ソチ五輪の各種競技が本格的に始まりましたね。団体戦の試合を観て、フィギュアスケート団体戦の試合をご覧になった方も多いかと思います。競技観戦をより楽しむために、採点方法の仕組みを説明してきたこの連載。今まで2回かかって、ようやく技術面からの採点法の概要を説明し終わりましたが、まだそれでは採点の半分にしかなりません。個人戦が始まる前に、もうひとつの採点、PCSについても私なりの説明をしてみたいと思います。(美容ジャーナリスト・渡辺佳子)

○要素以外の採点、それがPCS

 フィギュアスケートの採点には、もうひとつ大事なスコアが残っています。それが「PCS(ピーシーエス)」と呼ばれるもの。Program Components Score(プログラム・コンポーネンツ・スコア)を略したものです。5つの項目を審査するので、別名「5 Components(ファイブ・コンポーネンツ)」とも言われます。GOEと同じく9人の演技ジャッジが採点します。

 よくフィギュアスケートの説明に「表現力」という単語が出てきますが、これは6.0点満点の旧採点法の「アーティスティック・インプレッション(芸術印象点)」の名残りなのでしょうか。「芸術点」とおおまかにまとめているものも目にしますが、それもちょっとこの採点の一面しか表していないし、「演技構成点」という訳もすべてを表しているとはいえないと思うのですよね。なぜならプログラム=演技、ではないのですから。

 TESを「要素の採点」とすれば、PCSの意味するところは、簡単に言って「決められた要素以外の部分の採点」ではないでしょうか。演技だけでなく能力や感性も含まれた評価だと思います。

 たとえばプログラムを庭にたとえて、要素を、植木とか花とか滝とか小径などに見立てたとすると、PCSはそれ以外の、「庭全体の設計プラン」とか、「デザイン・コンセプト」とか、「順路の作り方」とか、そういう周辺のものの採点な気がします。脈絡なく植木や花が置かれていては庭としてまとまりがないし、配置はよくても「置けといわれたから置きました」というぞんざいな置き方では、観てもおもしろみがありません。何のためにこの庭をこの形にしたのかとか、どういう思いでこの庭を造ったのかが伝わらないと、訴えるものがないですよね。また「確かにこの花や木は咲き方も枝振りもよく手入れされているけど、庭全体の統一感がないよね」とか「この花は立派だけど、この庭にはちょっと合わないんじゃないのかな」とか、そういう評価もあってよくて、PCSとはそこを見るものなのではないかと個人的には解釈しています。

 具体的に何をジャッジするかというと、その内訳はこうなっています(アルファベット2文字は採点表の略表示)

  • SS=スケーティング・スキル
  • TR=トランジション
  • PE=パフォーマンス・エクセキューション
  • CH=コレオグラフィー
  • IN=インタープリテーション

 スケーティングはすべての土台。その能力判定を前提として、プログラム・デザインであるコレオグラフィー(振付)はどうか。細かなパーツの組み立て部門であるトランジションをどう工夫しているか。個性を表わすためのパフォーマンス(演技)力はあるか。使用楽曲を理解して演技しているかというインタープリテーション(解釈)の5方向からの判定といえましょうか。単に漠然とした「表現力」では表しきれない多面的な項目を採点していることがわかるでしょう。

 具体的に各審査項目でチェックされるのは、たとえば以下のような部分です。

  • スケーティング・スキル=スケートの基本である滑りそのもの、速さ、加速、エッジ使い、ターン技術、膝の使い方など。
  • トランジション=要素と要素をつなぐ体の動きにどれほどの工夫があるか(要素以外で行うジャンプやステップやターン。イーグルやイナバウアーなどもここに入る。
  • パフォーマンス・エクセキューション=体の動き、身のこなしの美しさ。そこに個性やスタイルが出せているか。プログラムに込めた思いが表せているか。アピールができているかなど。
  • コレオグラフィー=プログラムのコンセプトや目ざすもの。振付の全体バランス。リンク全体を広く十分に使えているか。動きの意味と独創性。音楽とのマッチ。
  • インタープリテーション=曲の解釈。音楽の特徴をとらえて強弱やリズムの変化などを反映した動きができているか。

 これらそれぞれの項目について、9人のジャッジが、10点を満点とした0.25点刻みの点数をつけて評価したものがPCS計算の元となります。
(採点表で9人のジャッジがつけた点数が並んで示されていますので興味を持った方は試合後に公表される採点表を見てみてください)

 PCSは有力選手なら各項目平均して7点台。上位選手なら8点台を揃えてきます。とりわけ素晴らしい部分には9点台が出ることもあります。