昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は「"教え子"たちのプロテスト」がテーマだ。

3人の合格者は、馬場咲希、髙木優奈、稲垣那奈子

O編  遅ればせながら、馬場咲希さんのプロテスト合格、おめでとう。周りの期待が大きかっただけに、コーチのわきゅうとしても、ホッとしたんじゃない?

坂詰 いやぁ、ホント、ホッとしましたよ。馬場ちゃんのお父さんとは、冗談でよく話してたんです。もし、プロテストに落ちたら、記者に囲まれる前に逃げますよって。

O編 気持ちはわかる(笑)。ちなみに、馬場さんは、トップと5打差の12アンダー2位タイという結果だったけど、どんな感じだったの?

坂詰 思っていたより危なげなかったというか、落ち着いていたというか。安心して見ていられましたね。

O編 へ〜。そうなんだ。ほら、プロテストって、実力のある選手でもナーバスになったりするからさ。

坂詰 もちろん、本人にはプレッシャーもあったと思うんです。でも、トップ合格した清本美波さんなんかは、ずっと仲がよかったみたいで、そういう選手とラウンドできるのを楽しんでいるようでした。まぁ、馬場ちゃんの、のほほんとした性格がいいほうに出たんだと思います。

O編 安心して見ていられたって言ってたけど、どんなところを見て?

坂詰 たとえば、初日は8バーディ5ボギーの3アンダーだったんです。そのボギーがほとんど3パットだったので、「あぁ、これなら大丈夫かな」って。ほら、3パットのボギーってことは、ショットがグリーンに乗ってるってことですから。

O編 ショットがよければ、あとはパター次第ってことか。

坂詰 とはいえ、4日間で11ボギーは打ちすぎですけどね。プロテストはボギーを打つなって言われてるのに。こんなにボギーを打って通るのは、ホント珍しいと思いますよ。

O編 11 ボギーで12 アンダーか。ある意味、すごい伸びしろだね。

坂詰 そうですね。まだまだ上手くなれるってことにしておきましょう。

O編 馬場さん以外にも、髙木優奈さん(11アンダー4位通過) と、稲垣那奈子さん(6アンダー15 位タイ通過)も、わきゅうの契約選手でしょ? 年々厳しくなるプロテストに3人合格なんて、すごいね。

坂詰 髙木さんは6度目の挑戦だったので、本当によかったと思います。稲垣さんは、ナショナルチームでの経験が生きて、最終日67 と爆発してくれました。

人のプレーやスコアを意識しても、いいことなんてない

O編 彼女たちには、どんなアドバイスをしたの?

坂詰 プロテストって、どうしても雰囲気にのまれやすいじゃないですか。「やるべきことはやってきたんだから、いつもどおりにやれ」って言っても、なかなか普段どおりにはできない。強い選手を見ちゃったり、上位選手のスコアを意識しちゃったりするわけです。だから、そういうものは見ないで、1日2アンダーを目標にしようって。

O編 人を意識して戦うと自分を見失いやすいってことだね。

坂詰 そういうことです。結果的に5アンダーまでが合格ですから、毎日2アンダーの8アンダーなら十分なんです。もちろん、年によってはもっとスコアが伸びることはあります。でも、目標スコアをクリアして落ちたら、それは仕方ないじゃないですか。とにかく、人のプレーやスコアを意識しても、いいことなんてない。だから、少しでもそこから意識を遠ざけようと思って。

O編 あくまで、自分の設定したスコアを意識することで、自分のゴルフに集中するってことか。

坂詰 そういう考え方ができれば、攻め方も変わってきます。たとえば、今回プロテストが行われたJFE瀬戸内海GCの9番は、左に深いバンカーがあって、右サイドが全面池のパー4なんです。ここで無理をすれば、大叩きもある。でも、2アンダーを目標にすれば、ボギーでいいと思えるから、180Y残してもフェアウェイに刻むことができるわけです。

O編 でも、選手はなかなかそう思えないんじゃないの?

坂詰 そうなんですよ。髙木さんも、初日は6アンダーでいいスタートを切ったんですが、2日目にいくつか凡ミスをして、1オーバーだったんです。そうすると、ミスを後悔したり、自分を責めたりして、自分で自分を追い込もうとしちゃうんです。でも、冷静に考えたら、まだ5アンダーですからね。予定より1打いい。だから、いいじゃん、まだ5アンダーなんだから想定内じゃんって。

O編 しかし今回の話は、我々アマチュアゴルファーにも参考になりそうだね。

坂詰 そうですね。競技やコンペになると、どうしても他の人や、上位のスコアを意識しちゃうけど、そんなものを意識してもどうにもならないわけです。それよりも、その日、そのコースにおける自分のスコアを設定し、そこと戦う。そうすることで、普段どおりの、自分のプレーがしやすくなるんじゃないでしょうか。

PHOTO/Hiroaki Arihara  THANKS/エースガーデン(八王子)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年12月5日号「人を見ても仕方がない 第43回」より