2013年夏、あのダルビッシュ有がTwitterである高校生投手を激賞したことから、ネット上で大きな話題となった。 この投手の名前は、山岡泰輔(瀬戸内高)。 一体、ダルビッシュは彼の何を認めたのか? この疑問に応えるべく、野球専門誌『野球太郎』が動いた。
 取材先に選んだのは、ダルビッシュ本人ではなく、昨年まで日本ハムの1軍投手コーチを務め、現在は同球団のスカウトとなった芝草宇宙(しばくさ・ひろし)氏。この疑問に応えるにまさにはうってつけの人物に、同誌ライター・谷上史朗が取材を決行した。(野球太郎寄稿)

◎ダルも山岡も知る男に聞く

ダルビッシュは山岡泰輔(瀬戸内高)の何を認めたのか?

「動画見たけど、これは一番だわ」
 2013年夏の甲子園の決勝が終わり、一息ついていた8月25日。海の向こうからのダルビッシュ有(レンジャーズ)の“呟き”によって、山岡泰輔(瀬戸内高)は、思わぬ形で時の人となった。
 確かに、初戦で敗れたとは言え甲子園で見せた山岡のピッチングは素晴らしかった。広島大会の決勝再試合を観戦した時はさすがに疲れもピークで、本調子には遠かった(それでも2試合連続完封だったが)。それが真の力を測りかねていた僕にも初戦のスタンドで呟かせた。
「こんなに良かったんや…」
 さらにビデオで試合を見直すと、ますますその良さが伝わってきた。そこへダルビッシュのツイッターでの呟き(現在は削除されている)。ダルビッシュは山岡のどこを見て、何を感じ、認めたのか。可能ならテキサスまで飛んでいきたいところだが、そうもいかず。ダルビッシュの真意と、山岡の素晴らしさを解説してくれる人がいないか、と考えた。するとすぐ、一人の顔が浮かんだ。日本ハムの芝草宇宙スカウトだ。昨年までは日本ハムの投手コーチを務め、今年からはスカウト。夏の甲子園期間中はネット裏のやや一塁側に連日席を取り、球児たちの熱戦を視察していた芝草スカウトなら僕の疑問にしっかり答えてくれるはず。
 早速、台風接近で関西圏のアマチュア野球の試合が中止になった9月の午後、大阪市内のホテルで話を聞いた。

◎小柄だがインコースにきっちり投げきれる制球力

 まず、シンプルに山岡の印象を尋ねると、「真っすぐ、スライダーどちらもいいですよね」と、夏の記憶を辿り、話を切り出した。
「体は大きくないけどウチの武田久、谷元圭介みたいに、低いところからホップするような真っすぐ。空振りも取れるし、差し込める。そんなにスピードが出ていない時でも簡単にフライで打ち取れる。2人に通じる真っすぐの質を感じました」
 武田久は170センチ、谷元は166センチと、172センチの山岡よりもさらに低い。それでも2人はプロの世界で、真っすぐを持ち味に戦っている。「ああいう球を投げるには…」と芝草スカウトは、体自体の強さ、腕の振りの速さ、肩関節、ヒジの柔らかさ、指先からボールに伝える感覚の良さ…といくつかの要素を挙げた。
 僕は甲子園の投球に、やはり小柄(174センチ)ながらオリックス、ロッテで活躍した川越英隆を思い出したが、上背のない投手が揃って質の高い真っすぐを投げる理由はあるのか。すると芝草スカウトは逆説的な見方を口にした。
「小さい投手はそういう球を投げられないとプロの世界でやっていけないんじゃないか。プロで右は上背のある投手が多い。その中で生きていくには、人と違う質の真っすぐを持っていないと厳しい」
 その上で…。