「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ(“To be, or not to be, ― that is the question.”)」。

これは、シェイクスピアの4大悲劇のなかでも傑作との呼び声高い「ハムレット」に登場する名台詞です。「ハムレット」は、ある日突然デンマーク王が亡くなり、王の死が叔父の仕業であると知った王の息子ハムレットが、復讐を果たそうとする物語。

デンマークの首都・コペンハーゲン近郊の港町・ヘルシンオアに、「ハムレット」の舞台として知られる世界遺産の古城、クロンボー城があります。

クロンボー城が築かれたのは15世紀のこと。エリック7世王が海峡の通行税徴収のために建てた城がはじまりでした。わずか5キロ先の対岸にスウェーデンの街・ヘルシンボリを臨むヘルシンオアは、海上交通の重要な拠点だったのです。

1629年には火災によって焼け落ちましたが、クリスチャン4世によってただちに修復されました。その後幾度かの戦争と都度の改修を経て、1924年の改修後に現在の姿となっています。

コペンハーゲンからヘルシンオアまでは、鉄道で45分。コペンハーゲンからの日帰り旅行にぴったりです。

ヘルシンオア駅から海沿いを歩いて行くと、見えてくるクロンボー城。

海を臨む最前線にどっしりとたたずむその姿は、「孤高の城」を思わせます。堂々たる風格を備えながらも、どこか孤独な印象を与えるこの城は、「ハムレット」の絶好の舞台だったのでしょう。

クロンボー城は、ほぼ4角形をしていて、北棟は王の住居、西棟は王妃の住居、東棟は王族の部屋や厨房、南棟は教会となっています。

城の中庭へと続く門をくぐってすぐ左手には、シェイクスピアの胸像のレリーフがあります。意外と目立たないので、見逃さないようにしてくださいね。

クロンボー城の中心は大きな中庭。ここを起点にして、王家の居室などがある城の主要部や、王のタペストリー、礼拝堂といった、それぞれの見どころを周ります。

城の完成当時、北欧最大を誇った舞踏場や、1500年代にブリュッセルなどで制作された巨大なタペストリーの数々は必見です。

クロンボー城最大のお楽しみといってもいいのが、さまざまな「出演者」によるパフォーマンス。王や王妃などに扮した出演者が、城のあちらこちらで臨場感たっぷりの寸劇を披露してくれるのです。

それは、王の居室で物思いにふけりながら書き物をしている場面であったり、王妃の居室で刺繍をたしなんでいる場面であったりとさまざま。出演者の台詞はデンマーク語ではなく英語。彼らと一緒に写真を撮ることもできます。

戯曲「ハムレット」の重要な場面を再現したパフォーマンスもあり、筆者がクロンボー城を訪れた際には、亡くなったハムレットの父の亡霊が現れ、「自分は王の座を狙った弟(ハムレットの叔父)に毒殺された」と告白するシーンに遭遇しました。

しかもそのシーンの舞台は、普段は閉ざされている薄暗い地下道。スクリーンに亡霊となったハムレットの父親の映像が映し出されるという凝った演出で、まるでテーマパークのアトラクションのようでした。

こうしたパフォーマンスは場所や内容を変えて一日に何度も行われるので、城に到着したらまず当日のプログラムが書かれたボードをチェックするといいでしょう。

城内の展示だけでなく、中庭から入場できる塔からの風景も見逃せません。145段の階段をのぼった先にある塔の展望台からは、城の敷地やヘルシンオアのメルヘンチックな街並みが見渡せます。

地下牢には、国が危機に陥ったときに目覚めるホルガー・ダンスクという巨人が眠っているという伝説もあるクロンボー城。

シェイクスピアが自らの代表作の舞台に選んだ城は、人々の想像を掻き立ててやまない、ドラマティックな名城なのです。