今シーズン好調で初優勝も期待される菅沼菜々のスウィングを東大ゴルフ部監督で日本におけるプロコーチの草分け的存在、現在、成田美寿々、穴井詩らのコーチを務める、井上透が解説!

今季、トップ10フィニッシュ7回(6月9日現在)と好調な菅沼菜々選手は、いかにも「手を使わない」スウィングが特徴です。

たとえば、バックスウィングで手首のコッキング動作が見られないところ。側屈動作(体の左サイドを縮め、右サイドを伸ばして、上半身を左に傾ける動作)の大きいところ。手元よりもヘッドが外に保たれたまま、ターゲットラインに対してクラブが真っすぐ上がっているところなどは、手を使わない意識の表れと言えるでしょう。

クラブの動きで言えば、バックスウィング前半は、クラブが外目に上がって、ちょっと右に行きそうな雰囲気がありますが、切り返しからダウンスウィングにかけて、左手首を掌屈させる(手のひら側に折る)ことで、フェースを閉じる方向に使い、球をつかまえてコントロールしています。

また、バックスウィングよりもダウンスウィングのほうが、インサイドから下りているところなどは、いかにもプロらしいクラブの動きで、効率のよい運動をしている証拠と言えるでしょう。

さて、そんな菅沼選手のスウィングですが、多くの人が気になるのがトップ・オブ・スウィングの形ではないでしょうか?

バックスウィングの側屈動作が大きい菅沼選手は、トップで体重が左足に乗って、軸が目標方向に傾き、一見するとリバースピボット(ギッタンバッコンの動き)になっているように見えるからです。

一般的に言えば、リバースピボットのトップはよくないものとされています。この形になると、ダウンスウィングで体が左に突っ込み、その結果、カット軌道になって、スライスや引っかけ、球が上がらないなどのミスが出やすくなるからです。

しかし、菅沼選手の場合、トップで目標方向に傾いた軸が、ダウンスウィングに入ると逆方向に戻り、いわゆるビハインド・ザ・ボールの状態でしっかりとしたインパクトを迎えられています。

つまり、トップの形こそリバースピボットに見えるけれど、ダウンからインパクトにかけてはセオリーどおりの態勢に戻っている。だから、問題がないのです。

もちろん、リバースピボットになれば体が左に突っ込みやすいのはたしかなので、一般のゴルファーの方々に、このトップをお勧めすることはありません。

ただ、トップの形だけでスウィングは判断できない。多少リバースピボット気味であったとしても、菅沼選手のように、ダウンスウィングで軸の入れ替えができている人であれば、そのトップを否定することはできない、ということは覚えておくとよいのではないでしょうか。