あの演説はやはり、歴史に残るかもしれない感動的なものだった。同じように感じたアーティストたちが集まって、やはり感動的な曲と、ミュージックビデオを作った。こういうのが出てくるのが、アメリカの懐の深さ。アメリカ大統領選の面白さ。そしてバラク・オバマという人の、人を感動させる力なのだと思う。(gooニュース 加藤祐子)

各候補の政策をまとめていたら、この曲のことを伝えるニュースが目に入った。そしてビデオを観て、聴いて、ちょっと涙ぐんで、どうしてもこれをご紹介したくなった。

これは、バラク・オバマ上院議員のあの感動的な、しかもニューハンプシャーで負けたあとの演説を、曲にしたものです。もとの演説の映像と全文テキスト(英語)はこちら

そしてこの演説を、演説の言葉をそのまま歌詞にして、R&Bぽい曲にしたのが、これ。

The Official Yes We Can Song Official Video - Obama's Speech by will.i.am
.

一見の価値ありです。

ヒップホップ・R&Bグループ「Black Eyed Peas」のwill.i.amが公式サイトで、説明している。

「過去2回の選挙の結果にがっかりしていて」「今回も誰かのために早いうちから何かをしたいと思っていたんだけど、なかなか決められなくて」「自分の中で自然と結論が出るまで待つつもりだった。そうしてたら、ニューハンプシャーがやってきて……僕は夢中になった。感動した」

「ただ『黒人がどうの』ってことじゃなく、自分が『人間』だっていう『人としての』問題で、自分がアメリカ人だってことの問題で。あの演説で、マーティン・ルーサー・キングやケネディやリンカーンを連想した。いま自分たちが手にしているもののために戦ってくれた全ての人たちのことを思った。アメリカがどうあるべきかを、思った。自由とか。平等。そして真実……今のこの国にはそれがない」

will.i.amはこういうことを、もっと詩的に、もっと長く、自分のインスピレーションを語っている。

演説の言葉が自分にしみ込んだ一週間後、曲が浮かんで、演説をそのまま曲にしようと思いついた。そして友達に声をかけて、友達が友達に声をかけて、実際の収録は2日で済んでしまったそうだ( will.i.amは、オバマ陣営には直接コンタクトをとってないという)。

ハービー・ハンコック、ジョン・レジェンド、スカーレット・ヨハンソン、エステロ、ニック・キャノン、ヒル・ハーパー、タリン・マニング、カリーム・アブドル・ジャバー……。

YouTubeにアップされたのが2月2日。公式サイトとYouTubeで合わせるとすでに600万回以上、流れていることになる。

ビデオクリップを観ながら、聴きながら、ちょっと涙ぐんでしまった。聴きながら唐突に、ボブ・ディランを連想したりしながら()。あと数多のプロテスト・ソング。自分が遅く生まれたせいで経験できなかった分、美化してしまっている「60年代」への憧れを思い出したりしながら(時代は後だけど、Neville Brothersとか)。

それくらい、あのときのオバマ氏の演説は、たとえばケネディ大統領の就任演説のあの有名すぎる「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country(国が自分のために何をしてくれるかと訊くのではなく、自分が国のために何をできるのか自問しよう」と同じくらい、感動的だったから。しかもケネディ大統領のこの名調子がかなり理屈っぽいというか修辞的なのに比べて、オバマ氏のストレートでシンプルなこと。

Yes we can! できる、私たちにはできる。だいじょうぶ、できる。もちろん、できるよ。

——こんな感じ。


歌になった部分はたとえば、こういうところ。


「Yes, we can.
それは、この国の運命を宣言した建国の文書に書き込まれた信念だ。

Yes, we can.


それは、真暗な闇夜を抜けて自由への道を切り開いた奴隷や、奴隷廃止活動家たちがささやいた言葉だ。

Yes, we can.


それは、遠い岸辺を出発した移民たちや、容赦ない未開の地を西へ西へと進んだ開拓者たちが、歌った歌。

Yes, we can.


それは、組合を作った労働者たちの合い言葉。選挙権を求めた女性たちの合い言葉。われわれの新しいフロンティアに月を選んだ大統領のかけ声。そして山の頂きへとわれわれを導き、約束の土地を指し示してくれたキングの言葉だ。

Yes, we can. 私たちにはできる。正義と平等を、と。Yes, we can. 私たちにはできる。機会と繁栄を。

Yes, we can. 私たちにはできる。この国を癒し。Yes, we can. 私たちにはできる。この世界を修復することを。Yes, we can. 私たちにはできる。

アメリカで何かが起きている。私たちはそれを忘れない。政治が言うほど、私たちは分断していないと。私たちはひとつの国民、ひとつの国なのだと。アメリカの歴史の新しい偉大な一章を、私たちは一緒にはじめる。その最初の言葉は、三つの言葉だ。この三つの言葉が、海岸から海岸まで、ひとつの海からもうひとつの光り輝く海まで、国中に響き渡るのだ。

Yes, we can 」

「これから長い戦いが続く。それは分かっている。けれども忘れないで欲しい。どんな障害が行く手を阻もうとも、変化を求める何百万と言う人々の声の力に抵抗できるものなど、何もない。

そんなことできないと、皮肉な声が聞こえる。皮肉な疑いの声はこれからどんどん大きく響き渡るだろう。もっと現実的になるよう言われている。この国の人々に偽りの期待を与えるなと、そう警告されてきた。

しかしアメリカというこの予想外の物語において、希望が偽りだったことなど、一度もないのだ」


そしてこの演説に感動して、ミュージシャンや女優や俳優やNBAスターが集まって、こういうビデオを。

政治家の演説にミュージシャンが感動して、こういうのが出てくるアメリカ。こういうところがさすがアメリカだと思うし、オバマ議員が今のこの時点までやってきたその理由を全て物語っていると思うし、まさにこれが今回の選挙のぞくぞくするほど面白いところだ。

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☆追記
「聴きながら唐突に、ボブ・ディランを連想したりしながら」
これを書いたときは知らなかったのだけど、ビデオクリップの監督はジェシー・ディラン、まさにボブ・ディランの息子だった!

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