エストニアの首都タリン。ハンザ都市として交易で栄えた中世の面影を色濃く残す旧市街は、まるごと世界遺産に登録されています。そんなタリンの旧市街を見渡す絶好のスポットが、聖オレフ(オレヴィステ)教会の塔。

城壁に囲まれた旧市街の北にひっそりとたたずむ聖オレフ教会は、ノルウェーの聖人王を祀った教会で、13世紀なかばにはすでに記録に登場しています。15世紀に大幅な改修が行われたものの、何度か落雷の被害を受けて修復され、1840年にほぼ現在の形となりました。

塔の高さは124メートルに及び、これは旧市街で最も高い建物。15世紀にはなんと159メートルもの高さがあり、当時は世界一高い塔だったともいわれています。

教会の建設に関しては、面白い伝説が残っています。

教会の名前にもなっているオレフとは、教会建設に関わった巨人の名前。彼は、世界一高い塔をもつ教会を造ろうという市民の要望を受けて、教会建設を引き受けました。オレフの要求した報酬は莫大なものでしたが、教会が完成する前に彼の名前がわかったら報酬は1ペニーでいいという条件を付けたのです。

市民たちは力を合わせて彼の名前を探り、ついには彼の妻が歌う子守歌から巨人の名前を突き止めました。あとは塔の上に十字架を架ければ完成というとき、市民がこう叫びました。「オレフ、十字架が傾いてるぞ!」。

名前を突き止められたことにショックを受けたオレフは、バランスを崩して塔から落ち、石となってしまいました。そんなオレフを哀れんだ市民たちは、この教会に彼の名前を冠することにしたのです。

今ならとても信じられない非科学的なエピソードではありますが、中世の時代ならそんなことがあっても不思議ではない気がしてきませんか。とにもかくにも、そんな伝説が生まれてしまうほど、聖オレフ教会の塔は当時の建造物としては抜きんでた高さを誇っていたのです。

塔の上へ行くには、狭い石の階段を一段一段のぼらなければなりません。その数なんと250段以上。

しかし、そのハードな道のりの先には、タリンの絶景が待っています。ビルでいうと20階以上に相当するという塔の上からは、世界遺産の旧市街を含むタリンの街並みが一望できます。

オレンジや赤茶の三角屋根の家々のあいだから、教会や市庁舎の塔が顔を出すタリンの旧市街。中世そのままの街並みは、高いところから見るとその美しさがさらに引き立ちますね。

旧市街を囲む城壁の要所要所にも見張り用の塔が建っていて、メルヘンチックなムードをさらに盛り上げています。かつての城壁は2.5キロメートルに及び、1.85キロメートル相当が今も残っています。

旧市街を歩いていてもその様子がなかなかわからない、高さ24メートルの丘、トームペアの全景もここからならばっちり。トームペア城や大聖堂、アレクサンドル・ネフスキー聖堂といった立派な建造物がそびえるトームペアは、タリン旧市街の風景に見事なアクセントを加えています。

一方、タリン港のほうに目を向けると、北にフィンランドのヘルシンキを臨む、バルトの玄関口としてのタリンの表情が見えてきます。

旧市街は中世の面影をとどめながらも、新市街には近代的な建築物が増え、発展を見せる港町・タリン。

そんなタリンの新旧の魅力が感じられる、聖オレフ教会の塔からの眺め。タリンに来たら見逃すわけにはいかない絶景です。