「バルト三国」と呼ばれるエストニア・ラトビア・リトアニアのうち、もっとも南に位置するのがリトアニア。

日本ではまだまだ馴染みが薄く、「バルト三国やリトアニアと聞いてもなんだかピンとこない」という人が多数派ですが、首都・ヴィリニュスの旧市街はまるごと世界遺産に登録されています。

さらに、ヴィリニュスの近郊には湖に浮かんでいるかのような美しい古城があるのです。

それが、ヴィリニュスからおよそ30キロメートルのところに位置する、トラカイ城。

ガルヴェ湖上に浮かぶ島の上に築かれた城で、水面に映える赤レンガの古城という共通点から、ポーランドの世界遺産の城になぞらえて「小さなマルボルク城」とも呼ばれます。ヴィリニュスからバスでおよそ30〜50分と、ヴィリニュスからの日帰り旅行にぴったりです。

トラカイのバスターミナルから城までは、およそ1.5キロ。ほっとするような田舎の風景を楽しみながら湖に沿って歩いていけば、意外にあっという間です。

トラカイ城はもともと、14世紀に侵略を防ぐ目的と、祭事などを執り行う目的から、中世リトアニアの君主・ケストゥティス公とその息子であるヴィタウタス大公によって建設されました。トラカイはリトアニア大公国の中心地であり、城はきわめて重要な戦略拠点だったのです。

ところが、ヴィタウタス大公の死後、権力がポーランドに移ると、トラカイ城はその軍事的重要性を失い、一時はポーランド王の夏の住居として使われたものの、しだいに荒廃していきます。

こうして廃墟となったトラカイ城でしたが、1961年から再建が始められ、1987年にはほぼ15世紀当時の堂々たる姿を取り戻しました。

湖岸から橋を渡ってトラカイ城へ。湖と中世の城のコントラストは、なんとも絵になります。

城内に入ると、まず目に入るのが大きな中庭。

ここでは、騎士の戦いを再現したパフォーマンスが行われていることもあり、中世の世界に迷い込んだかのような気分が味わえます。

とんがった丸や三角の屋根が見事な均整美を見せるトラカイ城。

それでいて、さすがは軍事目的の城。その堅固なたたずまいは圧巻です。

現在城は、本丸、城壁ともに博物館として使われており、城内では、トラカイの歴史に関する展示や、かつて使われていた武具や美術・工芸品、家具などの展示を見ることができます。

本丸には、大公とその家族の居室や、客人との謁見に使われた部屋が9つあり、こちらはもっとも大きく、かつ美しいといわれる大広間。

200平方メートルの空間は、ゴシック様式のヴォールトやステンドグラスで彩られています。

ヴィタウタス大公の時代には、この広間は外国からの賓客を迎える場として使われていました。そして現在も、コンサートなどのさまざまなイベント会場として使用されています。

決して華美ではありませんが、質実剛健な空間が醸し出す独特の重厚感は格別です。

さて、城を後にしたら湖畔を散策してみましょう。

トラカイ城周辺の湖畔の遊歩道沿いには、土産物屋やレストランが並び、のどかながらも観光地らしいにぎわいがあります。

湖畔から望むトラカイ城は、まるで絵はがきのような美しさ。ボートを借りることもできるので、湖の上からトラカイ城を眺めてみるのもいいですね。

古城と穏やかな自然が織り成す風景が魅力のトラカイ。中世のロマンと心安らぐひとときを求めて、あなたも出かけてみませんか。