キャロウェイは『パラダイム Aiスモーク』ドライバーとともにアイアンシリーズも一新。なかでも気になるのが「HighLaunch(高打ち出し)」を意味する『HL』アイアン。キャロウェイは、虎の子AIフェースに、「ボールの上がりやすさ」の条件をインプットし、やさしくボールの上がるアイアンに仕上がっていると言います。今回は、ツアーモデルの『APEXプロ』と比較しながら、『パラダイム Aiスモーク HL(以下、HL)』アイアンの性能をクラブ設計家の松尾好員氏と検証してみました。

最適な重心の高さはヘッドスピードで決まる

もっとやさしいクラブを使ったほうがいいのではないか? 年齢を重ねるにつれて、そう考えるゴルファーは少なくありません。かつてツアーモデルを使っていた人でも、最近の「飛ぶ! 上がる! やさしい!」を謳うクラブに食指を伸ばしたくなります。今回は、キャロウェイの2モデル、『APEXプロ』と『HL』を例に話を進めていきます。

キャロウェイの上級者モデルにあたる『APEXプロ』は、シリーズの中でも『MB』、『CB』よりはやさしいモデルになります。中空構造を採用しているため重心深度が深く、ミスヒットに対しての寛容性は『MB』、『CB』よりも高くなります。ヘッドデータで比較すると『MB』の重心深度が1.4ミリに対し、『APEXプロ』は2.7ミリと約2倍深く設定されています。このことからも『APEXプロ』は、ミスヒットに対する保険が多少備わったアイアンといえます。

しかし、クラブがスウィングに対してオーバースペックになってくると、ミート率だけでなく、ボールの高さや飛距離に影響が生じてくるため、スウィングスピードが低下すると今まで可能だったパフォーマンスを発揮することが難しくなってきます。ちょっと高さが足りない、ちょっと飛距離が足らない。その「ちょっと」の部分をヘッドの力を借りてカバーすることも得策のひとつとなります。
アイアンの場合、飛距離はロフト角に影響します。『APEXプロ』と『HL』のロフト(実測値)を比較すれば、『APEXプロ』が7番33度、PW45度、『HL』が7番29.8度、PW43度。ツアーモデルの標準的なロフトの『APEXプロ』で十分な高さと飛距離を得るには、「ドライバーのヘッドスピードが47m/s以上必要になる」と松尾氏は分析します。

クラブの性能に対してヘッドスピードが不足していると、打球にスピンが入らず、途中でドロップしてしまい十分なキャリーが得られなくなります。スピード不足を解決するひとつがクラブ重量になります。『APEXプロ』が435.1グラム、『HL』が385.6グラムとなっており、振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントも、『APEXプロ』が273g・㎠(大きい)、『HL』が265万g・㎠(普通)に下がります。

「スイートスポットの高さもクラブ選定に大事な要素」だと松尾氏は言います。『HL』が21.0ミリなのに対して、『APEXプロ』は23.2ミリと「高い」位置にあります。この2.2ミリの違いは、スウィングとの相性に大きく影響し、『APEXプロ』はダウンブロー、『HL』は払い打つスイープインパクト。再現性の高いダウンブローが反復でき、まだ振り切る力を持っているのであれば『APEXプロ』が、体力的にキツくなり、オーバースペックが原因でスウィング軌道がバラつくのであればクラブ重量が軽く、重心の低い『HL』が合うということになります。

ただ、『HL』アイアンは米国ブランドらしくバウンス角が「5.6度」とかなり多めに付けられているため、スイープインパクトだけでなく、ダウンブローのインパクトとも相性が良さそうです。この理由から、上級者モデルからの切り換えに適したアイアンともいえるでしょう。

Aiスモークアイアンシリーズはそれぞれが特徴的

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフトは「NSプロ ZELOS7」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

クラブ長さは37.13インチと「標準的」ですが、クラブ重さは385.6グラムと「軽く」、スウィングウェイトがD0.4と「やや小さい」です。クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントは265万g・㎠に抑えられています。計測数値のみで推察するとドライバーのヘッドスピードが「41㎧」くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。

ヘッド形状を見てみると、米国ブランドのキャロウェイらしく、全体的に丸みのあるヘッドと長いフェース、広いソール、厚めのトップラインが特徴で、この4点セットで安心感を与えてくれます。

実際に試打したところ、3モデルある『パラダイム Aiスモーク』のなかでも、長いフェースとシャローフェースの組み合わせのおかげで、「やさしく球を上げやすい」イメージが出ています。試打シャフトはスチールながらも軟らかい設定なので、ヘッドスピードが37〜38㎧くらいのゴルファーでも十分扱えそうです。

グリップにも特徴があり、太さが女性用クラブ並みに非常に細くなっています。『パラダイム Aiスモーク』のなかでは、フェースのトウ側の高さが低く抑えられているので、アドレスではライ角が数値よりもフラットに感じます。

フェース面には軟鉄よりも硬いステンレスが採用され、打感は硬く、インパクト音は高く、フェース面の弾き感が良かったです。フェースの長さと重心距離が長いことからネック軸回りの慣性モーメントがやや大きいため、ダウンスウィングでヘッドが返りづらく球をつかまえ過ぎることもありませんでした。

米国ブランドらしくソール面に5.6度と「やや大きめ」のバウンス角が付いているおかげで、ダウンブロースウィングでターフが取れるようなスウィングでもソールの抜けが良く、気持ち良く振り抜けました。

この『Aiスモーク』の3モデルは構えたときに受ける印象がそれぞれで違いました。実際に3種類を試打して自分が思い描く弾道と合うものを選ぶといいでしょう。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月23日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より