金融危機による景気悪化、「食」の安全を脅かす事件、メタボリックシンドローム…そんな不安を少しでも解消すべく「お弁当派」がじわりと増えおり、百貨店などにはアイデア満載のお弁当箱が並んでいる。中でも、保冷材付きでお昼まで冷たさを維持してくれる便利さに加え、フタに描かれたクマのイラストもカワイイ「GEL-COOま(ジェル・クーマ)」は複数のニュースサイトで取り上げられるほどの人気。このジェル・クーマ、実は隠れた秘密がある。(佐藤万記子)


人気のお弁当箱「GEL-COOま(ジェル・クーマ)」 
ジェル・クーマ人気は、MSNの産経ニュース「アイデア弁当箱、花ざかり 昼食代節約や健康志向で」や、東京新聞「コレ売れてます」で、紹介されるほど。

ジェル・クーマのベースとなっている商品ジェル・クールは、フタと一体化したジェルが高い保冷機能を持ち、お弁当の傷みが気になる時期やサラダ・フルーツなどの持ち運びにも最適で、おしゃれなだけでなく実用性も高い。グッドデザイン賞も受賞している。このジェル・クールに、単にクマのイラストがついたのがジェル・クーマ、というわけではない。東京新聞の記事には「絵柄がシロクマ」と書かれているが、詳しく言うとホッキョクグマ。フタにホッキョクグマのイラストが描かれているのには理由がある。

実は、ジェル・クーマを買うと、約40円が札幌市の円山動物園に寄贈されるのだ。40円はホッキョクグマのエサ、およそホッケの1匹分に相当する。
ホッキョクグマは、地球温暖化問題のシンボリックな存在で、円山動物園は2000年以降ホッキョクグマの自然繁殖に成功したのは国内唯一の施設でもある。ジェル・クーマを通して繁殖技術の高さ、種の保存に貢献する動物園であることをアピールすることを狙っている。
動物園は市営のため広告宣伝費という枠組みがなかった。そこで、民間の企業とパートナーシップを組み、動物園のPRや寄附が得られる仕組みを作った。動物園と北海道大学発のベンチャー企業・株式会社「GEL-Design」と札幌市のプロモーションサイト「Webシティさっぽろ」が協働して開発した動物園応援グッズ、それがジェルクーマなのだ。


  円山動物園のホッキョクグマ
初めて販売された2007年5月には2000個がネットで限定販売され完売、魚2000匹がホッキョクグマに贈呈された。再販の要望を受けて北海道洞爺湖サミット開催直前の08年5月に再販され、夏には首都圏でも販売が始まった。

「商品と一緒に円山動物園のエピソードが広がっていくのを1つの狙いにしているんです」とジェル・クーマを企画した同動物園の経営管理課経営係の北川憲司係長は話す。円山動物園も他の多くの公設動物園と同様に経営難に直面している。ジェル・クーマは変わる動物園のシンボルでもあるのだ。

大手ネットショッピングサイトに掲載された声やブログ、店舗などで実際に購入した人の声を聞いてみると、「お弁当箱を買ったら、ホッキョクグマにお魚があげられると思うとワクワクする」など、商品自体の魅力だけでなく、商品が持つさまざまなエピソードも購入理由として挙げられている。一方で、「円山動物園ってどこにあるの?」という声や同じく北海道にある旭山動物園の企画と間違えられているものもあり、円山動物園の認知度の低さも否めない。ジェル・クーマに込めた動物園側の想いは十分にユーザーに届いているとは言えない現状に、園側もホームページを工夫したり、円山動物園へのツアー企画を都市圏の旅行会社に依頼したりと努力を重ねている。

「ジェル・クーマを使うことで、円山動物園や環境問題を身近に感じるきっかけになってくれれば」と語る北川氏。毎日利用するお弁当箱を使って、動物園のメッセージを札幌から遠く離れた東京の人にも伝え、願わくは動物園に訪れてほしい。そんなユニークな取り組みは、まだ始まったばかりだ。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。