一般市民が動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)に投稿した質問に、米民主党の大統領候補8人が直接答えるという形式の討論会が米東部時間23日夜(日本時間24日午前)、CNNとYouTubeの共催で開かれた。世論調査の支持率でトップを走るヒラリー・クリントン上院議員は民主党を代表して語るというスタンスを随所で見せて自信の程を示し、また支持率2位のバラク・オバマ上院議員も、重要な支持基盤のYouTube世代に若々しさと将来への希望を強調。支持率では遅れをとっている他候補も、YouTube世代の支持獲得の機会と、それぞれの人柄や政策姿勢をアピールした。(gooニュース編集部、一部のリンク先はすぐ音が出ます)

一般からの投稿ビデオに候補たちが答えるという初の形式の討論会は、サウスカロライナ州チャールストンの大学で開かれ、CNNが生中継した。あらかじめ投稿された約3000本の質問ビデオから、CNNは39本を選択。司会したアンダーソン・クーパーは冒頭で、仮装したり、子どもに無理な質問をさせたり、組織票的な同一内容のビデオは基本的に除外したと説明。それでも、「税金が高すぎる。このギターにも税金がかかってる」と歌う男性や、「私の息子が安心して暮らせるようにしてくれますか」と懇願する雪だるまの親子など、YouTubeらしいビデオも多く選ばれた。また、強烈なテネシーなまりのお笑い2人組が「主要メディアはやたらと、アル・ゴアのことを気にしてますよね。出るのか出ないのか。ゴアの体重がどうとか、本がどうとか。そこでみなさんに聞きたいんですが、みなさんはそれを見て傷ついてるんですかね」とまくしたてるビデオも紹介され、一番の笑いを誘った(司会は「傷ついてる人いますか、いませんか」と流して、「正式」には取り上げなかった)。

候補たちが答えるべく取り上げたテーマは通常の大統領討論会とあまり変わらず、イラク戦争、人種差別、女性の権利、医療保険、最低賃金、同性結婚、地球温暖化、イランや北朝鮮との外交関係など多岐にわたった。同じ民主党の候補同士ということもあり、誰もがイラク撤退や国民皆保険、税制改革、政教分離を支持するなど、大きな政見上の違いはなかった。

一方で、高名テレビキャスターなどが候補者に質問する通常のテレビ討論会と違い、候補たちは「長男がイラクで戦死した。私もすると思う。下の息子たちを戦死させたくない。イラク撤退はいつになるのか」と質問する父親や、医療保険がなくて適切な治療が受けられないという多くの患者や家族、あるいは「私たちの結婚を認めてくれますか」と尋ねる女性同士のカップルの問いかけに、カメラと聴衆を前にその場で反応して答えるという意味で、新鮮なものとなった。

イラク戦争については、「民主党はイラク戦争反対を訴えて中間選挙で勝ったのに、何も変わっていない。私の息子は米兵として、2度目のイラク任務される。民主党は、良心より政争を優先しているのか。イラク敗戦の責任を押し付けられるのがイヤで、撤退させようとしないのか。あと何人の米兵が死ななくてはならないのか」と質問する女性のビデオが取り上げられた。クリントン議員ら複数の候補は、共和党やイラク政府の非協力を批判したが、最も左寄りとされるクシニッチ下院議員は「民主党と共和党の政治取り引きのせい」と自党を糾弾した。

撤退の時期については、ニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事が「年内」と主張するのに対し、上院外交委員会の有力者ジョセフ・バイデン議員は「それは軍事的に不可能だ。まずイラクの政治システムを変えて、連邦制を導入する必要がある」と反論。クリントン議員も「きちんと撤退するには時間がかかる。問題は、現政権と国防総省が撤退の計画そのものを策定していないことだ」とブッシュ政権を批判。一方で、2002年にはまだ中央政界入りしていなかったオバマ議員は、他の候補たちが対イラク武力行使を容認した上院決議に賛成したことを言外に指摘して、「私は最初からこの戦争に反対だった。侵攻時にはあまりにも準備不足・注意不足だった。それと逆に、撤退するときこそ、細心の注意を払うべきだ」と主張し、他候補との違いを強調した。

外交についてはブッシュ政権が敵視政策をとってきたイラン、シリア、キューバ、ベネズエラ、北朝鮮などの指導者たちと任期1年目に直接対話するかという質問が取り上げられた。オバマ議員は「その国と話をしないことが、その国に対してある種の罰になるなんていう、ばかげた考えを現政権は抱いている」と批判し、対話の用意があると意欲を示した。一方で、クリントン議員とジョン・エドワーズ前上院議員は「大統領がいきなり会いに行ってプロパガンダに利用されるのではなく、大統領特使など高官級の交渉を重ねて、相手の意向を図っていく必要がある」と述べ、慎重姿勢を強調した。

温暖化対策や医療保険改革、人種問題について聞かれると、オバマ議員やエドワーズ氏は繰り返し、「ロビイストから金を受け取らない政治に変える」「エネルギー大手や保険大手、ウォール街などの特殊利益グループと戦う」と強調。貧困対策や税制についてバイデン議員は、高額所得者や企業を優遇する税制を改革するべきだと主張した。また温暖化対策としての「脱炭素」政策については、エドワーズ氏とクリントン議員が原子力発電の放射性廃棄物処理に慎重姿勢を示したのに対して、オバマ議員は原発増設の可能性を探るべきだと主張した。

公立教育の衰退については、「みなさんの子どもたちは公立学校ですか、私立学校ですか」との質問が紹介された。「クリントン、オバマ、エドワーズ候補たちのお子さんはみんな、私立学校ですよね」と司会が言うと、3人そろって声高に「公立です!」と訂正する一幕も。

また、「大統領になったら4年間、最低賃金しかもらえないとして、大統領になりたいですか?」という質問もあり(米国の最低賃金は近く時給5.15ドルから5.85ドルに上がる)、「子どもがいるから無理」などとクリストファー・ドッド上院議員やバイデン議員が認める一方で、クリントン、エドワーズ両氏は「Yes」と返答。そこでオバマ議員が、「すでに資産がある皆さんは最低賃金でもいいかもしれないが、ふつうのアメリカ人は資産がない」と指摘すると、「金があるのは君だろう」と選挙資金集めに大成功している同議員に他候補が釘を指す場面も。

保守層からは「リベラルすぎる」と敬遠され、リベラル層からは「保守すぎる」と批判されているクリントン議員は、「あなたはリベラルですか」という質問に、「『リベラル』というのはもとは『自由を支持する』という意味だったのに、残念ながら今では『金のかかる大きな政府』という意味にゆがめられてしまった。なので私は、アメリカらしい『進歩主義』という言葉が好きです。個人の権利や自由のために戦う、現代の進歩主義者のつもりです」と返答。

「女らしさが足りないと言われているが?」という質問には、苦笑しつつ「女性候補以外の何者にもなり得ないので、ようやく(女性の社会進出を阻む)『ガラスの天井』を打ち破れるかもしれないと、興奮している。しかし女性だから出馬するのではないし、米国民は性別や人種によって大統領を選ぶのではなく、最もふさわしい能力の人物を選ぶと信じている」と返答。「ブッシュ一族とクリントン一族の支配が続きすぎてると思いませんか」との質問にも、「ブッシュが2000年に当選したのは確かに問題だと思う。別の人が当選したはずだと思ったのに」と会場を笑わせた上で、「夫の業績を誇らしく思うが、私は自分自身に資格があると思うから出馬した」と自信を示した。

共和党の候補たちが一般からのビデオ質問に答える同様の討論会は9月17日に予定されている。

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