日本で唯一のLPGA公式戦「TOTOジャパンクラシック」で1年3か月振りの今季初優勝を飾った稲見萌寧。最後までピンを攻めたスウィングをみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファー・中村修が解説。

優勝インタビューで涙がこぼれる姿は、これまで苦しいシーズンを送ってきたことを物語っていました。21年は8勝を挙げましたが、22年は腰痛にも悩まされ2勝にとどまりました。23年はオフからスウィング改造に取り組んできていましたが、本来のフェードボールを手にすることができませんでした。

6月に夕食を共にした際に「これでハマりそう」と新しく迎えた柳橋章徳コーチとの取組みに手ごたえを感じていると話してくれました。これまで何度が報じてきましたが、インパクトバッグを叩くことで体とクラブの動きを頭の中でシンプルにしていくことで、再現性と正確性を高めることに成功しました。

体の感覚に敏感な稲見選手は、気持ちよく振れる感覚を重視するので、たとえば上げる位置などのポジションを変える意識は難しく「インパクトバッグを叩くとクラブの動きをシンプルに理解し、それにつられて体の動きも連動するようになり腰痛の心配もなくなった」と柳橋コーチは教えてくれました。

インパクトバッグを叩くドリルは昔からあるドリルですが、大きなターゲットに対して棒を振る動作はゴルフスウィングをシンプルにしてくれる効果のあることを改めて教えてくれます。その結果、パーオン率1位だった21年当時のショット力が戻ってきたことで、難易度の上がった最終日のピン位置にも積極的に攻めるスタイルが見られていました。

もう一つの稲見選手のストロングポイントであるパッティングについては、須藤大和パッティングコーチがチームに加わったことで、クセや傾向を認識し改善することに取り組んでいました。先週からパットのグリップをクロスハンドから順手にチェンジしたことも安定したパッティングにつながったようです。

そして最後はトレーニングによる体のコンディションのキープは、試合中もオンラインで斎藤大介トレーナーのトレーニングを継続したことで姿勢が崩れずに、72ホール目の2打目までピンを刺すアイアンショットを披露することにつながりました。

朝の練習場で、アドレスした左腰にクラブを立てかけて打つ姿を見ていました。腰の回り過ぎを防ぎバランスの取れたスウィングに修正していました。スウィングを見てみると、オーソドックスなスクェアグリップで握り、左腕が地面と平行になる位置でクラブは垂直になり、手元は胸の前というお手本のようなテークバックが特徴です。そのまま肩のラインをねじってトップの形を作っています。

ダウンスウィングでは胸を右に(飛球線後方に)向けたままインサイドから下ろすというのではなく、上半身と下半身の捻転差を大きくは作らずにターンを重視するような体の動き。フェードヒッターの特徴が見て取れます。

映像ではフォローで頭が目標方向に突っ込んでいるように見えるかもしれませんが、インパクト前後ではしっかりとビハインド・ザ・ボールを守り、体の回転にしたがって頭は左足の上に位置しています。頭の中もスウィングもシンプルになったことで、正確性と再現性を兼ね備えたスウィングを手に入れました。

心技体が揃ったところにコンビを組んだ保科隆キャディの力も加わり、つかみ取った久しぶりの優勝は、残り試合でも強い稲見選手を見せてくれるに違いありません。

PHOTO/Shinji Osawa