東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩らのコーチを務める井上透が吉田優利のスウィングを解説。

今季は未勝利ながら、安定した成績を残し、22年8月4日現在賞金ランキング11位につけている吉田優利選手。そのスウィングは、往年の名プレーヤー、ロレーナ・オチョワを彷彿させる、強烈な捻転差が特徴と言えるでしょう。

まずは、正面からダウンスウィングを見てください。胸が目標の反対よりもさらに後ろを向いているにも関わらず、下半身が粘り強く動き、腰がフォロー方向に回旋していることがわかります。
よく、「切り返しでは体が開かないように(右肩が前に出ないように)する」などと言いますが、ここまで体を開かずに切り返せるプレーヤーはほとんどいません。これは、ずば抜けて柔軟性が高い吉田選手だからこそできる動き。肩周り、体幹周りに突出した柔らかさ、強さがある証拠と言えるでしょう。

ただ、柔軟性の高い選手というのは、タメを作りやすいものの、ゆるみが出やすく、ダウンスウィングでクラブが寝て、振り遅れやすいという傾向があります。そのため、再現性の高いショットを実現するには、この問題を解消する工夫が必要になるわけです。

たとえば、吉田選手の場合、アドレスで両ひじをわずかに曲げ、そのひじの状態を保ったままスウィングしているのがわかります。このように腕を短く使い、終始腕を体の近づけておくと、ゆるみが出にくく、クラブを振り遅れるのを防ぐことができるのです。

また、吉田選手は、バックスウィングで手首のコッキング動作をほとんど使っていません。これにはダウンでタメを作りすぎない効果があります。吉田選手の場合、自然にスウィングしても強いタメができてしまうので、タメにつながる手首をコックする動きを必要としていないのでしょう。
さらに、後方からバックスウィングを見ると、手元よりもヘッドを高い位置に保ち、クラブを立てながら上げているのがわかります。

基本的に、ダウンでクラブの寝やすい人ほど、クラブを立てて上げやすく。クラブが外から立って下りてくる人ほど、インサイドに上げようとするも傾向があります。つまり、このクラブを立てたバックスウィングには、「ダウンでシャフトが寝るのを防ごう」という彼女の意志が見て取れるのです。

次に注目してもらいたいのは、ダウンスウィングのクラブの軌道です。吉田選手を見ると、切り返した瞬間からクラブが後ろ(背中側)に倒れ、右ひじよりもさらに低いラインからクラブが下りて来ているのがわかります。

この、クラブが下りるラインが低いほど、入射角度がシャロー(ゆるやか)で、低く長いインパクトゾーンが実現できていると判断できるのですが、これほど低いところから下ろせるのは、ずば抜けた柔軟性のおかげと言えるでしょう。

ここで知っておきたいのは、クラブが下りて来るラインの高さと、ハンディキャップには相関関係があるということです。基本的に、ハンディキャップの高い人ほど、クラブが下りて来るラインが高く、ハンディキャップが低い人ほど、下りて来るラインが低いのです。

合格ラインは、右肩の高さ。それよりも下からクラブが下りていれば合格です。逆に、右肩よりも上から下りているうちは、クラブが外から鋭角に下りやすく、ショットは安定しないので注意してもらいたいと思います。