一昨年の全米女子アマを制し、23年12月のプロテストで合格した馬場咲希プロを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す。今回は「ミスを続けないこと」がテーマだ。

ミスショットしたときに、自分で考えるクセをつけさせた

O編 今回は、昨年11 月のプロテストに合格した、髙木優奈さんの話を聞きたいんだ。

坂詰 彼女を見始めたのは昨年からです。彼女の場合、それまでにプロテストに5回落ちていたので、かなり自信をなくしていたんですよ。そんなとき、ボクが昔から仲良くしているプロキャディに、「わきゅうさんとこに行ってみれば?」と言われたらしくて。それで話を聞いたのがきっかけですね。

O編 面倒くさがりのわきゅうが、新しい選手を教え始めるなんて、珍しいね。

坂詰 いやぁ、そのプロキャディが、「きっかけをつかめば、あの子はどうにかなる」って言うんですよ。その理由を聞いたら、「あの子は、ゴルフに対して本当に真面目だから、応援したいんだ」って。そこまで言うならボクも応援するよ、ってことになったんです。

O編 どんな指導をしたの?

坂詰 髙木さんの場合、ステップ・アップ・ツアーで優勝した19 年にもプロテストに落ちているので、これ以上、自分ではどうしたらいいかわからないという状態だったんです。で、どうせやるなら、イチからとことんやってくれって言うわけです。

でも、本当にイチから直したりしたら、プロテストに間に合いませんからね。まずは、じっくり話を聞いて、問題点を明確にして、プロテストまでに何をやるか計画を立てたんです。

O編 具体的には、どんなところを直したの?

坂詰 技術的なことよりも、考え方を指導することが多かったですね。

O編 考え方?

坂詰 たとえば、プッシュスライスのミスが出て、「今のは何で右に行ったんですか?」と聞かれたとしますよね。そんなとき、ボクはすぐに答えを言いません。「なんでだと思う?」って聞き返すわけです。それはなぜかと言うと、人から簡単に与えられた答えは、自分のものにならないからです。
そのときはわかったつもりになっていても、本当の意味でわかっていないから、また同じミスをしてしまうんですよ。

O編 だから、自分で考えるクセをつけていったってことか。

坂詰 ええ。ミスには必ず原因があります。自分のミスの原因を知って、普段からそれを修正する練習をしておけば、コースの中でミスが出たとしても、自分で修正できるのだから、それほど怖くないわけです。選手は一発のミスを嫌がりますが、ミスは誰でもする。それを嫌がっても仕方ないわけです。大事なのは、そのミスの正体を知って、同じミスを続けないことなんですよ。

O編 自分のミスの原因やその直し方がわかっていないから、迷ってしまうということだね。

坂詰 そういうことです。たとえば、コースに出たら、体が止まってフェースがかぶって左に飛ぶとか、ダウンスウィングで体が伸び上がって右に押し出してしまうとか。そういう自分のクセをちゃんと把握して、それを修正できるように練習しておく。正直、練習というのはそのためにあると思うんです。

O編 真っすぐ遠くへ飛ばそうとするのでなく、コースで出るミスを修正したり、そのミスが出たときの対処法を身につけたりするのが練習だってことだよね。

坂詰 そういうことです。まぁ、髙木さんの場合は、プロテストでの失敗がトラウマになっていたので、テストが近づくとどうしても焦ってくる。そこの焦りを取り除くことにも気を付けました。

O編 たとえば?

坂詰 体の使い方を変えると、一時的に当たらなくなったりしますよね。すると「全然当たらない」と焦る。そんなときは、「いいじゃん、動きが変わってきている証拠なんだから」と安心させる。ちょっと球がつかまらなくて「真っすぐ行かない」と不安になるときは、「いいじゃん、(自然に出ている)その球でいけば」ってアドバイスする感じです。

O編 普段なら気にならないことが、焦るとものすごく気になったりするよね。

坂詰 ええ。ステップに勝っている子なので、ゴルフが下手なわけじゃないんです。でも、焦ると、普段できていることもできなくなるし、ムダなミスが増えてしまうわけです。だから、焦らず、自分を客観的に見て、できることだけをやる。そういう考え方をするようにって。

O編 それで6回目にしてプロテストに合格したと。

坂詰 ま、元々その力があったということです。髙木さんも、「私、今までちっぽけなことばかり考えてたんだなぁって思いました」と言っていたので、かなり気付くところはあったんじゃないでしょうか。

O編 今後の髙木さんの活躍に期待したいね。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月27日&3月5日合併号「ひょっこり わきゅう。第54回」より