動物の生態が見られる「行動展示」で全国に知られる人気スポット、北海道旭川市の旭山動物園。年間26万人まで落ち込んだ入園者は300万人を超え、苦境に立つ動物園の再生モデルとして全国から視察が絶えない。その北の大地で、もうひとつ再生に取り組む動物園がある。道内で最も古い歴史を持つ札幌市円山動物園は、「旭山とは違う」方法で人気の回復を目指す。(甲野佳子)

動物園にいるのは家族連れかカップルばかり、そんな常識があるかもしれない。だが、円山動物園を訪れると、どうも様子が違うのだ。家族連れやカップルに混じって、「お一人様」或いは「おふたり様」の20〜30代女性が結構いるのだ。「彼女たちは『癒し』を求めて来ているようです」と園の担当者は分析する。


円山動物園を訪れた女性二人組み
ブログ検索で「円山動物園 癒し」を検索してみると105件がヒットした。動物たちの写真と一緒に『かわいい』といったコメントや『癒される』といった感想があり、中には男性2人で「癒されに行きます」といった内容のものもあった。こうした変化に気付いた園では、昨年度、動物園の「癒し効果」について札幌市立大学と共同研究を実施した。

研究は、市内の精神科病院デイケアに通所している精神障害者(統合失調症、アルコール依存症など)8名の同意を得て行われた。動物の癒し効果を謳う動物園は他にもないわけではないが、その効果を学術的に調査している動物園は国内では同園のみだ。
研究報告書によると、有意な数字は得られていないが、訪問後に「疲れた」「嫌だった」という感想はなく、対象者のアンケートには飼育員に対する感謝の気持ちと動物に対する新たな発見が記されていた。こうした結果から、研究グループは「一定の治療(セラピー)効果があったと考える」と結論付け、園側は動物園の「癒し効果」に手応えをつかんでいる。


nature cafe EARTH
癒しの追及は研究だけでなく、園内の様々な取り組みに現れている。例えば、授乳室には動物の親子の写真が掲示されている。ストレスを抱えがちなママたちを癒そうと試したのだ。これが的中し、利用者に好評なため釧路市動物園も取り入れた。
お洒落な外観の「nature cafe EARTH(ネイチャーカフェアース)」では、地産地消の観点から道産食材を使ったメニューや流行の塩バニラ味のソフトクリームまで提供している。

同園の北川憲司経営係長が「円山動物園を『動物を見に行く場所』だけでなく、『一日過ごせる居心地の良い場所』にしたい」と語るように、誰もがゆったり過ごせる「都会のオアシス」を目指し、他の動物園との差別化を試みている。2005年度に過去最低の入園者数49万人を記録した円山動物園だが、今年は既に昨年度の年間入園者数である60万人を突破した。癒しを求める現代人と、それを強みにしようとした園の狙いが一致したのだろうか、人気は回復し始めている。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。