2020年はアフリカ系アメリカ人に対する警官の暴力に端を発した人種差別抗議運動(ブラック・ライブズ・マター/BLM)が全米に吹き荒れた年でもあった。一見ゴルフ界とは関係ないできごとのようにだがじつは差別や偏見はゴルフ界も無縁ではないようだ。

中断されていたツアーが再開したとき最初の試合となったチャールズシュワッブチャレンジの開幕前、ツアーで数えるほどしかいないアフリカ系アメリカ人のハロルド・バーナー3世はツイッターにこう記した。

「この世界は美しいことと愛に満ちています。(警官による黒人男性の射殺された)悲しい事件が起きたこと肌の色に関係なく人間として心からお悔やみ申し上げます。我々は変わらなければなりません。安全に過ごしてください。皆を愛しています」

このツイートに心を揺さぶられた人は多かった。しかもチャールズシュワッブチャレンジで彼が優勝争いすると応援の声がさらに膨らんだ。

バーナー3世が「PGAツアーに人種差別主義者はほとんどいないと思う」と語る一方で、ロングドライビングコンテストのチャンピオンで黒人のモーリス・アレンは「白人のスポーツで黒人であること」と題した手紙を米ゴルフダイジェストに寄せ差別の実態を訴えた。

彼が経験した差別体験は我々の想像を絶するものだ。「大会に出場するとヘイトメールが届きます。脅迫的な内容も。あるときはライバルの関係者に“アレンは犯罪者だ。逮捕歴がある”という事実ではない噂を流されました。さすがに頭にきて“マグショット(逮捕後に撮影される顔写真)があるなら出してみろ”とSNSで反論すると、驚いたことにスポンサーから自分にクレームがきたのです。“なんでそんな投稿をするのだ?”と」。

タイガーという史上最強のロールモデルがいながらゴルフ界は依然として白人社会なのか? そう思わされるエピソードだが、ここにきてゴルフ界にも変化が訪れているようだ。

ミケルソンとNBAのスーパースター、チャールズ・バークレーがコンビを組んで話題になったザ・マッチ(20年11月開催)では2人が獲得したおよそ5億7千万円が、黒人が多く通う大学やアンダーニグロカレッジファンデーションなどに寄贈された。

また2021年は4月開催の通常スケジュールに戻るマスターズではアフリカ系アメリカ人として75年にはじめてマスターズ出場を果たしたリー・エルダーがジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤーとともに名誉スターターを務めることが決まった。

アメリカ南部のオーガスタは黒人差別がきつい土地柄で当時エルダーには嫌がらせや脅迫が相次いだが堂々と胸を張ってプレー。「我々に道を開いてくれた恩人。彼がいなかったらいまの自分もいない」とタイガーが敬愛する人物でもある。

「こういう時代だからこそエルダーを名誉スターターに加えるべき。86歳だが生前のアーノルド・パーマーよりも球を飛ばす」と2020年11月のマスターズ前にも主張していたプレーヤーの思いが届いたようだ。