクラ「VENTUS TR RED」

ツアーでも多くの愛用者がいるVENTUSシリーズの中で、日本では今年から発売された「VENTUS TR RED」が人気です。存在感のある鮮やかな赤がツアーでも目立っていますね。5S と6Sで70%を越える販売割合になっています。

「TR」シリーズの「TR」は「ツアーレイテッド」の略でツアープレーヤーに要求された規格のシャフトという意味です。

「VENTUS TR RED」はシリーズで最もボールのつかまりを求めた設計のシャフトですが、設計的にはしっかりと切り返せるプレーヤー向けになっています。

スペックの一番人気は5Sでシャフト重量が59.5グラムでシャフト振動数264cpm。バット径は15.45とVENTUSシリーズの中でも太めになっています。シャフト全体の剛性は高く、手元側の剛性は特に高く設計されています。中間部分から先の先端部分の動きが適度にあるためボールのつかまり感はありますが、他のVENTUS同様「VELOCOREテクノロジー」を採用していますのでインパクトで叩いてもボールが左に行き過ぎることはありません。

6Sは68グラムと重量もありシャフト振動数は269cpm、手元側が硬めのため、高めの数値が出ます。「VENTUS TR RED」はあくまでもツアー基準の先中調子シャフトですので、しっかりと切り返せるプレーヤーの方がシャフト本来のパフォーマンスを発揮できる設計のシャフトなのです。

しっかり切り返しができればトルク感も少なく、一体感のあるシャフトの挙動は重量があるにも関わらずスピード感が感じられます。

ツアー基準の先中調子らしくシャフト先端部分の動きは穏やかで、打点のバラつきも少ない。ツアープレーヤーが求めるボールのつかまりを自らコントロールしやすい設計のシャフトですので、アスリートゴルファーにとってつかまり過ぎることなく、ドローをコントロールしやすい先中調子のシャフトは非常に魅力的な存在だと思います。

ラクにスライスを防いでくれるような先中調子の要素はあまりもっていないシャフトではありますが、それが人気のポイントともいえます。

ツアー基準の「VENTUS」シリーズ唯一の先中調子シャフトで、叩いてもボールが左に行き過ぎることなくコントロールできる「ほどよいボールのつかまり感」が多くのアスリートゴルファーから支持されている理由でしょう。

女子プロにも人気 フジクラ「SPEEDER NX GR」

コースでも映えるグリーンカラーが目を引く「スピーダーNX GR」。ブルーカラーの「スピーダーNX」に次ぐ「NX」の新作が人気です。

40〜70グラム台までありますが、いちばん多く売れている重量帯は女子プロゴルファーの使用率も高い50グラム台。50Sを改めて打ってみて人気の理由を検証してみましょう。

「スピーダーNX GR」の手元部分はしっかりしていてハリがあります。中間部はやや軟らかく、先端部分はしっかりしているシャフトです。

シャフト振動数は253cpmですが、切り返し時、手元側に強めの負荷をかけても手元部分が捻れるような感じもなく、切り返しもスムーズでレスポンスが非常に良いシャフトですね。スピーダーらしい加速感のあるシャフト挙動は先端部分の動きもしっかりとあり、インパクトでボールを押し込んでいけるイメージが出しやすい。弾道も強く、ボールに推進力があり、吹き上がるイメージはありません。先端部分の剛性も高いので多少打点がブレたとしてもヘッドの挙動も不安定にならず、当たり負けもなし。トップからしっかりと切り返しができるゴルファーなら多少叩いていっても左へのミスも出にくく、気持ち良く振っていけるシャフトだと思います。

ブルーの「スピーダーNX」に比べて設計的にもフィーリング的にも1ランクハードに感じる「スピーダーNX GR」ですが、この適度に感じるしっかりさが「本格的プロ、アスリートモデルのシャフトだとハードすぎるけど、頼りないシャフトも嫌」といったプレーヤーの選択肢にピンポイントにマッチしていることも人気の理由でしょう。

今年売れている3つのシャフト、共通点としては女子プロゴルファーの使用者が多いモデルです。シャフト購入を検討しているゴルファーもいまは女子ツアーでのプロの活躍をきっかけとして選ぶケースも少なくはありません。

そのせいか、各メーカーも女子プロゴルファーが試合で使える設計で比較的しっかりしたシャフトが多く発売されています。

一般的なアマチュアゴルファーが選ぶ場合は、いままでと同じスペックだとハードに感じるシャフトもありますので、1ランク下のフレックスを選ぶとちょうど良い場合も多いです。シャフトを選ぶ際の参考にしてみて下さい。