「資生堂レディスオープン」の最終日を逃げ切り優勝で今季初優勝(通算3勝目)を飾った青木瀬令奈。飛ばなくても勝てる! を証明した彼女のスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

青木瀬令奈選手がとうとう今季初勝利を挙げました。5月のサロンパスカップで2位、ブリヂストンレディスオープンで3位タイと最終日にまくって上位フィニッシュ、と優勝には一歩届かずにいました。それでも自分のプレースタイルを貫き、勝てると信じ戦い続け2年連続で勝利を手繰り寄せました。

飛距離ではなく正確性と安定性、3Wから7UTまでセットした7本のウッド類の正確性、高い精度のアプローチとパットという武器を磨いたことで物理的に届かないホールが数ホールあっても、スコアを伸ばし合う試合でも、上位で戦えることを証明しました。では、そのスウィングをじっくりと見てみましょう。

オーソドックスなスクェアグリップで握り、テークバックでは体を縦にねじるように手元を高くアップライトに上げていきます。腰の回転量も多いのですが右ひざの位置や向きを不動にすることで右に流れて体がブレることを抑えています(画像A)。

トップからの切り返しでは独特の間の取り方が見られます。手元を高い位置に体を縦方向にねじり上げたあと、下半身からスタートすることで手元はややフラットな位置に下りてきています(画像B)。そうすることで上半身と下半身に捻転差が生まれ、飛距離に結びつけていますが、大きな体重移動や切り返しでの左への踏み込みといった飛ばしに効果的な動きを取り入れていないことで飛距離よりも正確性を重視したスウィングといえます。

ダウンスウィングに入っても左ひざは伸ばさずにしっかりと受け止めるように余裕をもたせ、アッパー軌道で振るために少し体を右に倒して振り抜いていきます(画像C)。この画像は2位になったワールドレディスサロンパスカップの練習ラウンドのものですが、試合が始まるとティーアップを低くし、フェアフェイキープとランで距離を稼ぐ作戦で好成績につなげました。

青木選手にはスタンスの向き、フェースの向き、胸の向きでフェードやドローを打ち分けたり、その日の調子によって球筋や弾道の高さを変えたりと、組み合わせのパターンをいくつも持っています。前週のアース・モンダミンカップの初日のスタート前に球筋が定まらずにバタバタしてスタートしたのですが、始まってみればドライバーはフェアウェイをとらえ、2打目以降はピン方向にしか飛ばずに5バーディ1ボギーの9位タイで好発進していました。

毎試合のことですが、青木選手の朝のルーティンはスタート45分前というかなり遅めにコースに入り朝の練習は20球程度でパットの感触を確かめたらもうスタートしていきます。もしコースまでの道路で渋滞にハマるとまずいからと大西翔太コーチはもう少し早くといいますが、時間がありすぎるとやることが多くなってしまうことを嫌がると話します。今日の調子はラウンドが始まってから感じることでその場で幾つもあるパターンを組み合わせて弾道をコントロールして戦っているのです。

練習はあくまで練習、試合中の体の調子や感覚でできることを選択するという、引き算のゴルフをする点が青木選手のプレースタイルといえるでしょう。一時期は飛距離を伸ばそうと努力したこともありますが、足し算ではなくシンプルに自分のできることと向き合い磨いたことで、「3Wまでピンを狙うクラブ」という青木選手のゴルフは確立されています。

実際、最終日に後続を一気に引き離した10番からの3連続バーディは、10番は15ヤードのチップイン、11番202ヤードのパー3では3Wで20センチにつけるスーパーショット、12番は7メートルのパットを決めて、と青木選手のプレースタイル通りの3連続バーディを奪いました。

ここまで38試合中18試合を終えましたが、ポイントランキングでも獲得賞金でもキャリアハイのシーズンを送っている青木選手。残り半分のシーズンで複数回優勝を見せてくれることでしょう。