食品価格の高騰、産地偽装や薬物の混入事件など、「食」には心配が絶えない。動物園に暮らす動物たちに何か影響を与えているのだろうか。札幌市円山動物園の担当者、野陳恵一さんに話を聞いてみると「実はそれほど、えさ代は増えていないんです。むしろ減っています」という、意外な答えが返ってきた。(須藤洋一)

円山動物園の事業概要を見ると、えさ購入にかかる費用は3年間で6割程度に減っている。「経営改善のための努力です」野陳さんは胸を張った。
地域密着型の動物園として、札幌市民に長年親しまれてきた円山動物園だが、ここ数年、入園者の減少に苦しんできた。13年前の1995年には年間約92万人が訪れているが、2005年には49万人にまで減少。入園料からの収入も40%以上失われた。

これを受け、園では06年度から「リスタート委員会」と呼ばれる、経営改善に取り組むグループを発足させた。2004年度にえさ代として年間5千万円程度の費用がかかったが、07年度にはそれが3千万円弱まで削減された。飼育している動物の種類や数に若干の変化はあったものの、実に2千万円近くが浮いた。

えさ代の大幅な縮小は、経営改善の成果だったのだ。では、経費削減の分だけ、えさの量や質を下げたのだろうか。「園内の動物たちにとって、えさは最大の楽しみ。いくら経営が苦しいからといって、量や質を落とすようなことはしません」と野陳さん。

まず、えさの一部について仲介業者を挟まずに、産地から直接仕入れる方法に切り替えた。トド、アザラシに与えるホッケは稚内から直送。クマに与えるニンジンやジャガイモは、越冬用の土つきのものを道内の産地から仕入れている。これにより、コストの削減ともに、産地の明確なえさを確保できるようになった。また、産地とは一年間に購入する量を一括して契約、今年度分に関しては原材料価格の値上がりの影響を受けることがなかった。このやり方は、大手航空会社がジェット燃料の購入の際に行っている経費の削減手法にも通ずる。
こうした努力により、えさ代の大幅な削減には成功したものの、産地からは「来年度分については値上げしたい」という声も聞こえてくる。原材料価格上昇の影響はこれから響いてくる可能性があり、前途は多難だ。

取材の途中、園のはずれにひっそりと植えられた一本のクルミの木を紹介された。30年ほど前に植えられたもので、クルミの実はサルなど園内の動物たちに与えられているという。ビーバーに与えるヤナギの枝や、昆虫食の動物に与えるコオロギなどは、飼育員が育てたえさを与えている。このような取り組みは、園内で長い間、細々と続けられてきた。「やはり、自分たちの手で育てたえさを、動物たちには与えたいですからね」案内してくれた飼育員の方は力強く話してくれた。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。