よく晴れた休日、楽しそうな家族連れやカップルでにぎわう動物園。突然の地震で動物舎が壊れ、ライオン、トラ、クマ等の猛獣が逃げ出したら… 古びた動物園の建物を見て、こんな不安に襲われたことはないだろうか。動物園の地震への備えはどうなっているのだろうか。(今野尚美)

日本は言わずと知れた地震大国だ。国土面積は世界のわずか0.25%だが、世界全体で起きたマグニチュード6以上の地震のうち、20.7%が日本に集中している。


札幌の中心近くに位置する円山動物園
200万人都市札幌の中心部近くに位置する札幌市円山動物園。もし、地震で動物舎が壊れて動物が逃げ出せば周辺にも大きな影響を与えそうだが、渡邊飼育展示課長によると「これまで、国内の動物園で地震のために動物舎が壊れたり、動物が脱走したりした事件は聞いたことがないです」とのこと。 阪神・淡路大震災で被害を受けた神戸市にある王子動物園も地震による建物被害はほとんどなかったそうだ。

なぜ、大地震でも動物園の被害は少ないのだろうか。 動物園に独自の建築基準はなく、札幌市の公共施設に対する設計基準が適用されているが、猛獣を入れることを考慮して強固に建てられている。例えば、チンパンジー館(2000年建設)のコンクリート壁は厚さ50センチで住宅の2〜3倍。ちなみに、動物園の事務所は15センチだ。また、建物は基本的に平屋が多く、上からかかる重量が少ない構造となっているのも、地震に強い要因のようだ。

動物園のネットワークも活用されている。国内159の動物園や水族館が所属して飼育技術の交流や研究を行っている社団法人日本動物園水族館協会では、動物園が新たな動物舎を建設する際、実績がある他の施設から情報提供を受け、壁の高さ、ガラスの厚さ、針金の太さ等を参考にしている。相互に視察を行い「あら探し」(逃げ出す可能性を見落としていないかチェックする)もしているという。


チンパンジー館
最近ではガラス張りやトンネルなど動物の展示方法が見直され、新しい試みをする園も増えている。これらは手探りだが、問題があればネットワークで情報交換して改善されていく。 高知県立のいち動物公園では、いち早くガラス張りの展示が試みられたが、厚さ1センチの強化ガラスが割られてしまったため1.2センチに改められた。この教訓を生かして、円山動物園では1.5センチの強化ガラスを2枚重ね、間に特殊フィルムを入れる構造にしている。

動物園は想像以上に地震に強いが、動物の脱走事件は起きている。そのほとんどが鍵のかけ忘れ等の人為的なミス。安心して楽しめる動物園になるには、人為的なミスをどう軽減していくかが課題と言えそうだ。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。