伊藤園レディスで今季4勝目を挙げた山下美夢有。この優勝でメルセデス・ランキング1位が確定し、「年間女王」の称号を手にした。女王・山下の身長は150㌢と小柄なのに平均飛距離は236ヤード。1歳年上のライバル、西村優菜は150㌢で231ヤード。西村と同期の古江彩佳は153㌢で242ヤード飛ばす。小さくても強くて飛ばすスウィングの秘密について、目澤秀憲コーチに聞いてみた。

身長が低いとスウィングにとって不利な点が多いのはうなずけると思う。横振りになり、自ずとフェースの開閉も大きくなる。パワーも出しづらくスピードも出ない。不利な条件のなかで、彼女たちは
身長のハンディを感じさせない結果を出している。その背景を、目澤秀憲プロコーチが以下のように分析。

「クラブの進化は大きいですよね。以前に比べ、クラブが軽量化し、シャフトも軽くて硬いものが出てきたことで、クラブスピードも出せるようになりました。ヘッドも、重心位置を自由に動かせるようになり、球を上げやすいクラブが出てきています。また選手たちもトレーニングが当たり前になり、地面反力なども使えるようになって、スピードを出して振れるようになってきています。今は身長のハンディがほとんどなくなってきていますね」(目澤・以下同)

古江彩佳。フェースをシャットに保って振り切れるから、飛距離と安定感が両立

まずは古江彩佳。153㌢で平均240ヤード超。身長に対する飛距離効率を考えると、MAX値が出ているのかもしれない。

「アップライトに振れないのでフェースターンは増えるはずですが、クラブに振られる動きがまったくないですね。切り返しでも手首の角度をほどいてリリースする動作がありません。それがインパクトまでキープされた右手首のアングルに表れていて、体で球をつかまえているのがよくわかります。インパクトゾーンが長く、フェースをシャットに保ったまま振り切れています」

切り返し以降、下半身リードでクラブを下ろし、自らリリースする動きはゼロ。右サイドの側屈と
骨盤のローテーションを使い、体全体で球をつかまえる意思が見られる。

西村優菜。インパクトで左肩からシャフトまで一直線。長いインパクトゾーンの証

続いて西村優菜。「左肩から左腕、シャフトまで一直線でインパクトを迎えています。これはいい選手の特徴で、円運動に対してフェースをキープする能力が長けているということ。また、右ひじも絞れていて、体に対して右ひじが遅れてくることでフェースターンが抑えられます。PGAツアーのベテラン、ジム・フューリックのインパクトも似た形ですが、この手の選手はショートアイアンが上手いんです」

山下美夢有。左肩を引きながらインパクト。胸の回転スピードが速い

最後に、年間女王に輝いた山下美夢有。「写真を見るとわかりますが、インパクト後に左肩を後ろに引くようにして胸を回しています。腕が胸と連動していて、胸が回るスピードが速い。一方で、胸が回るなかで左足つま先で踏ん張れています。スウィング中のバランスの良さが際立っている。自分の教えている選手と回っているのを見ましたが、彼女はどんなロケーションに行っても体がブレず、ひるまないですよね。コースの駐車場でメディシンボールを投げているトレーニングを見ましたが、そうした陰の努力がスウィングに表れていますね」

「小柄だと軌道がフラットになって、クラブが下から入って振り遅れ気味になりやすい。短い番手でドローがきつくなります。それを克服するため、彼女はフェアウェイのボールをあえて沈めて、そっれを打つ練習もしていました」

●「左のお尻がアドレスよりも後ろ」は一流の証

「後方から見ると、山下の下半身の強さがわかる」と目澤。アドレスよりインパクトの左のお尻の位置がわずかだが後方に位置する。うまくフトコロを作れている証拠でもある。

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月22日号より(撮影/大澤進二)