ゴルフダイジェストアワードのクラブ・オブ・ザ・イヤー「ドライバー部門」で大賞を獲得した『トリプルダイヤモンド』モデルをはじめとするキャロウェイ『パラダイム』シリーズは、ヘッドのボディ全周にカーボンを採用した「360度カーボンシャーシ」を特徴とし、日米男女ツアーで20勝という圧倒的な結果を残した。その後継モデルが、今回紹介する『パラダイム Ai スモーク』である。すでにPGAツアーから漏れ聞こえてくる評価は高いものがあるが、真の実力はいかなるものか? クラブ設計家の松尾好員氏と検証してみた。

さらに進化した6代目AIフェースの実力

2本の柱をフェースの裏側に立てた「ジェイルブレイク」は、近年のキャロウェイドライバーにはなくてはならないテクノロジーとして深く浸透してきた。ジェイルブレイクがはじめて搭載された『GBB エピック』が登場する前年、PRGRが「ギリギリ」を謳い、ドライバーに再び初速を回帰させていた。世界のゴルフ規則を統括する公的機関のひとつであるR&Aは『RS‐F(2016)』に不適合の裁定を下したが、PRGRによってそれまでの「弾道の安定こそが飛距離アップにつながる」という考えに、「初速アップ」という開発のテーマが加わることになった。

「ルールは破らない。常識を破る」をスローガンに、「禁断の飛び、いよいよ解禁です!」と登場したのが、『GBB エピック』だった。ヘッドのクラウンとソールを2本の柱でつなぐことで、インパクト時のヘッドのたわみが抑えられ、初速アップが可能になるというものだった。

2008年に施行された高反発ルールは、反発係数「COR0.830が上限」と定められた。各メーカーはこの「COR0.830」にどれだけ近づくことができるかを競うようになった。高反発ルール施行から約10年が経ち、多くのメーカーが上限に達するテクノロジーに挑むこととなった。

『GBB エピック』は、ヘッドのたわみを抑えることで初速アップが可能だと考えた製品だが、一方でヘッドをたわませることで、初速アップが可能になるという逆の考えを持つメーカーもある。これに関してはいまだ結論に至っていないが、各メーカーが目指したのは、高初速エリアの拡大だった。

フェース面をトランポリンだとイメージすればわかると思うが、最も反発が得られるのは中央部分。その周辺は、中央部から離れれば離れるほど反発力は小さくなる。中央部の反発を上限値に保ったまま、どれだけ周辺部を上限値に近い状態に出来るかの競い合いになった。

テーラーメイドは『M5/M6』で反発係数を超えたものを作り、フェース下部の2つの穴からレジン素材を注入し、ルールの上限値まで戻す手法をとった。ブリヂストンは「サスペンションコア」という突起をフェースの裏側に当てることで、中央部の反発を抑え、周辺の反発をアップさせた。

富士山のような円錐形をイメージするとわかりやすい。5合目部分を輪切りにしたら、山頂部よりも面積は大きくなる。五合目をルールの上限「0.830」に設定し、五合目から上の上限を超えた部分の反発を抑えることで、高反発エリアが広がると考えたわけだ。

AIの進化が「ジェイルブレイク」を不要にした

しかしキャロウェイは違った。2019年モデルの『エピック フラッシュ』には、ジェイルブレイクに加え、「Aiフラッシュフェース」が導入された。「ルールを守る」、「耐久性を確保する」、「打球初速をアップする」、この3つの条件をAIに考えさせ、普通にやったら34年かかる開発作業を一気に短縮させた。

AIが作り出したフェース(裏側)は、言葉では表現できない複雑な形状をしており波を打っていた。このAIフェースは、その後の『マーベリック』、『エピック』、『ローグ ST』、『パラダイム』で形状を進化させ、2024年『パラダイム Ai スモーク』では、キャロウェイの「虎の子」とも言えるジェイルブレイクを必要としないまでに進化した。

Ai スモークに採用された「Aiスマートフェース」は25万のスウィングデータと「飛距離アップ」、「スピンの低減」、「弾道のバラつきの抑制」をAIにインプットさせ、シンプルにフェース設計のみでミスショット時の寛容性を高めることができた。レギュラーモデル同士のヘッドの慣性モーメントを比べると前作の『パラダイム』が5346g・㎠だったのに対して、『パラダイム Ai スモーク MAX ドライバー』は5181g・㎠と減少している。

さらにクラブ設計家の松尾氏によれば、「MAX ドライバーはパラダイムと比べてリアルロフト角が大きくなっている」と言う。前作では実測値「9.2度」(表示ロフト10.5度)だったのに対して、Ai スモークは「10.9度」と1.7度寝ている。

ここから見えてくることは『パラダイム ドライバー』はロフトを立てて初速を向上させる必要があったが、『パラダイム Ai スモーク MAX ドライバー』は、大きく設定されたリアルロフトによって、「やさしく高弾道で飛ばせる」ドライバーに進化したと言える。

標準シャフトの「S」はヘッドスピード40m/sと相性がよさそう

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドはロフト角10.5度、シャフトは「標準 TENSEI 50」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

クラブの長さは45.0インチ。クラブ重量も303.9gとそれぞれ「標準的」です。クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが290万g・㎠と「やや大きく」なっています(基準値:282万〜286万g・㎠)。計測数値のみで推察すると本来ならドライバーのヘッドスピードが45m/sくらいのゴルファーにとって振りやすくなっています。

ヘッドを見てみると前作の『パラダイム』(標準モデル)よりも少しヘッドの横幅が広めですが、「パラダイム Ai スモーク」シリーズの『MAX D』や『MAX FAST』と比べるとヘッドはひとまわり小さく感じられます。

実際に試打したところ、アドレスではフェースの丸みが少なく、比較的スクエアな形状です。そしてFP値(フェースプログレション)は「小さい」ですが、米国モデルらしい強いオープンフェースとフラットなライ角でつかまり具合が相殺され、ストレートな弾道を打てるイメージが湧きます。

Sフレックスのシャフトは軟らかめの設定ながらも振りやすく、インパクトの再現性も高かったです。ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーでも扱えそうな感じがありました。前作の『パラダイム』よりもリアルロフトが「大きく」なり、ヘッドの重心位置が少しヒール寄りになったので、より球を「つかまえやすく」なりました。

ヘッドの慣性モーメントは前作よりも小さくなっているとはいえ、基準値(4600〜4799g・㎠)よりも大きく、ミスヒットに対する寛容性は高く、安心感があります。ネック軸回りの慣性モーメントが大きく、ヘッドの返りが遅いので、安定したストレートからフェード系の打球が打ちやすいクラブになっています。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月27日、3月5日合併号「ヘッドデータは嘘つかない!」より