ドイツ西部にある世界遺産の町トリーア。かつて古代ローマ帝国がこの地を支配していたことから、町にはポルタ・二グラや円形劇場など当時をしのばせるローマ遺跡が点在しています。

なかでも皇帝浴場「カイザーテルメン」は、古代ローマ人の技術を集約したともいえる高度な温泉施設。かつてこのトリーアには、カラカラ浴場に次ぐ規模を誇る大規模な浴場の建設が計画されていたのです。

カイザーテルメンが建設されたのは、4世紀後半。4世紀初めにはトリーアが皇帝の居住地となった事から、この町には皇帝の権力を示すべく様々な建物が建設されました。トリーアには2世紀に建設された「バルバラテルメン」という公衆浴場がありましたが、時のローマ人はさらに大規模な温泉施設の建設を計画。それが、このカイザーテルメンでした。

現在ではその跡地しか目にする事ができませんが、かつてこの地に幅145メートル、長さ206メートルという広大な温泉施設を建てるべく建設がはじまりました。

敷地の広さにも驚きですが、もっとすごいのはここに計画されていた施設。温水浴はもちろん、熱水浴や冷水浴、さらには運動場まであり、まるで健康をテーマにしたある種のテーマパークのようだったと言われています。

この壮大な計画も、皇帝コンスタンティヌス1世が拠点を東方へ移したことによりとん挫。その後ウァレンティニアヌス1世には建物の一部を取り払い、客殿として建設、完成までこぎつけました。本来の目的である浴場としての施設は、結局完成することが無かったのです。

浴場としては完成しませんでしたが、残された遺跡からは古代ローマ人の技術力の高さを思い知ることができます。その代表といえるのが、地下に張り巡らされた管理用の通路と水路。

施設で使用する水は、ここから13キロ離れたルーヴァ―川から水道を通して供給。その水は6基あるボイラー室で熱し、その蒸気や温水がこれらのトンネルを通って各部屋の壁や床を温める計画でした。

古代ローマ時代にすでに床暖房に似たものが発明されていたとは、驚きだと思いませんか?

地下に張り巡らされているトンネルは、まるで迷路のよう。

遂に達成されることなかった古代ローマ人による巨大温泉計画。遺跡が残されたこの地に立ってみると、彼らの描いた夢の壮大さが伝わってくるような気がしてなりません。

協力:ドイツ観光局