ホッキョクグマに、動物園でりんごやにんじん、さらにはクローバーが与えられているという。肉食と言われているホッキョクグマに野菜を与えても大丈夫なのだろうか。札幌市円山動物園の飼育員河西賢治さんによると「クマは本来雑食であり、なんでも食べます。基本的には野菜を食べても特に問題はありません」とのこと。野菜を与える理由は肉を食べ過ぎによる「メタボ」対策だそうだ。(菅野充)


ホッキョクグマのララ
野性のホッキョクグマが肉を食べるのは脂肪を取って寒さに対抗するため。札幌は日本の中で見れば寒冷な地域だが、ホッキョクグマの生息地である北極に比べると温暖。平均気温だけを見ても、札幌は約8℃であるのに対し、北極は約マイナス30℃と大きな差がある。温暖な札幌で肉を食べすぎると脂肪の取りすぎになってしまうのである。

では脂肪の取りすぎにはどのような問題があるのだろうか。「健康面では大きな問題はありません。ただ、脂肪の取りすぎは人間が服を着込んでいるのと同じ状態です。脂肪を取りすぎると、温暖な札幌では暑さで夏バテをしやすくなってしまうのです」とのこと。野生のホッキョクグマは約三ヶ月もの間ほぼ絶食状態で生きられる。夏場の北極は氷が溶けて陸地が減少し、エサをほとんど得られないため、脂肪をエネルギーにかえて生きる。夏の間に絶食すれば、脂肪の取りすぎを防げるのではないだろうか。
「確かに、夏場は本来エサを与えなくても問題はないはずですが、できる限り野生生活に近い状況を作るよう心がけています。エサを食べることはホッキョクグマの楽しみの一つ。エサを与えないと、それがストレスになって健康によくないのです」

理由は分かったが、ホッキョクグマは野菜を好きで食べているのだろうか。嫌々食べていたりしないだろうか。「好物は食べる順番でわかります。今動物園にいるホッキョクグマは、雄のデナリ(14歳)、雌のララ(13歳)、雌のさつき(16歳)の三匹。皆、肉類が大好きで、エサを与えると真っ先に肉を食べますが、意外に野菜も好きですよ」と河西さん。
デナリは比較的野菜が好き。特に白菜、クローバーが好物で、小松菜は苦手。ララは好き嫌いなく食べる。さつきは野菜自体が嫌いだ。同じホッキョクグマとはいえ、人間のように好き嫌いが分かれている。また、三匹ともにどうしても食べられないものもある。日本のみかんは食べるのに輸入のオレンジは食べないし、せっかく北海道にいるのにジャガイモも食べない。

エサの肉と野菜の割合は季節によって変化する。夏場は肉2に対して野菜が8程度、冬にはそれが逆転して肉が8、野菜が2程度になる。取材時に三匹を見た際は天気も良く、あまり元気がないようだったので少し心配になったが、エサはホッキョクグマの様子、特に食べる量や毛並み、排泄物の状態を考慮して飼育員によって細かく調整されている。夏バテしないようにバランスよく食事を取ることが大切なのは人間もホッキョクグマも同じのようだ。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。