食べるのが大好きなラグビー選手が多くいる中でも“大食い”と自負する秋山陽路選手。それゆえに体作りに失敗! 救ってくれたのは、同じポジションの後輩とのこと。一方、他チームで活躍する弟にも刺激を受けて努力を続けると話す姿から、素直でおおらかな性格がわかりました。

―大食いキャラ。でも、食べすぎて体作り失敗
食べることが大好きです! 好き嫌いもなく、自分が満足するまでずっと食べていられます。遠征先のホテルでの食事も、時間いっぱいずっと食べています(笑)。お好み焼きは最大で8枚食べたことがありますし、ラーメンの替え玉3回くらいは普通です。あとはお米も大好きです! ご飯を食べて大きくなりました。ベストおかずはチキン南蛮です。

ラグビーでは体を大きくするために「無理してでも食べろ」って言われる人は多いと思うんです。だけど僕は自ら何かしら口に入れていたので、「お前は控えろ」「追い込みがいがない」って高校の先輩に言われてました(笑)。

社会人になって外国人選手と日常的にプレーをするようになると、体格差やパワーの違いに驚きました。大学では外国人のチームメートが一切いなくて、チームの中ではコンタクトは強いほうかなと思っていました。社会人では一切通用しなかったですね。また、同じポジションに外国人選手が多くて、なかなか試合に出られず悔しい思いもしました。

そこで、外国人に負けないようにパワーをつけようと以前よりも食べるようにしました。自分の長所は、ボールを持って相手に突進していくプレーができること。そのプレーが好きでこだわりを持っていたんですけど、体が重くなってスピードがなくなってしまったんです……。

自分のしたいプレーができなくなったので減量しないといけないと思い、同じポジションでストイックな後輩の近藤(同チームの近藤雅喜選手)に相談したら「僕が今日からみっちり教えます」と協力してもらえることになりました。近藤は本当に食生活をきっちりしていて、余分なものを食べないんですよね。

後輩のアドバイスで食事制限をして-10kg
まずは大好きなごはんを少なくすることから。それまでは、毎日1食につき3合食べてました(笑)。それをやめて、炭水化物は2日に1回だけOKに。ただし1食に3合はやめて、1合とちょっとに。あと、揚げ物はダメ。これが近藤にキツく言われた決まり事です。

でも、もともとが大食いなので、最初は物足りなさすぎて……。どうしてもおなかが空いたときはスルメをかじって我慢することもありました。お菓子をつまんだら、すぐ体重に出るんですよね。体重は、毎日朝と練習前後に測っていたので、何を食べると体重に出るかが知ることもできました。その中でスルメが一番体重に影響が少なかったし、すごくかむのでおなかも適度に満たされました。

我慢している僕を近藤が見て、“チートデイ”といって満足するまで食べていい日を10日に1回設定してくれたんです。その日は揚げ物以外はたくさん食べていいんです。

その期間に慣れると、チートデイの頻度は2週間に1回と伸ばす。これを2カ月続けたら、10kg絞ることができました。トレーニングは今まで通りだったので、食生活を見直すだけで「こんなにも違うんだ。やっぱり食べ過ぎだったんだ」と反省しました(笑)。

体を絞ってからは動きも前とは違ったキレが戻ってきて、自分の得意なプレーもできるようになりました。今シーズンは試合にも出られるようになりました。僕のポジション的に、サイドからボールを中に入れるとき(ラインアウト)の空中戦では持ち上げられるジャンパーの役割もあるんです。

減量前は、チームメイトからもジャンプするときに「もっと跳んでくれよ」「重いな……」と言われたこともあったんですけど、今は何も言われなくなりました(笑)。

減量中、しんどいときは近藤が「もうちょっとで結果出るので頑張りましょう」って声を掛けてくれたのはとても励みになりました。あとは、やっぱり「試合に出たい」という一心があったから頑張れました。何かを変えなければ、現状は変わらないんですよね。

年下も自分が成長するには貴重な存在
僕の弟(秋山大地選手)もトヨタ所属(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)で選手をしています。弟も僕と違ってストイックなんですよね。大学生の頃、帰省したときに一緒にコンビニへ買い物に行ったことがあるんです。僕は何も考えずにポテトチップスやお菓子をカゴに入れてたけど、弟は小さいスイーツを手にとりながら成分表をじっくり見て、「やっぱりやめておこう」って棚に戻したんです。その姿を見て、僕はそっとポテトチップスを元の場所に戻しました……。その頃から「食生活を考えないとあかんかな?」というのは頭にありましたね。

弟も減量のアドバイスをしてくれた近藤も年下ですが、学べることは素直に吸収します。まあ、僕は……きっと彼らにとっては反面教師です(笑)。ですが、2人ともポジションが同じでライバルでもあるので、負けていられないという気持ちもあります。

特に弟とは周囲からずっと比べられてきました。それでテンションが下がることもありますけど、逆に刺激をもらうことも多いです。弟が出る試合をよく見ますが、いいプレーをしてたら「あいつ、こんなプレーできるんや」って感心していると同時に「オレはそれ以上のことをやってやろう」って思います。

両親のおかげでトップリーグの選手になれた
両親は、僕や弟がトップリーグで選手をしていて喜んでくれているので、それがラグビーをしていて一番よかったことですね。とくに僕と弟が対戦した試合はとても喜んでくれました。あと、僕は勉強が苦手でスポーツだけしかやってこなかったので、就職できてホッとしてるはず(笑)。

中学までは野球をやってたんですけど、全然うまくならなくて。本人は忘れてるかもしれないけど「アンタあんまりセンスないな」って母親に言われたこともありました(笑)。なので、高校では違うスポーツをしようと思っていたんです。父親も高校でラグビーをしていたので、父親の母校に進んで始めました。

僕の地元・徳島は当時ラグビーがあまり盛んではなく、高校でも経験者が1、2人いたかなってくらい。だから努力したぶん上手になって試合に出られて、2、3年生では全国大会にも出場することができました。

試合に出て勝つことがうれしくておもしろくて、ラグビーにハマりました。あとはもっとうまくなりたい、もっと強くなりたいと高い目標をどんどん設定することで、トップリーグの選手になれたと思ってます。母親に「野球のセンスない」って言われたのが良かったのかもしれません(笑)。

野球で外野を守っていたので、ボールの落下地点に入る判断が身につきました。ラグビーのキックオフでのボールキャッチに生かされていると思います。

選手名鑑をチェックして、ぜひ“推しメン”を作って
ラグビーを楽しむために、まずは“推しメン”を作ることが一番いいと思います。僕の妹は選手名鑑を買ってきて、ずっと読んでました。田村優選手(キヤノンイーグルス)の大ファンなんですけど、2、3年前のサンウルブズの試合を見に行って、ちゃっかりツーショットを撮ってました(笑)。

“推しメン”がいると試合を見たいと思うはずですし、自然とルールも覚えられるはずです。妹のように、写真を撮れるチャンスもあるかもしれません!

僕自身の推しポイントですか? パーマ頭とひげですかね。パーマは、大学の時に禁止されていたのでその反動でかけちゃいました。今も「社会人にふさわしくない」と言われることもあるんですけど……(笑)。ひげはもみあげからあごまでつなげて、小顔効果を狙ってます!(笑) 参考にした人はいないんですけど、TOKIOの長瀬(智也)くんが好きで、ワイルドさに憧れがあります。あとは、僕がボールを持ってる時はぜひ注目してほしいです!

秋山陽路(あきやま・ようじ)1992年2月6日生まれ、徳島県出身。ポジション:ロック(LO)、189cm/110kg。貞光工業高校(現:つるぎ高校)に入学し、父親の勧めでラグビー部に入部。その後、大阪体育大学に進学。卒業後の2014年よりHonda HEATに所属。高校時代は主将を務め、高校日本代表にも選出経験あり。普段は掃除嫌いだが、スイッチが入ると止まらなくなる。

※文中に登場した近藤雅喜選手は、教えてラガーマンVol.2で紹介しています! こちらも併せてご覧ください。