世界初のメタルウッドを開発し、常に革新的なドライバーを世に送り出してきたテーラーメイド。2年前にはカーボンフェースを使った“カーボンウッド”「ステルス」が登場。そして今年、飛んで曲がらない極大慣性モーメントドライバーをリリース。「Qi10 MAX」誕生の秘密に迫った!

ルールを破らず限界を超えろ

「究極のドライバーとは『飛んで』『曲がらない』クラブ。しかし、クラブ開発にはルールがあって、大きさや反発係数など上限が決められています。そこを目指して開発していきますが、すでに上限に達している部分はそれ以上にはできない。それならば違う方法で『より遠くへ』『より真っすぐ』を目指さなければなりません。それがひとつの形になったのが2年前の『ステルス』で採用されたカーボンフェース。カーボンでできたフェースは反発係数やCT値といった飛びの基準が、これまでのメタルフェースとは異なるので、ルール内に収まりながら、高初速、高打ち出し、低スピンという『飛びの3要素』を極めることができたんです」とはテーラーメイドで長年クラブ開発に携わってきた柴崎高賜氏。

では、なぜチタンの半分の重さしかないのに、軽いカーボンフェースは飛ぶのか?

たわまないフェースが生む高初速

「それはエネルギーの伝達効率にあります。止まっているボールに対して、約200グラムのヘッドが加速してインパクトを迎えますが、カーボンフェースは約20グラムと軽く、残り9割の重量がヘッドの後方にあります。これが加速していくと後ろから押す力が増大していき、インパクトでは軽いフェースにエネルギーが凝縮され、強烈な反発力となってボールに伝わり、圧倒的なボール初速を生むんです」(柴崎氏)

しかし、「ステルス」には、確かに飛ぶが、球がつかまらない、難しいという声もあった。

「カーボンフェースは初速を生み出す、車でいえばエンジンのようなもの。いくらエンジンがよくてもボディがエンジンを生かし切れていなかったかもしれません。また、実はカーボンフェースは金属のフェースと違ってたわまないんです。たわまないから曲がらない。曲がらないから、ボールが真っすぐ右に出て戻ってこないため、『ステルス』は難しいという一部ユーザーの声になってしまいました。プロや上級者はミート率が高くスクエアインパクトができるから、クラブやボールの性能を十分に引き出せますが、多くのアマチュアはそうではない。そこで次のゴールは『誰が打っても飛んで曲がらない』クラブになりました」(柴崎氏)

慣性モーメント1万(10K)g・㎠の実現

まずはカーボンの使用量を増やして軽量化。クラウン部のカーボン面積を広げた「インフィニティカーボンクラウン」の採用で、クラウン部のカーボン占有率は「ステルス2」の79%より2割以上増え97%に増大。これによりフェースを支えるチタンフレームは71gとテーラーメイド史上最軽量、ヘッド重量のわずか35%以下にまで減った。

次に新たなヘッド形状の採用。ヘッド後方を従来よりも8㎜ 後ろに延ばしてルール上限いっぱいの12.7㎝ に。投影面積は「ステルス2」より約10%大きくなっている。

そして軽量化で生まれた余剰重量を慣性モーメントとボールスピードのために最適配分。その結果、ドライバー史上類を見ない慣性モーメント1万g・㎠を実現した。

「慣性モーメントが大きくなると振りにくいと言われてますが、大慣性モーメントが飛ばない、つかまらないというのはメタルウッドの話。カーボンウッドは設計の自由度があるので当てはまりません。確かにメタルウッドでは大慣性モーメントにすると、どうしても重心距離が長くなるのでフェースが返りにくくなる。しかし、カーボンウッドなら重心は深いまま重心距離を短くすることができます。その結果、球が真っすぐ出て行って、ちょっとつかまって戻る球になる。そして多少芯を外しても『ツイストフェース』が助けてくれます。『ツイストフェース』は2018年の『M3』『M4』から採用されていますが、カーボンフェースはレイヤー(層)の積み重ね。曲げると層と層の間にボイド(気泡)が入りやすく高度な技術が求められました」(柴崎氏)

24年に及ぶカーボン研究の集大成

「確かに『Qi10』はスピードと寛容性を併せ持った、今までにない新しいドライバーですが、そこに盛り込まれているのは『ツイストフェース』のように、歴代のドライバーで培われたテクノロジーばかり。カーボンの研究は2000年に始まりましたが、翌01年の『R300』シリーズでは個々のプレーヤーそれぞれに合うようにと、ヘッドサイズ、形状、重量配分などが異なる3モデルを現在と同じようにラインナップしています。14年の『ジェットスピード』でドライバーに初搭載された貫通型のソールの溝、『スピードポケット』は今作でも搭載。これにより下めに当たるとスピンが増えるところ、それを抑えて飛距離を安定させてくれます」(柴崎氏)

メタルウッドの先駆者がメタルウッドを捨てた

「19年の『M5』『M6』では反発係数のルール上限を超えたヘッド内部にレジン素材を注入することでルール上限いっぱいにチューニングする『スピードインジェクション』を初採用しました。この技術が生まれた背景には工業製品の製造誤差があります。金属には伸び縮みがあり、どうしてもヘッドに個体差が生じてしまう。本来はあってはならないことですが、試打したヘッドが〝当たり〞でも、購入してみたら〝外れ〞だったなんてことも実際に起きていました。それをなくして、すべてのゴルファーに〝当たり〞のヘッドを提供するために『スピードインジェクション』が必要だったのですが、カーボンフェースは一度作ると形も重量もまったく同じものがいくつでも量産できる。つまりフェースのスピードも管理できるのです。

誤差がないだけでなく劣化も少ないので、ツイストフェースの形状もずっと保てます。『スピードインジェクション』がなくても、すべてのゴルファーに最高のフェースを届けられるようになったんです。これまでのすべての積み重ねが『Qi10』につながっているんです」(柴崎氏)

振らないと意味がない

「ただし、『Qi10 MAX』は振らないと意味がないんです。曲がらないから思い切って振ってほしい。置きにいこうと手加減すると、打点がずれてトウ下とかに当たってしまうんです。とにかく振れば慣性モーメントでブレーキがかからずに振り切れます。振り急いだらトウ上、振り遅れたらヒール下に当たりがちですが、そんなときこそ『ツイストフェース』が助けてくれるから安心して振っていけるんです」(柴崎氏)

「Qi10 MAX」を超えられるか!?

究極のドライバーに限りなく近づいたように思える「Qi10 MAX」だが、一体この先はどうなっていくのだろうか?

「今後もテーラーメイドのクラブはすべてカーボンフェースのカーボンウッドになりますが、カーボンの占有率が増えて、もっとやさしく飛ばせるクラブになるでしょう。もし来年、新モデルが発表されなかったら、『Qi10 MAX』を超える物ができなかったと思ってください」(柴崎氏)

テーラーメイドのドライバー変遷(2001〜)

2001 R300
「R300 Ti」「R320 Ti」「R360Ti」とプレーヤーごとの打ち出しを最適化すべくヘッド体積、形状、重さの異なる3モデルをラインナップ

2002 R500
逆円錐形フェース「インバーテッド・コーン・テクノロジー(ICT)」初採用。スイートスポットが広がり、オフセンターヒットにも強い

2009 R9
弾道調整機能「フライトコントロールテクノロジー(FCT)」初搭載。ロフト、フェースアングル、ライ角を変えられるロフトスリーブを導入

2014 JETSPEED
貫通型のソールの溝「スピードポケット」をドライバー初搭載。フェース下部でのインパクトでもバックスピンを抑制し飛距離が安定する

2018 M3/M4
トウ上をオープンかつロフトを寝かせ、またヒール下はややクローズかつロフトを立たせた「ツイストフェース」で打点のバラつきを低減

2020 SIM
ソール後方の「イナーシャジェネレーター」をトウ側に傾けたアシンメトリーデザインにすることで、空気抵抗を低減してヘッドスピードアップ

2022 ステルス
「60層カーボンフェース」の採用で軽量化。フェース面積を拡大し、広い範囲でボール初速が高まり、優れた飛距離性能を実現