関門海峡を挟んで下関の対岸に位置する北九州市の門司港(もじこう)は、国際貿易で栄えた港町。1889年に開港し、最盛期には年間600万人もの乗降客で賑わいました。

その名残は、明治から大正時代にかけて建てられた洋風建築に。駅や港の周辺は、門司港レトロ地区として整備され、古き良き時代をしのぶノスタルジックな港町として人気を集めています。

門司港散策の起点は、JR門司港駅。1914年に旧門司駅として開業したネオ・ルネッサンス様式の木造建築で、1988年には鉄道駅舎として初となる国の重要文化財に指定されました。

6年にわたる補修工事を経て、2019年3月にグランドオープン。旧三等待合室にスターバックスが入るなど、昔なつかしい雰囲気を残しつつ、装いも新たに生まれ変わっています。ネオ・ルネッサンスという西洋の建築様式でも、どこか和の雰囲気が漂っているのが面白いですね。

門司港の主要なレトロ建築群は、駅から徒歩15分以内の狭い範囲にまとまっています。

駅からすぐの場所にあるグレーの木組みの建物が、旧門司三井倶楽部。三井物産の社交場として1921年に造られたもので、幾何学模様のアールデコ調の飾りが施された内装は、大正モダンの美意識を感じさせます。

ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインが公演のために来日した際、この旧門司三井倶楽部に宿泊。2階にはアインシュタインが宿泊した部屋を再現した「アインシュタインメモリアルルーム」のほか、門司出身の女流作家・林芙美子の記念室もあります。

門司港レトロの象徴として、たびたびパンフレットなどに登場するのが、旧大阪商船。1917年建造の大阪商船門司支店を修復したもので、八角塔と鮮やかなオレンジの外壁が印象的。塔は当時、灯台の役割も担っていたといいます。

現在1階は、「わたせたいぞうギャラリー」と「門司港デザインハウス」として使われています。

実は、門司港には日本全国でも珍しい橋があるのをご存じでしょうか。関門海峡を見渡せる場所にある「ブルーウィングもじ」は、日本最大級の歩行者用跳ね橋。

全長は108メートルあり、1日6回(10:00、11:00、13:00、14:00、15:00、16:00) 水面に対し60度の角度まで跳ね上がります。

目の前で橋が開く瞬間は、なかなか見られないもの。ぜひ時間を合わせて、橋が跳ね上がる場面に立ち会ってくださいね。「橋が閉じてから最初に渡ったカップルは、一生結ばれる」という言い伝えがあり、「恋人の聖地」にも認定されています。

門司港レトロを上から楽しむなら、門司港レトロ展望台へ。

門司港レトロでは異色のこの建物は、黒川紀章が設計したタワーマンション。高さ103メートルの展望台からは、門司港レトロはもちろん、関門海峡や対岸の下関まで、素晴らしいパノラマが楽しめます。

実際に歩いてみると、とにかくのんびりとした雰囲気の門司港。「西洋風のレトロ建築が並ぶ港町」という点では、横浜や神戸に通じるところがありますが、門司港は、町全体がタイムスリップしたかのような、ひっそりとしたたたずまい。

港町らしい開放感と、小さな田舎町の静けさとのどかさを兼ね備えていて、歩いているだけでも心癒されます。関門連絡船乗り場から小船に乗れば、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘で有名な巌流島や、下関にも足を延ばすことができ、楽しみ方も多彩。

異国情緒漂う門司港レトロで、国際貿易の要として栄えた時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。