米アラスカ州のサラ・ペイリン知事が11日から3回にわたり、共和党の副大統領候補に指名されて初めて、ニュース番組のインタビューを受けました。2週間近くも、記者の質問に答えなかったという異例ぶりと合わせて、「72歳の大統領候補の副大統領候補でなければ、この人の発言をこんなにじっくり吟味する必要などなかったはずなのに」という思いがやたらとこみ上げてくる内容でした。(gooニュース 加藤祐子)

このコラムを読んでくれている人に、「署名入りで『コラム』と銘打っているのだから、自分の好き嫌いが出るのをそんなにイチイチ断らなくてもいいのでは?」と言われました。そんなことを言われてしまうくらいに、ペイリン知事への筆鋒がなかなか中立になれないので、ABCニュースの単独インタビューについては、あえていわゆる「論評抜き」というスタイルにしてみようと思います。「論評抜き」と言ったところで、インタビューのどの部分をどう抜き出すかで、おのずとこちらの主観は出てしまうわけですが。

というのも、じっくり観て聴いて読めば読むほどこれは、「もしジョン・マケイン候補が大統領になった後、万が一のことがあったら、彼女が世界唯一の超大国の大統領になるのだ」という厳然とした事実がなければ、そんなにじっくり聴いて読む価値のあるインタビューとは思えないからです。詰め込みで丸暗記したことを繰り返しているか、自分の業績を強調するか、政策よりは情緒に訴えるかのいずれかだったように思います。

しかも、最初から彼女を好感している人はこれでさらに彼女が好きになり、最初から眉をしかめている人はこれでさらに眉間の皺を深めるだけのことでしょう。問題は、どっちつかずだった人がこのインタビューを観てどう思うか、なのですが。

……という私の主観はさておき、以下はペイリン知事発言の一部要約です(カッコ内の斜体字はABCアンカー、チャールズ・ギブスン氏の質問)。

1日目  自信とロシアとブッシュ・ドクトリン

・(副大統領になる自信があると、アメリカ国民に面と向かって言えるか)自信がある。副大統領候補にと乞われたとき、ためらいはなかった。(それは自信過剰では?) 自分は準備ができていると自信があるし、この国を改革し戦争に勝つという明確な任務を前に、ひるんではいけないのだと確信している。

・外国の指導者に会ったことはない。知事になって初めて外国へ行った。

・ (あなたは以前、教会で「この国の指導者たちは米兵を、神から与えられた使命のために派遣している」と発言した。この国は聖戦を戦っているのか?) それはリンカーンの言葉で、私は神が何を考えているか勝手に推測など決してしないが、私もリンカーンと同様、常に自分が神が側にいると願っている。私の長男は今日、イラクに派兵されていった。過激なイスラム・テロリストとの戦いは正しいと思っている。しかし戦争は大嫌いだ。早く終わって欲しい。戦争をやめる時は、イラクで勝利した時だ。(しかしあなたは以前、イラク戦争について「ここには意図があり、それは神が意図されたものだ」と発言している) この世の中には意図があって、その意図は善いものだと私は信じている。

・(グルジア情勢について) ロシアから目を離してはならない。ロシアから目を離してはならない。ロシアから目を離してはならない{筆者註・実際に3度、同じフレーズを繰り返した}。アラスカからロシアはとても近い。目で見える距離だ。(近いからといって、ロシアのグルジア対策がどう分かるというのか)世界は狭くなっているから、ロシアをはじめ諸外国と良好な関係を保つのが大事だと言いたかった。冷戦を繰り返してはならない。グルジアとウクライナのNATO加盟を支持する。(とするとロシアがグルジアを侵攻したら、ロシアに宣戦布告しなくてはならなくなるのでは?)NATO加盟国なら、お互いを守らなくては。(グルジアが侵攻されたらロシア相手にアメリカが開戦する価値があると) 小さい国が大国に侵略されたりしないよう、監視し続けなくてはならない。必要ならばロシアに経済制裁を科すという、グルジア支援の仕方もある。

・(イランの核開発について、もしイラン核武装の可能性にイスラエルが先制抑止攻撃をすることにしたら?) 私たちはイスラエルの友人であって、イスラエルが自国の安全保障のため何を選択するかについて、とやかく言うべきではない。(イスラエルがイラン攻撃が自衛のため必要だと判断したら、合意するか協力するのか)イスラエルが自国の安全のため何をしなくてはならないかについて、とやかく言うべきではないと思う。(イスラエルが自衛のために、イランの核施設攻撃が必要だと感じたなら、それはそれで良いのか)イスラエルが自国を守るためやむを得ない手段について、とやかく言うべきではない。

・(ブッシュ・ドクトリンに同意するか?) どの側面についてか? (どういう意味だと思うか?) 彼の世界観のこと。(ブッシュ・ドクトリンとは、アメリカを攻撃するかもしれない相手に抑止的な先制攻撃をする権利があるという方針のこと。同意するか) 大統領として第一の責務は、アメリカを守ることだ。どこかの国がアメリカを攻撃するつもりだという正当で十分な情報があるなら、国を守る権利は十分ある。むしろ大統領は、国を守る責務がある。


2日目  温暖化と石油採掘

・(温暖化は人為的なものではないと思うか)確かに人間の活動は寄与している可能性が高いと思う。(以前は人為的なものではないと明言していたが、マケイン候補の主張に合わせたのか)気温は上昇している。マケインと私はこれを食い止めるために働く。(人為的なものと考えているかどうかが大事なのだが)だから、人間の活動が気候変動に一部寄与していると言っている。(ということは、あなたはマケイン候補に合わせて立場を変えたのか)人間活動は全く無関係だという絶対的な科学的証拠があると私が発言したなど、証拠をみせてほしい。私が言っていたのは、地球の気候は周期的に、寒冷期と温暖期に変化するものだということだ。

・(アラスカの自然保護区ANWRで石油採掘をすべきと考えるか? マケインは反対しているが)私はもちろん賛成だ。マケインと私は意見が違うが、これから一致に向けて話しあっていく。

3日目  イヤーマークとヒラリーと中絶

・(マケイン候補の主要公約のひとつは自治体へのイヤーマーク(特別交付金)の廃止だ。賛成するか)もちろん。アラスカがイヤーマークをなくした最大の象徴は、「どこへも行かない橋」だ。アラスカはこの橋建設事業への連邦交付金を断った。(副大統領候補に選ばれて以来、そのことを言い続けているが、実際には最初は橋の建設に賛成していた。連邦議会が交付金中止を決めた後、州政府が建設費を負担しなくてはならないと判明した後に、反対に転じている)アラスカが必要だと思えば橋はアラスカが造る。国全体が負担する必要はない。(連邦議会にそうは言わなかった)連邦議会が結局は、アラスカに交付金を支給することにしたからだ。交通整備を目的に連邦交付金が支給されたので、別の目的に使った。橋はいらないと言ったのだ。

・(アラスカ州は人口1人あたり231ドルの連邦交付金を受けている。オバマ候補地元のイリノイ州は1人あたり22ドルだ)けれども私が知事になってから、大幅に減っている。(あなたは今年、知事として、カニの繁殖習性に関する研究費として連邦政府に320万ドルを要求している。それこそマケイン候補が批判するやり口ではないのか)州の海洋資源のために必要な研究で、何より大事なのは政府資金をロビイストを使って裏口で要求するのではなく、堂々と表立って要求したことだ。

・(オバマ候補はクリントン上院議員を副大統領候補に選ぶべきだったと思うか) いまごろ後悔していると思う。

・(妊娠中期までの中絶権を合法化したロー対ウェード判例は覆すべきと思うか) そう思う。連邦ではなく州政府が判断すべき問題と思う。私は「プロ・ライフ(生命支持、中絶反対)」だ。しかしほかの人の意見も尊重する。(マケインは強姦や近親相姦の場合における中絶を容認している。あなたは、母体に危険がある場合のみ認める立場か) 個人的な意見としては、そうだ。けれどもマケインの立場も分かるし、ほかの意見をもつ人たちの思いも分かる。

・(公立図書館から本を禁止しようとしたという噂について) 本を禁止したこともないし、禁止したいと思ったこともない。ただ私は市長になったとき、もしそういう訴えがあったらどう対応するのか、市の方針を問い合わせただけだ。

・(「妹と離婚係争中だった市警官の罷免を求めて公安委員長に働きかけ、応じなかった委員長をクビにした」と取りざたされている疑惑について)知事に任命されたとき、警備陣に何か懸案事項はあるかと質問されたので、家族を脅迫しているこういう人物がいると説明した。公安委員長に伝えるべきだと言われたので、そうした。しかし私も夫も、誰かをクビにするよう委員長に圧力をかけたりしていない。委員長を解任したのは、警察部門に求めていた成果が出ていなかったからだ。

・(ブッシュ経済政策をどう変えるか。主要方針を3つ挙げてほしい) おっしゃるように経済は弱っている。失業率6.1%というのは受け入れ難い。政府は民間部門の邪魔をせずに、民間が雇用を作り出し、国民がローンを払い子供を大学に行かせられるようにいなくてはならない。原則は、政府を改革し、全ての問題を解決するのは政府ではないと認識することだ。(それはブッシュ経済政策と同じだ。何を変えるつもりか) 政府機関やファニーメイとフレディーマックのような政府系機関のムダをなくさなくてはならない。国民は失業を心配し、医療費が払えないことを心配している。(つまりブッシュ経済政策をどうやって変えるかというと、3つのポイントに絞ると) 減税と、支出削減と、政府系機関や監督機関の改革。(支出削減とは具体的に言うと?)どの省庁にも、効率改善できるところはある。それを探して行く。一方で、手を付けるべきでない事業もある。退役兵への恩給などだ。国に尽くした退役兵の面倒はきちんとみなくてはならない。(退役兵の恩給には手を付けないとなると、それは連邦予算の2割だ。社会保障やメディケア(高齢者向け医療保険制度)、メディケイド(低所得者・障害者むけ医療扶助制度)などの資格授与制度はどうするのか。そこで支出削減できるか) どの政府系機関にも、効率向上できるところはあると確信している。(資格授与制度と政府系機関は関係ない)しかし政府系機関の無駄遣いはたくさんある。官僚制度が旧態依然になると、今のような状態になる。効率化を進めなくてはならない。


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<主な演説>
マケイン共和党候補の指名受諾演説 全文翻訳
オバマ民主党候補の指名受諾演説 全文翻訳

6月時点のマケイン演説全文翻訳
民主党候補が確定した6月時点のオバマ演説全文翻訳

候補たちの政策比較

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