今年1月末にDDTとノアの“2団体社長"に就任した“大社長"高木三四郎。おもにDDTグループの動画を配信してきた『DDT UNIVERSE』ではノアの配信も本格的にスタートし、『WRESTLE UNIVERSE』(レッスルユニバース)に改称した。インタビューでは、インドやシンガポールのプロレス団体動画の配信を目指す、壮大な“グローバル・プラットフォーム化"構想を語ったほか、“ノア社長"としての就任約4ヶ月の所感も聞いた。


【高木三四郎インタビュー】

――まずはノア社長として就任4ヶ月の所感を…

▼高木「就任してすぐコロナだったので、経営手腕を発揮しようにもなかなか…っていう現状ですね。もともと『現場は現場に任せる』っていうスタンスで、まずは数字の面での余分なコストとかを見ながら、予算を決めて運営していく…という積み重ねをしていこうと思っていたので。ただ、コロナの状況になっちゃったので、オンラインの部分ですね。オンラインでいかに売上を立てていくか。だから割と早いタイミングで『オンライン通販を充実させて欲しい』とは現場に伝えましたね。もちろん数字は見てますけど、興行とか、どうスケジュール切ってくかとかは完全に現場に任せてますね。試合的な面だと3月29日、無観客の後楽園ホールが印象的ですね」

――コロナショック初期の混乱期でした

▼高木「もともと3月8日の横浜文体を『やれるか、やれないか』みたいなところからスタートして、『やっぱり無理そうだ』と。それで3・29に全部のタイトルマッチを持っていきます…となって。自分としては、かなり思い切ったことをやるな!と。割とDDTでもやらないようなことをやるなと。しかも4つのタイトルマッチに出る選手しか出ない、と。めちゃくちゃ思い切ったことするな! すげーなノア…って思って。まぁ、それも最初はお客さんを入れて開催する方向だったんですね。でも、無観客になっちゃって。さすがに無観客だったら4大タイトルなんてやらないと思ってたんですよ」

――さすがに無観客でGHCのタイトルマッチはやらないと…

▼高木「そう! 実はノアのことは昔から好きで、仲田龍さんとか三沢さんとも親交があった中で、ノアさんを救いたいということでサイバーエージェントグループに導いた…っていうのはあったんですけど、GHCの歴史を考えた時に“無観客"っていうのは無くて。だから無観客でやる、ってなった時に『タイトルマッチはやらないですよね?』って聞いたら、『いや、やります。ラインナップは変えないです』って言われて。マジメに言ってんのかな!?って思ったくらいで(笑) DDTもさすがにKO-Dの無差別を無観客でやったことは無かったですから。タッグのタイトルは僕が持ってた時に、路上プロレスとかでやってたんですけど、シングルの最高峰のベルトを無観客でやる…っていう発想にビックリして。と同時に『あ、もうノアはコロナの状況でも全然やっていけるな』とも思いましたね」

――ノアも現場はかなり試行錯誤してきた近年でしたが、少し離れたところから見ると、やはり『保守的』という固定観念のままな見方が大勢な気がします

▼高木「はい、今、一番革新的なことをやってる団体じゃないですか?」

――確かに無観客でもタイトルマッチをやる…という先例をいち早く示したというか

▼高木「そうそう。全日本さんも、その後タイトルマッチをやったじゃないですか。で、ウチ(DDT)も『ノアがやるんだったら、KO-Dやるしかないな』って。今、無観客のプロレスを先頭に立ってクリエイトしてるのは、間違いなくノアだと思いますよ」

――そもそも高木さんとノアの最初の接点というのは…?

▼高木「やっぱり仲田龍さんですね。飯伏のことを仲田さんが『いいね』って言ってくれて、ノアのジュニアタッグリーグ戦に呼んでいただいて、武道館の決勝戦(丸藤&飯伏vsKENTA&石森)にも行ったんですけど、それが最初の接点ですね。それからお付き合いが始まって、三沢さんにも新潟でDDTに上がっていただいたこともありましたし、田上さんにも上がっていただきましたし。新日本さんとも付き合いは長かったですけど、トータルすればノアのほうが長くなってますね」

――確かにノアがどんな体制の時でも、DDTと疎遠になった時期は無かった気がします

▼高木「そうですね。ノアの選手に上がってもらったり、DDTの選手がノアに上がったり…そう考えてみると、DDTの歴史上、一番交流してる団体がノアだったのかもしれない。三沢さん、田上さん、丸藤さんについては何度も上がってもらいましたし。ノアが一番付き合いの深い団体はIWA JAPANだと思いますけど、二番手あたりにはいるんじゃないですか?(笑)」

――でも従来の固定観念からするとノアとDDTを“対極"と見る向きも強かっただけに、高木さんが社長に就任することに警戒感もあったかもしれません。やりづらさを感じることは?

▼高木「うん、その“やりづらさ"を感じてたんで、早々に『(リングの)中は触りません、数字しか見ません』って言ってたんですよね。僕としては武田さん(現執行役員)が社長のままでも良かったんですけど、サイバー側の意向で『僕がやるしか無い』っていう状況だったんですね。選択肢として。それが(グループ入りの)条件でもあったんで。ただ、そんな細かい事情なんて、なかなか説明できないし、説明したって広がりづらい。それに中身をいじってしまうとノアはノアじゃなくなっちゃうし、DDTにも良い影響をおよぼさないと思ったんで、現場は任せますと。その代わり、この予算でやってくださいね、というスタンス。徹底して会場にも行かないようにして、お客さんもノアの会場で僕の姿をほとんど見たこともないと思うし。でも(拒否反応的なことは)最初だけでしたね。特に最近ノアのファンになってくれた人は、割と最初からアレルギー無く受け入れてくれたというか。旧来のファンからすれば、どうしても僕のイメージは『エンタメ色が…』とかそういうものだと思うんですけどね、最近のノアファンからすれば実はそれもそんなに重要なことではなくて『団体を継続できるなら』っていうポジティブな意見の方が多かった気がしますね。だから最初は不安しか無かったんですけど、『考えすぎだったな』と今では思ってますね」

――それだけに『DDT UNIVERSE』の名称を『WRESTLE UNIVERSE』に変えたのも、ノアの配信が始まって違和感を覚える声が強いから、というよりは単純に『分かりやすくしよう』と?

▼高木「そうそう。コンテンツを拡充していこうよ、という側面もあったし、もともと僕らも名称を変えるつもりでいたんですよ。そもそもDDTグループには、DDTのほかに東京女子プロレスとガンバレ☆プロレスっていう団体があるんで。むしろ女子のファンの方のほうが、そういうのはありますね。バナーとかポスターに『東京女子の選手が誰もいないじゃん』みたいなツッコミが多くて。割とそっち方面からのツッコミの方が多かったですね」

――ノアとDDTグループの試合や特別映像およびアーカイブ配信が主体ですが、今後の取り組みについては?

▼高木「他の団体も広げていきたい、っていうのはありますね。正統的な団体としてノアがあって、エンタメ色もあるDDTがあって、路上プロレスとか派手なこともやってて、あとは女子プロレスがあって、ガンバレ☆プロレスっていうインディーもあって。次は海外の団体を扱ってみたいな、っていうのはありますね」

――実際に動いている?

▼高木「そうですね。『Fight Club Pro』っていうイギリスの団体があるんですけど、そこと話をしていたり。ただ、今はイギリスもアメリカもコロナの影響下なので。具体的な交渉に入る前にこうなってしまったんで。だけどある程度再開してきたら、交渉も再開したいなと思ってますね。海外からの導線も考えて、(字幕など)言語的な取り組みもしていきたいですね。あとはアジア圏のプロレス団体もチョイスしていきたいなあ…と」

――アジア圏ですか?

▼高木「はい。結構あるんですよ。増えてますよ。香港、台湾、シンガポール…。特にシンガポールのプロレス団体は、結構いろんな良い選手がいて」

――プロモーションではなく団体?

▼高木「団体ですね。しかもシンガポールには二つあるんですよ。二つあるみたいですけど、仲が悪いみたいで…(笑) あとはインド。インドにもあるんですよねえ」

――中国はプロレス界としてもあらゆるチャレンジを試みて、なかなか成功できない状態です

▼高木「中国は“プロレス"そのもののベースがあんまり無いんですよ。今、いくつか団体はできてるんですけど、もともと土壌がなくて。だから香港、台湾、シンガポール、そしてインドのほうが可能性があるな…と思っていて」

――インドでもWWEをベースにプロレスファンが出来上がっている?

▼高木「そうです。だから凄くアメリカンプロレスですよ、インドのプロレス。だから最近もインドのレスラーからの売り込みが多いんですよ。全然名前も聞いたことないような…。そうだな…あとは南アフリカはもともとプロレスが盛んなんですよ。それこそ3〜40年前の全日本プロレスとかが実は南アフリカで放映されていたりして。それで南アフリカとインドってインド洋を挟んで身近じゃないですか。だから対抗戦とかやってるんですよ(笑) “インドvs南アフリカ"って。おもしろいですよね、ワールドワイドで。だから、そういうのも紹介したいな…って」

――そこまで広がれば、ある意味プロレスのリアル・グローバル動画プラットフォーム的な存在になる気も…

▼高木「そう。だから日本でブレイクのポイントを創るっていうのも一つなんですけど、やっぱり海外でも創っていきたい。アメリカなんかは、もちろんちゃんとやりたいんですけど、今は新日本さんがグンと入っていってるので、そこは二番手として動きつつ、アジアを開拓できないかな?って本当に思っていて。アジアはまだまだプロレスでは未開拓、未知数な部分が多いはずなんですよ。個人的には東京女子はハマる要素あるんじゃないかなと思ってるんですよね」

――どの辺がでしょうか?

▼高木「やっぱり今、東南アジアって日本のアニメやコスプレといったサブカル文化が凄い流行ってるんですよ。特に台湾なんかはコスプレイヤーがすごくて。だから東京女子はアイドルチックな選手が多いんですけど、そういうのって意外とハマるんじゃないかな…って思っていて。そっちからまず火を点けられないかな…とは思ってるんですけどね」

――ただ台湾だと新日本も全日本も興行をすでに開催していて、日本のプロレスを観る文化がある程度根づいているだけに、そこを広げつつ、さらにあまり手のついていない地域へ…

▼高木「そうですね。だからやっぱりインドですよね。インドはですねえ、結構団体数も多くて」

――団体数が多いんですか!?

▼高木「多いっすよ。定期的に試合やってる団体も多いですから」

――となると土着してるインドの団体を通じて進出していく、という手法が…

▼高木「一番クレバーですよね。だから、そのあたりを2021年、2022年に向けて、コロナが過ぎてきたあたりで本格的に仕掛けてみたいな、と」

――なるほど…話が壮大になりすぎてきたので、強引にノア方面に戻させていただきますと、中長期的な目標としては、経営者としてどんなビジョンがありますでしょうか?

▼高木「まぁ、まずは経営の基盤をきちんと軌道に乗せるということですよね。あとは映像資産を有効に活用したいなと。現場には介入しないので、現場が創ってきたコンテンツをちゃんと国内だったり海外だったりで広めていくのが大事なんじゃないかなと。今のノアは、とても革新的で尖(とが)ったことをやっているので。『WRESTLE UNIVERSE』で、ノアの良い中継を積み重ねていって、サイバーに入る前にはできなかったような映像資産を創っていくっていうことを、時間をかけてやっていきたいですね」

――DDTと混ぜるのは…?

▼高木「やりたくないですね。それをやっちゃうと…一年に1回とか二年に1回とか、そのくらいで良いと思うんですよね。たぶんそういうことを言ってるのって50歳以上の方が多いんじゃないかなと。『対抗戦やってくれ』とか。グループ入りした時によく言われたのが『夢の対決を』とか『対抗戦がみたい!』だったんですけど、それ言ってるのってオジサンばっかりだったんですよね。それもイメージとしては凄い分かる。ですけど、それやったらもう“最終回"じゃないですか。DDTの選手も、ノアの選手もそうですけど、清宮選手だってもうトップでやってるし、竹下(幸之介)だってトップでやってるわけだし」

――団体としてのブランドをいかに創っていけるかのほうが…

▼高木「今は大事ですよね。確かに『どの団体も観てる』っていうファンもいるとは思うんですけど、今のファンの方々っていうのは、どちらかといえば“団体固定ファン"のほうが多い時代だと思うんで。そこのパイを増やしていくということが、多分一番大事」

――団体内で夢の対決ができるのが…

▼高木「そうそう、それが一番理想です」