「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。
アメリカと日本では売れているモノが違う?
GD 2024年のゴルフダイジェストアワード、ドライバー・オブ・ザ・イヤーは「タイトリスト GTシリーズ」に決定しました。このシリーズは(月刊ゴルフダイジェストの名物企画)「D-1グランプリ」で上位を独占するパフォーマンスの高さを発揮し、PGAツアーでも高く評価されています。他メーカーが「マックス」モデルを次々と投入するなかで、一線を画すクラブでした。
長谷部 ドライバー・オブ・ザ・イヤーは歴史のあるアワードなので、その時話題の商品が取ったりしています。受賞する理由の1つが飛距離。圧倒的な飛距離の優位性が過去は多かったかなとは思います。その中で今回、「GTシリーズ」が獲ったと聞いて、「なるほどその通りだろうな」っていうぐらい良い印象を持っています。
2年ぶりのモデルチェンジということもありますけど、大慣性モーメントが話題を先行していた今年の春から時間を経て、夏に発表、秋に発売という中で、ツアープロのスイッチをきちんと行って発売したというマーケティングもしっかりしていたなと思いますよね。
GD PGAツアーの影響力はあるかもしれないんですけど、アメリカと日本ではクラブの人気がちょっと違うということを聞きますが?
長谷部 そうですね。アメリカの市場データをたまに見ることがありますけど、日本市場の上位モデルが、アメリカでも売れているかというとそうではないという話を聞きます。 なので、日本におけるマーケティング戦略の成功が、日本の市場の順位に影響されていると思います。そういった活動と全く離れたところでモノづくりをしっかり行い、自分たちの路線を突き進んでいる「タイトリスト」のすごさを感じますね。
GD 「GTシリーズ」も含めて、アメリカのゴルファーはクラブ選びに保守的な感じがします。
長谷部 割と保守的だと思いますよ。 そんな中で、革新的な製品を「キャロウェイ」とか「テーラーメイド」は毎年新しいことを打ち出してきますけど、それが全てにおいて好意的に取られているのかというと、決してそうでもないケースもある。
「タイトリスト」にはボールのユーザーももちろん多いけど、アイアンしかり、ウェッジしかり、あらゆるカテゴリーにおいて、本格化志向のゴルファーにとっての信頼するブランドとしても揺るがないものになっているんだろうと思うと「タイトリスト=USA」なんて思ってしまうこともありますね。
GD トラディショナルとか、保守的をキーワードとすると、日本のメーカーで言えば、「ダンロップ」、「ミズノ」、「ブリヂストン」という古参メーカーは、共通するものがあるように思います。
何か守っている部分を感じるんですけども、でも日本のゴルファーはそこには目を向けず、革新的なものに今は手を出しているような気がします。
長谷部 一般的なアマチュアゴルファーが情報を入手する方法や場所が、ここ何年かで色々変わってきていると思うので、この先もそれが続くのかどうかは一概には言えないですけど、その外ブラがウケた理由のひとつには大型量販店の影響、効果というのが大きいと思うんですよね。
キャンペーンを行い店頭に相当な物量を投入して、お客様が自由に選べるような環境を整えたというのが大型量販店の役割ですし、それに伴って手に取りやすい価格やいろんなポイント制を使ってお求めやすい価格設定にもチャレンジしたっていうところが、普及の第一歩だったと思います。
GD この現象は、いつから起こっていたんですかね?
長谷部 15〜16年前くらいになるんでしょうか。徐々に「キャロウェイ」が『レガシー』、「テーラーメイド」が『グローレ』など日本市場攻略を意識し始めた頃からだと思います。先にファン作ってしまってから大手量販店とともにシェアを広げていけば、近年は為替や原価高騰を背景にして市場価格もリードしていったということだと思うんですよね。
結局日本のメーカーより高い価格設定になっていると。ちょっと普通に考えたら、量産性がよくて、たくさん作っている外ブラのほうがコストは安いんじゃない?って思うんですけど、それにも増して魅力的なマーケティングを展開しているということだと思います。
GD それに乗らなかったのが「タイトリスト」のモノづくり?
長谷部 あくまでもその広告宣伝よりは、地道なプロの使用と実績を積み重ねてきて、その時々でクラブの場合は評価がわかれていたと思うんですよね。前の『TSR』が部分的にはいろんな評価があった中で、それを改良して『GT』に仕上げてきているところなので、そういった意味では、2年に1回のモデルチェンジを守りつつ、きちんとしたモノづくりをされている証拠だと思うんですよね。
大ヒットモデル。2011年「910D」の再来になる可能性も。
GD 「タイトリスト」のドライバーでいうと、「9シリーズ」がPGAツアープロの間では使用されてきました。一般のアマチュアに注目されたのは、2011年の『910D』で、ここで大きく潮目が変わりました。その後も順調に続いてはいたましたが、他の外ブラの勢いが強くなったことでタイトリスト人気がちょっと落ち込んだとも言えます。
今回の「GTシリーズ」は『910D』を彷彿させるぐらいの勢いを感じるのですが、アマチュアゴルファーが革新的なクラブに見切りをつけて、やっぱりトラディショナルな、保守的なクラブに目を向け始めたのでしょうか?
長谷部 「タイトリスト」とは対極なんですけど、独自性の強い「ピン」も今、人気ですよね。お客様を見て他社を意識して右往左往するブランドよりは、「自分たちはこう考える」っていう主張を貫いているほうが、結果的には消費者から見た時の安心感はあるでしょう。「タイトリスト」が貫いている姿勢が支持されているというブランディングのお手本のような気がしますけどね。
GD 「ピン」を中心に「キャロウェイ」、「テーラーメイド」は革新争いを繰り広げている。 その一方で「タイトリスト」は保守を貫く。
じゃあ、その時日本のメーカーはどこに向かったかというと、タイトリスト的な考え方を持っていながらも、「キャロウェイ」、「テーラーメイド」、「ピン」に戦いを挑んでいて、なんとなくどこ向いているの? ってことになっている。本来なら、タイトリストグループに入っていたほうが、日本のメーカーにはよかったんじゃないかって思えてきます。
長谷部 そこまで厳しいことはなかなか言えないけど、オリジナルシャフトの開発をやめてしまった日本メーカーが多い点は本当に良くないと思っていて、「このヘッドにはこういうシャフトが日本のゴルファーには一番いいんだよ」というのを日本のメーカーだからやらなきゃいけないんだと思うんですよ。
市場の意見としてシャフトメーカーの人気ブランドとのコラボを採用すれば人気だし、そっちが売れるからそうしているって安易に採用しているように見えるのが一番良くないと思っていて、せめて日本のメーカーは日本人に合うクラブを出してくれっていうのは正直思います。
GD 例えば「本間ゴルフ」。本間の歩みを見れば、日本の人に向けたクラブ作りをしてきたメーカーだったと思うんですよ。それがやっぱり「マックス」という名前をつけてきた。「マックス」をつけることで販売量の増加を狙っているんだと想像しますが、元々のモノづくりのスピリットみたいなものからちょっとずれちゃうのかなと感じます。
本間だけではなく、「ミズノ」も、「ダンロップ」も。ダンロップは今回も「マックス」を作ってきました。「タイトリスト」はあえて「マックス」を言わないで、独自の世界観で勝負しているところにこだわりを気がします。
長谷部 「マックス」という曖昧な表現に乗っかってしまった結果、ブルーオーシャンではないレッドオーシャンの領域に自ら首を突っ込み、自分で自分の首を絞めているような宣伝文句になっているような気がします。結局、「マックスじゃないとおすすめしませんよ」ってお店の方に脅されているのかなって思ってしまいます。
マックスカテゴリーでひとくくりにして推奨されるのかと言ったら、試打クラブで推奨されるのは人気上位3本なので、絶対に入るわけじゃないです。そこに個性を出さなかったら、多分選ばれようがなくて埋もれていく、レッドオーシャンで沈んでいくってことだと思うので、「数多く売りたいからマックスにしました」というのは理由になっていないと思います。
ビジネスとかマーケティングを考えた時には、「自分たちがどういうポジションで、どれぐらいの数量だったら採算が取れるか、最低限ここを目指しましょう」みたいな精緻なビジネスプランがあって初めて戦略を練るべきなんですけど、もういきなり売れていると思われる市場に自ら飛び込んでいって厳しい戦いをしているようには見えますよね。
GD 本来、ゴルフクラブって性能勝負だったはず。 でも冷静に考えるとフィッティングは一見、性能勝負をしているように見えるんだけど、ショップ店員のフィルターが入ってくるじゃないですか。その時点で純粋な性能勝負というところが少し崩れているのかなと思います。
長谷部 やっぱりお買い得、売りたい商品、そういったところをおすすめポイントとして必ず出てしまうので、そういった中で、「今ミニドライバーも流行っていますよね」って言われることに端を発していると思うんですけど、「進化って何よ?」ということと、「自分に合うクラブって何?」っていうところがきちんと切り分けて話されていないと、「世の中のトレンドは大型化しているんだね、でも自分に合うのは小さいヘッドのドライバーなんだな」っていうのがどこかで結論が出ない。
それに伴うモノづくりというものがメーカーがちゃんと見極められてないと、ちょっとミニドライバーは市場性がまだ小さいからやめとこうと思う企業が多いのか、ミニドライバーをやりすぎても今までのロジックから外れてしまうからやらないでおこうなのかわからないんですけど、流行とブランドの整合性あたりについて、メーカーも今一度原点に立ち返って自らのポジショニングを見極めるタイミングが来ているんじゃないかなって気はしますけどね。
「ゆり戻し」が2025年からのキーワード?
GD このマックスブームというのはまだ続きますか? 少なくとも来年、再来年あたりまではメーカーもそこに拠り所を求めるだろうと思うんですけど、数年経って振り返ってみたら、2024年の「タイトリスト GTがターニングポイントだったんだよね」っていうこともあり得るような気がします。
長谷部 46インチだ、47インチだ、長尺が進んでヘッドの大型が進んでいた時代から、ルールももちろんあるんですけど、結果的にはルールに縛られなくても振りやすさ、振り心地から考えた適正の長さに戻ってきていることを考えれば、「10K」に行きすぎた慣性モーメントも
ゆり戻しが起こって一定のところで落ち着いて、「適正重視」が語られるようになる。
ただ、適正重視を語るときに、今までイノベイティブな話をしていたメーカーはちょっと言いづらいと思うんですね。素材を変えたり、構造を変えたりしないから。だから何にも言わず、「いいもの出来たのでどうぞ」って言っているシンプルな「タイトリスト」が一番強かったりするなっていう気がしますね。
GD 「ゆり戻し」は今後のキーワードになってくると思うのですけど、行き過ぎから戻ってくることによって、実はそこが正解だったということも考えられます。「タイトリスト」はまだ行き過ぎていない。正解を目指して一歩一歩探っているような。だから、進化自体はすごく小さく見えるように思います。
長谷部 『GT2』の重心位置について触れると、『SIM2 MAX』に近いと思った部分があるんですけど、『SIM2 MAX』の重心がある時点でのスタンダードになっていたため、未だに中古市場でも高値で取引されるぐらい人気が続いています。
『GT2』が『SIM2 MAX』に変わるスタンダードになるくらいのポテンシャルを持っているんだとすれば、微細な変化で積み上げてきたタイトリストの価値になりますよね。
GD 「SIM2シリーズ」は今でも練習場とかでも打っている人をよく見かけます。
長谷部 まだまだユーザーが多いことを考えると、SIM2ユーザーが『GT』の良さに気づいた時に、ヘッド重量や価格とか普及にはいろいろ問題があるから、全員が全員『GT』にシフトするというわけにはいかないんですけど、ウェイト調整をすることによって軽量化もできるはずなので、SIM2ユーザーが『GT2』にスイッチしたら、しばらく『GT2』の人気は続くかもしれないですね。
GD そうすると、大慣性モーメント派とSIM2ユーザーを含めたスタンダード派の2極化が起こるかもしれませんね。『GT2』はロフトとかシャフトによって使えるユーザー層が範囲広そうなので、そこに気づいた人が今後スイッチを始めるかも。
長谷部 まだ「タイトリスト」のコアユーザー、その周辺で「タイトリスト」に興味を持っている人たちにしか広がっていないかもしれません。値段の問題もあるけれども、まだ『GT2』を手にされてない人も多いでしょう。これがじわじわと広がって、「GT2はいいな」って評判や口コミで広まれば、このクラブはもう1段上のレベルに上がると期待できますね。
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