「パナソニックオープンチャンピオンシップ」で史上6人目のアマチュア優勝を成し遂げた蝉川泰果。300ヤードを越えるドライバーで攻め続けたスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

女子ツアーで山下美夢有選手がツアー史上最少ストローク60を記録した同じ週、日本の男子ツアーでは東北福祉大4年生の蝉川泰果選手が、3日目にツアーでのアマチュア最少ストローク61を記録し首位タイに立ち、最終日も6つスコアを伸ばし並み居るプロを押しのけて優勝を飾りました。伸ばし合いの試合展となった最終日は322.5ヤード(全体の3位)のドライバーを武器にピンを攻め続ける姿は多くの人に刺激と感動を与えてくれました。

「この前フランスでおこなわれた世界アマでガレス・ジョーンズコーチに『誰よりも多くバーディを獲らないといけない状況で、飛距離が出ることをもっと活用しないといけない。この幅に打てないなら打てるように練習するしかない』と言われました。いまはそれを続けることが大事だと思って、今週もドライバーで攻め続けるスタイルで試合に挑みました。僕にはコレが一番合っていると思います」(蝉川泰果)

優勝会見の話では、弱気になりキャディを務めた後輩の中村君に発破をかけられた場面もあったようですがドライバーで攻めた理由をこう述べました。タイガー・ウッズの全盛期に生まれ、泰果(たいが)と名付けられた蝉川選手のドライバーショットを見てみましょう。

左手の甲が見えるストロンググリップで握り、左腕を内側に絞るようにして、わきをしっかりと締めたアドレスです。ボールとの距離は手元があごの下にくる、やや遠目に構えます。ゆっくりとしたテークバックで始動しフェースを開かずにクラブを上げ、左腕が地面と平行になる位置で背中がターゲットを向くくらい早い段階で深く捻転していきます。弓を引くように筋肉を引き伸ばし、縮むときにエネルギーを発する伸張反射を最大限に使っています(画像A)。

画像Bでは肩のラインは100度以上回した深いトップ(左)から腰がターゲット方向にスライドしていないことから、体重移動よりも回転力を目一杯使っていることが見て取れます。骨盤を巻き戻すように回転させ体幹部の筋肉の捻転差を作っています(右)。

ストロンググリップで握っているのでインパクトでも左手の甲が正面から見えています。ストロンググリップのメリットの一つ、左腕とクラブの位置関係はアドレスと同じになるのでスクェアグリップのように左腕を内から外へ回す動きはスウィング中には見られません。そして蝉川選手のもう一つの特徴的な動き、右足のかかとが浮かない「べた足」にすることでフォローでも前傾角がキープされていることがわかります。

運動する際の動きの特徴を大きく4つに分類して体系化した「4スタンス理論」を早くから取り入れ、自分にとって動きやすく力を出しやすい、再現性の高いスウィングを身につけたことは、これからのゴルフにおいても強みになることでしょう。

高校時代までコーチを務めていた青木翔コーチに話しを聞くと「高校生までは飛距離がなかったのでショートゲームでスコアメイクするゴルフを磨いていました。そこに飛距離が加わったことで大きなゴルフに成長して来ましたね」と喜びます。

青木翔コーチのもとで基本を学びナショナルチームで更に成長した蝉川選手。スコアの伸ばし合いになった展開のなかで恐れを勇気でねじ伏せ5連続バーディを奪ったサンデーバックナインは、強烈な印象を残しました。男子ツアーにも、また新しいヒーローが誕生した瞬間でしたね。プロ転向してからの活躍が楽しみです。

※2022年9月27日10時26分 文章を一部修正いたしました。