テーラーメイドには『Pシリーズアイアン』がある。『P770』、『P790』はブレードアイアンを彷彿とさせる中空アイアンとしてアスリートゴルファーが注目する。そして、『Qi10 ドライバー』と同時に発売されたのが、『Qi アイアン』になる。『Qi10 ドライバー』を使うテーラーメイドファンは、『Pシリーズ』か、『Qi アイアン』か、迷うこともあるだろう。今回は、『Pシリーズ』でも飛び系の『P790』と『Qi アイアン』の違いをクラブ設計家の松尾好員氏とともに検証してみた。

同じ飛び系でも『P790』はやっぱりアスリートモデル

アイアンを比較するとき最初にチェックしたいのがロフト角になる。『P790』の7番は30.5度、PWは45度。『Qi アイアン』は7番28度、PW43度のため、同じテーラーメイドの飛び系でも『Qi アイアン』のほうがより飛び系の設計となっていることがわかる。

アドレス時の顔を比べると、『P790』は精悍な雰囲気がありシャープさを感じる。『Qi アイアン』は全体的に丸みがあり、トップブレードの厚さもある。ソール幅も『P790』よりも『Qi アイアン』のほうが広くなっているため、同じ中空構造の飛び系ではあるが、『Qi アイアン』のほうが見た目の形状からしても、やさしさを感じる。

ヘッドデータを比べてみると、『P790』と『Qi アイアン』の違いがより鮮明に見えてきた。「リアルロフト、重心深度、重心距離を比べると性能の違いがわかる」と松尾氏は言う。

リアルロフト(7番)は、『P790』が30.5度、『Qi アイアン』が28.2度。重心深度は『P790』が4.3ミリ、『Qi アイアン』が5.1ミリ。重心距離は『P790』が40.4ミリ、『Qi アイアン』が42.9ミリとなっている。

ロフトは飛距離に、重心深度と重心距離は芯を外したミスヒット時のヘッドのブレに対する強さに関係するため、『Qi アイアン』のほうが、飛距離性能だけでなくやさしさも兼ね備えていることがわかる。

しかし、アイアンは「やさしくて飛べばいい」というものではない。構えやすさ、操作性、スウィングの精度、高い球が打てる、打てないなどの要素が加味される。

基本的には、ロフトが立っていれば飛距離は稼げる。とはいえ、飛距離がほしいのに球を抑える技術がなければ、ストロングロフトのアイアンを使用しても、クラブの特性を生かした飛距離を得ることはできない。また、打球を上げることを苦手としたら、球を止めるだけの高さが得られなくなる。

重心距離と重心深度でいえば大きくなるほどヘッドが返りづらくなる。その分、操作性という意味では性能は劣るが、オートマチックに打球を真っすぐ飛ばしたい人には利点となる。

『Qi アイアン』は『P790』よりも飛距離性能が高く、『P790』 は『Qi アイアン』よりも操作性が高い。ミスヒットによる飛距離ロスの度合いを比べれば『Qi アイアン』が勝る性能を持っていることがヘッドデータから読み取ることができる。

『P790』と『Qi アイアン』、どっちにしようかと迷ったら、やさしさ重視なら『Qi アイアン』。飛距離も操作性もある程度ほしいと思ったら『P790』という選択になるだろう。飛距離に関してはリアルロフトが2.3度立っている『Qi アイアン』の方が5ヤードほど飛ぶ可能性を持っている。

ストロングロフトに見えない工夫が施されている

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフトは「Diamana BLUE TM60」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

クラブ長さは37.0インチと「標準」ですが、クラブ重量は373.3グラムとカーボンシャフトが装着されていることで「軽い」です。スウィングウェイトがC8.8と「非常に小さい」ので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントは260万g・㎠と「小さい」です。

計測数値のみで推察するとカーボンシャフト仕様ではドライバーのヘッドスピードが38㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。

同じ飛び系アイアンに属しながらも、『Qi アイアン』は「やさしく飛ばせる」ことを特徴とし、『P790 アイアン』は(ヘッドスピードがある程度速く、芯に当てられる技術があるという前提で)、操作性も期待できるアイアンとなっています。

『Qi アイアン』はヘッド形状から見ても、『Pシリーズ』よりも長いフェースと大きなヘッド、幅広のソールと厚いトップラインが特徴です。

実際に試打したところ大きいヘッドサイズのおかげで「ティーアップしたショットでは打ちやすそうな安心感」があります。フェースプログレッションが3.0ミリと「少しグースネック」になっていることで、球がつかまる雰囲気があり、ヘッドからやさしさがにじみ出ています。
試打シャフトのカーボンは軟らかめでした。クラブ全体の慣性モーメントが小さくて振りやすいので球も上がりやすく、ヘッドスピードが37㎧くらいのゴルファーでも十分扱えそうで、「シニアゴルファーにもちょうどいい設定」になっています。

ロフト角が28.2度と超ストロングロフトのアイアンですが、他のモデルと比べてフェースのトウ側が高いので、アドレスではロフト角が付いているように見え、「球が上がりやすそう」なイメージが出ています。

ソール面には綺麗な丸みがあり、ダウンブローでスウィングしたときでもソールの抜けが良かったです。フェース面は軟鉄よりも硬い素材が使われているので打感は硬く、インパクト音が高く、弾き感も強かったです。フェース面のスイートスポットは、フェース中央よりも少しトウ寄りになっています。

基本的にフェースが長いので、重心距離も非常に長くなっています。そのため、ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントが非常に大きくなり、ダウンスウィングでのヘッドの返りが非常に遅くなっています。そのため、やや右に行きやすい感じがしますが、反面つかまりすぎることはないので、打ちやすさを感じるゴルファーにはいいでしょう。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月16日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より